9 理系的『儚さ』
霜月の職場は、理系の方が8割くらいと多いほう。これは、たまたまであり、組織全体で勘案すると6分の1くらいの割合。どうなってんだよ、おい。
理系過多な職場なので、理系ネタで賑わうことも想像に容易い。
とはいえ、理系にも守備範囲ってものがあって、何でもかんでも理解できるものではないと考えてもらえると、全世界の理系の皆さんの肩の荷が下りる。
ある時、未開封のペットボトル飲料から炭酸が抜けていく話をしていたから、霜月はもっと理解してもらえるように、余談を付け足した。
「細かいことは抜きにして、ニュートリノ(ノーベル賞のやつ)がみんなの身体を通り抜けているように、炭酸(二酸化炭素)もペットボトルの樹脂を通り抜けてるんですよ」
あぁ、もちろん。皆ドン引きだったさ。
キミたちもかい?
キミたちだって、138億光年前の光が夜空で瞬いていることを知っているだろう?
既にご存じなキミは、立派な宇宙オタクだし、ニュートリノの話にドン引きすることないじゃないか。
とはいえ、もっと身近な話題(風船が縮む話とか)を振ったら良かったと後悔した霜月だった。
ところで、今年の七夕は、久しぶりの逢瀬となったのだろうか。
夜空に瞬く星たちは『いま、ここ』の光ではなくて、それこそ138億光年とかの、途方もないくらい昔の光が『いま、ここ』に届いてるから、星は儚い。
だって、同じ『いま、ここ』の時点で、その星が爆発して消え去っているかもしれないからね。
『いま、ここ』で、彦星か織姫星が爆ぜているかもしれない。
実際に爆ぜたかどうかは、17年後もしくは25年後にわかるだろう。
キミたち、割と地球から近いな。
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