第一章 100年前の同じ街ってもう別物だよね
第4話超ご都合主義的なお出かけ回の始まり
翌日。土曜日ということもあって昨日よりも忙しかったものの、学園が休みのさくらさんも1日中手伝ってくれたのでなんとか事なきを得た。
「明日は翔子と遊びに行くから休ませてもらえないかな?」
営業終了後、さくらさんは大地さんにそう切り出した。
「ああ。良いよ」
俺はてっきりダメと言われるだろうとばかりに思っていたのだが、案外あっさり認めていた。
「あの、俺も頑張りますけど、さすがに日曜日2人は無理じゃないですか?昨日までの感じ見てると」
俺がそう言うと、大地さんは落ち着いた声で答えた。
「普段学校の帰りとか、夏休みとか、友達と遊ぶ機会を、私の手伝いのために潰してしまっているんだ。たまにはゆっくり友達と遊べる日も、さくらくらいの年齢の子には必要だと思うんだ」
「それもそうですね」
「そうだ、さくら。彼もいっしょに連れて行ってやってはくれないか」
大地さんは思いついたように言った。
「大地さん、俺はいいですよ!日曜日が一人じゃ厳しいですよね?」
「なに、大丈夫だよ。いざとなったら商店街の知り合いでも呼んでくるさ。うちは喫茶店だから、レストランとかとはピークタイムが違うから、今までもどうしてもってときは手伝いに来てもれったこともあるよ。それで、さくら。連れて行ってくれるかな?」
「うん!わかった、翔子にも聞いてみるけど、、、たぶん大丈夫だと思う!明日はよろしくね」
さくらさんは笑顔で手を前に差し出してきた。俺は一瞬どういう意図があったのか分からずにいたが、さくらさんが小声で「あくしゅ」と言ってきた。
「よ、よろしく」
俺は差し出された手を取った。
二人ともかわいいから、明日は両手に花かも。
そんなことを考えてしまうほどには浮かれている俺だった。
● ● ● ●
翌日。
「なんか緊張するなあ」
俺は集合場所として指定された福咲が丘駅の駅前広場にやってきた。
福咲が丘駅はこの街の真ん中くらいに位置するそれなりに大きな駅で、俺の今いる駅前広場は、かつて使用されていた転車台などの鉄道設備や蒸気機関車なども保存されている大きな広場で、この地域の待ち合わせスポットになっているようだ。ちなみに、俺のいた100年後には、この場所に大きなショッピング施設や図書館が立っており、このころの名残と呼べるものはまるでなかったと思う。
時刻は9時45分。10時集合なので今で15分前だ。
「大丈夫だって、私もいるし。ね?」
隣でスマートフォンを触っていたさくらさんが声を掛けてきた。俺たちは同じところに住んでいるので連れだってここまで来たのだ。
「でも、顔合わせるの2回目だぞ?」
「でも、嫌だったらちゃんと嫌だっていう子だよ?私から、桜木くん連れて行っていい?って聞いて、良いよって言われたんだから、少なくとも変に思われたりはしてないと思うよ?」
そうなのか。初めて知った。でも、いつまでもこんな事では今日この先が思いやられるので、深く考えず、さくらさんの言う事を信じる事にした。
「まあ、それもそうだな。今日はよろしくお願いしますって事で!」
俺がそう言うとさくらさんは自慢げに腕を組んで、
「そうそう、それでこそ桜木くんだよ~」
と言ってきた。あって3日の人間のことを、いったいどれほど知っているというのだろうか。些か疑問である。
と、そんな話をしていると、視界の端に四季神さんの姿を見つけた。
きょろきょろと周囲を見渡し、俺たちを見つけると、走ったりはせずにゆっくりこちらに歩み寄ってきた。
「お待たせしました。さくらちゃん、桜木君」
「いやいや、今来たところだよ。ね?桜木くん?」
さくらさんからの圧がすごい。
「あ、ああ。今来たとこー、、、」
俺はさくらさんの圧に負けて反射的に答えてしまった。が、実際今は9時58分。遅刻して来たわけでもないし、俺たちが待ったといっても十数分だ。そもそも「遅い!」なんて言うつもりもなかったが。
「それじゃあいこっか」
さくらさんがそう言うと四季神さんも「行きましょう」と後に続いた。
「2人とも、もう行先は決まってるのか?」
「そりゃそうだよ。ね、翔子?」
「はい」
「ちなみにどこ行くの?」
俺のそんな問いに、さくらさんは一瞬ニヤリとした後すぐにその表情を戻して言った。
「それはこの後のお・た・の・し・み♪」
「はい!!お楽しみです!!」
さくらさんに続いて四季神さんも、、、って、四季神さんなんかキャラ崩壊してない?!フンスとでも聞こえてきそうな勢いだ。
俺はちょっぴり不安な気持ちを感じつつ、2人の後をついていくのだった。
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