第10話四季神翔子のおもてなしデート?後編
「着きました!」
俺が四季神さんの後を付いていくと、そこは大きな公園だった。入り口には「ようこそ!福咲都市自然公園へ!」と書かれた案内板が立っている。案内板を見ると、そこそこ大規模な公園のようだった。
「じ、実は!!、、、ですね?お、お弁当、作ってきたので、一緒に、食べたいなと、、、思っているのですが、、、どうでしょうか?」
公園に入って暫く歩き、青々とした芝生が整備された広場が見えたところで、四季神さんは意を決したように声を上げた。
「お弁当?ま、まさか手作り、、、?」
「は、はい。嫌、ですか?」
四季神さんは涙を浮かべ、不安そうに俺を見つめてくる。
「い、嫌じゃない!嫌なもんか!可愛い女の子の手作りなんて、全人類の憧れなんだっっ!!!嬉しいに決まってるさ!!」
俺は思わず叫んだ。
「か、かわっっ!!」
俺の可愛いという言葉に反応してか四季神さんは顔を真っ赤にした。
「う、嬉しいならいいですけど、恥ずかしいのでそんな大声で言わないで下さいっ!!」
四季神さんに言われ、俺は周囲を確認すると、広場にいた大半の人間の視線を集めている事に気づいた。
「ご、ごめんなさい、、、」
冷静になると恥ずかしくなってきた、、、
● ● ● ●
「そ、それじゃあ、行きますよ?」
あの後、広場の中で良さそうなスペースを見つけ、四季神さんが持ってきたゴザを敷いて二人で向かい合って座る。そして今、四季神さんは自分の手作りのお弁当を取り出して、蓋を開けようとしている。
「こ、これですっ!!」
そうして開けられた正方形の大きめの弁当箱の中は、それはそれは美しく、輝いて見えた。
スペースの半分くらいは形の整ったおにぎりが詰められており、もう半分には唐揚げや卵焼きなど、お弁当の定番とも言えるようなおかず達に加え、なんだかよく知らないけど、とにかくオシャレっぽい雰囲気の料理がいくつか詰められている。
「か、感動だぁ、、、」
お弁当ってこんなきれいに詰めれるもんなの?ってか眩しい。輝いてるよ。この弁当。
「ど、どうですか?」
「ああ、最高だよ!食べる前から楽しみだ!!」
俺がそう言うと、四季神さんは安心したようで、穏やかな表情を見せてくれた。
「で、では、頂きます」
さて、何から食べようか。ひとまず、弁当の王道とも言える唐揚げからいただく事にしよう。
「うん、美味しい!!」
お弁当に入れることを考えて味付けをしたのだろう。冷めていても美味しい。
「そ、それは良かったです!!」
四季神さんはそう言って俺に笑顔を見せてくれた。
「そうだ!お味噌汁も用意してありますよ?」
四季神さんはそう言って保温ボトルを取り出した。
「お味噌汁まであるのか!ありがたくいただくよ!」
四季神さんの用意してくれたお味噌汁は、温かくて身に染みた。
● ● ● ●
「そういえば、今日はどうして俺の事誘ってくれたの?」
四季神さんとの昼食を終え、二人でのんびりお話をしていた時、俺はふと聞いてみた。
「それは、ほら、前にさくらちゃんと桜木さんと3人で出かけたときの帰り、桜木さん、私のこと護ってくれたじゃないですか。今日はそのお礼をしたくて、、、」
「別に、そんな護ったなんて大層なものでは、、、」
「それでも、私を護ろうとしてくれました。私はそれが嬉しかったんです。人のために動けるって、素敵なことだと思います」
四季神さんは俺に対して憧れにも近いような視線を向けてきた。
「そ、それはどうも、、、」
そんなふうに言われるとなんだか照れるな。
でも、それでも、四季神さんと話すのは心地がいい。
そんなことを思いながら、昼下がりの公園で、俺は暫く四季神さんととりとめのない会話を続けていた。
● ● ● ●
「今日はありがとう」
夕方。
俺はこの前と同じように、彼女を家まで送るため、四季神さんの横を並んで歩く。
「いえ。こちらこそ。一日付き合っていただきありがとうございます!」
隣を歩く四季神さんは、今日は普段よりもテンションが高くて、機嫌がよさそうにみえる。
「四季神さんさん的には満足できた?」
「はい!ぬいぐるみを取ってもらったりもしましたし、お弁当、美味しいって言ってもらえてとっても嬉しかったです!」
「それは良かった」
「あ、あのっ!!」
四季神さんは俺よりも4歩ほど前に出て、突然立ち止まり、俺の方を振り返ると震えた声で言う。
「今日、とっても楽しかったです」
四季神さんは一歩前に出る。
「だから、、、もしまた私が誘ったら、今日みたいに来てくれますか?」
「ああ、勿論だ!」
四季神さんからの問いに、俺は即答する。
だって、俺も今日すごく楽しかったから。もしまた誘ってもらえるというのなら、それは願ったりかなったりというものだった。
四季神さんは俺の返答に安堵したような表情を見せ、また俺の横につく。
今度はどこに行こうか。
俺は気が早いとは思いつつ、次のお出かけのことを想像してしまうのだった。
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