第5話ちなみに作者はコンカフェ行ったことないです

「ま、待って。まだ心の準備が、、、」

駅前広場で集合してから10分後。俺は雑居ビルの一角にあるとあるカフェの前で立ちすくんでいた。


「早く入りましょうよ〜」

四季神さんは相変わらずたっかいテンションを維持したまま俺の肩を揺さぶる。


二人に連れられてやって来たのはメイド喫茶だった。いや、どっちかと言うとコンカフェかもしれない。


「とーにーかーくー、早く入りましょうよ〜」

四季神さんが俺の腕を引く。


「ま、待って、まだ心の準備がー!」

俺はそれに対抗する。

そんなふうに二人でやいやいやっている最中、めっちゃジト目のさくらさんと目があった。

「二人で何してんの、、、」


「違う!これは誤解なんだー!!、、、ってか、ずっと見てたよな?助けてくれても良かったよな?!」

と、そんな会話をしていると、ふいに内側からカフェの入り口のドアが開き、中から和服メイド姿の少女が出てくる。身長は四季神さんとさくらさんの間くらいで、胸元に付けられた名札には「★みさと★」と書かれている。髪を淡いピンクに染まった髪を両サイドでまとめてツインテールにしている。彼女は満面の笑みで言う。


「おかえりなさいませ〜♪ご主人様、お嬢様♪」


● ● ● ●


中に入ると、店内は和風なデザインになっていた。さっきの少女も西洋的なメイド服ではなく、着物とメイド服の融合した様な服装だったし、そういうコンセプトなのだろう。もともと、アニメや漫画やゲームでたくさん見てきたシチュなので、こういうカフェに興味が無かった訳ではない。コンカフェやメイド喫茶は、多少形は違えど100年後にだってあるのだ。コンカフェやメイド喫茶にまで配膳ドローンがいるような事はない。そんな事もあって、いざ入ると、さっきの緊張感は殆ど忘れていた。俺たちは案内された席につく。


「さ、何頼もっか?」

さくらさんがメニューに目を通しながら言う。


「俺は、、、どうしよ、こういうとこ来たことないから何頼めば良いのか分からん、、、」


「そんなこと私に聞かないで。私だって、始めてきたんだから」


「??そうなのか?でも、ならどうして俺を連れてきた?」


「いやいや、何もここに連れてきたのは私だけじゃないでしょ。私は翔子ちゃんに頼まれて来たの」


「そうだったの?四季神さん?」

俺がそう聞くと、四季神さんはこちらに顔を近づけ目をキラキラ輝かせながら怒涛の勢いで言う。

「そうです!そのとおりです!かわいい女の子大好きです!!」


「お、おう。そうか。楽しそうで何よりだ」

四季神さんの顔があまりに近くにあるものだから、不覚にもドキリとした。初対面の時に、美少女と形容したとおり、彼女はとにかくかわいい女の子なのだ。

しかし彼女はそれに特に気にする様子もなくスタッフを呼び注文し始めた。

いや、俺らまだ注文決めてないんだけど、、、


● ● ● ●


その後、コンカフェで昼食を済ませた俺たちは、駅前のショッピングモール、ミラクルモールを訪れていた。名前の由来は「未来」が「来る」って事らしい。もっと無かったんか、、、

ちなみにコンカフェでは、興奮気味でマシンガントークを飛ばす四季神さんに、俺たちの担当に付いてくれた「★みさと★」さんが、そのピンク色のツインテールをフリフリさせながら一切笑顔を絶やさずに完璧な返しをし続けていたのが印象的だった。


「さて、とりあえずミラクルモールに来てみましたが、どこに行きましょうか?」

すっかり元通りになった四季神さんがそう切り出した。

コンカフェ以外の予定を一切立てていなかった四季神さんに変わって、さくらさんがとりあえずミラクルモール行こうと提案してくれたものの、具体的な目的があるわけではないのだ。


「正直ここのモールってそんなに大きくないよねーまあ、人口7万人にしては頑張ってる方だと思うけど」

さくらさんがそんなことを言った。

この時代の福咲が丘はまだそれほど大きい町ではない。100年後の福咲が丘市は鉄道の高速化に高速道路網の整備が進み、都市部との往来がしやすくなったことでベットタウンとして栄えているし、もっと大きいショッピングモールもあるんだが、、、


「桜木くんはどこか行きたいところない?」


「そうはいってもなあ、、、俺はこの時代に何があるのか分からない。そもそも、このショッピングモールだって、100年後にはもう存在しないんだ」

俺がそう言うと、さくらさんがなにかひらめいたような表情を見せた。


「じゃあ、この街を案内するってどうかな?」


「なるほど。たしかに、未来から来られた方ですし、同じ街とはいっても、建物とかお店とかはまるで違いますよね。桜木さん、しばらくはこっちの時代で過ごすことになるわけですし」

二人とも乗り気のようだ。


「じゃあ、お願いしてもいいかな?」


「オーケー、任せといてよ」

さくらさんがそう言いながら右肩をぐるぐる回している。


「それじゃあ、行きましょうか。二人とも」


こうして俺は二人にこの時代のこの街を案内してもらうことになった。

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