第22話福咲が丘花火大会1

…まあ。なんだかんだで迎えた夏祭り当日の朝。俺は会場となる桜晴神社に、大地さんとさくらさんと共に、露店の設営にやってきていた。ちなみに、俺達の店が出すパフェだが、屋台では生クリームが使えないらしく、冷凍ホイップで代用することにした。


「準備はこんなもんかな」

俺は持ってきた段ボール箱を屋台の中に置いた。


「あ、お疲れ様。桜木くん」


「大地さんも、準備お疲れ様です」


「いやいや、会長には恩もあるし、これくらいの事ならやるよ」

大地さんはそう言うと、俺が持ってきた箱の中から食材を取り出していく。とそこに、常陽さんがやってきた。


「おはようございます♪」

常陽さんは、相変わらず満面の笑みを浮かべながら言う。


「大地さん、今日は常陽さんも呼んでたんですね」

俺がそう聞くと、大地さんは何か思い出したように言った。


「そういえば、桜木くんにはまだ言ってなかったね。今日は私と常陽さんで店を回すから、準備が終わったら桜木くんはさくらと四季神さんと三人でお祭りを回っておいで」


「それは有り難いですけど、足りますか?人手。お祭りなら、いつもよりも混みそうなものですけど…」

俺は事前に、この花火大会が、この町で一番大きな祭りだと聞いていた。それなら沢山お客さんが来て、人手も多く必要になると思ったのだが。

俺がそう言うと、常陽さんが、相も変わらずの笑顔で言ってくる。


「いえいえ、大丈夫です!確かに大きなお祭りですけど、2人で十分だと思います♪」


「そうなんだ。というか、そんなこと言えるって事は、常陽さんも来たことあるんだね」


「それはまあ、私も一人の福咲が丘市民ですから。じゃあ、わたし着替えてきますね」

そう言い残すと、常陽さんは、社務所の方へ向かっていった。今日は更衣室や、花火大会の本部となっている場所だ。


「お父さん、会長さん来たよー!!」

少し離れたところから、さくらさんが大地さんを呼んでいる。


「わかった、今行くよ」

大地さんはそう返事を返すと、


「私はちょっと、会長さんに挨拶をしてくるよ」

と言ってさくらさんの呼ぶ方へ歩いて行った。


「一人になってしまった、、、」

俺はふと、準備の進む会場の様子を見渡した。

俺のもといた時代は、仮設のテント一つとっても今のプレハブ小屋くらいには頑丈で、無機質な見た目だったし、そもそも、俺のもといた時代の祭りは、店番も設営もみんなヒューマノイドにやらせてたから、こうして人間が協力して何かを準備する光景は、いつ見ても新鮮で、どこか風情を感じる。


「この時代の祭りは、どんな感じなんだろ」

俺は、少し楽しみな気持ちを胸に、設営の準備を再開した。

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