第6話 危険度B級のデュラハン騎兵隊



 さて、流鏑馬やぶさめで魔族と魔物を殺しまくって、エルフ族の加勢に成功した。


 魔物と魔族はまだまだ残っているし、魔界の門は開いたままだから、敵はまだ増え続けるだろう。

 しかし、敵が増える速度に対して、こっちが敵を減らす速度が勝てば、いずれは全滅していく。それに魔族を優先的に仕留めたから、向こうは指揮官が不足していて、大軍を上手く動かせない。




「なら、そろそろ本丸と行くか」




 俺は森の北西に目を向けた。


 あの奥に、魔界の門が発生したとのことだ。

 魔界には魔族と魔物がはびこり、そこから継続的に人間界へと侵入する。


 つまり、敵の本陣であり、補給路だ。




「カミラーーッ!! 聞こえるか!!」


「は、はいっ!!」




 俺が大声で叫ぶと、カミラの金髪が森の奥から見えて、近づいてきた。

 カミラも馬に乗って戦い、上手く立ち回っていたようだ。彼女を見ても傷はなく、汗をかいているだけだった。




「はぁ……はぁ……やっと追いつきました。速すぎですよ、ウジザネさん」


「おお、悪い悪い。でも、お前さんも上出来だ。風の刃を飛ばして、エルフ族の邪魔にならないように魔物を倒していたじゃないか」


「見てくれていたんですか?」


「おう。ちゃんと見てたぞ。42匹くらいは仕留めていたんじゃないか」


「あれほどの騎射技術で暴れながら、私の倒した魔物を数えるなんて……何個、目があるんですか」




 カミラは目を白黒させていた。


 


「そんなことは良い。魔界の門って壊せないのか?」


「た、多分、魔術で壊せると思いますけど、かなりの魔力を要します」


「お前さんの魔力でいけるか?」


「いや、無理ですね。何十人もの魔術師を集めて、何日も時間をかけて、やっと破壊できるほどだと思います」




 マジか、それは俺とカミラでは壊せないな。

 となれば、エルフ族の者たちの魔術で一斉に破壊する、という方法しかない。




「じゃあ、俺らは俺らで、できることをしようか」


「ええ、そうですね」




 俺が歯を見せて笑うと、カミラも笑ってうなずいた。

 それなりに行動を共にしてきたから、次に俺が何をやりたいのか、カミラもわかるようになってきたようだ。


 そう、俺とカミラができることは、もはや一つだけ。




「本丸を攻める。エルフ族の軍が魔界の門に到達する前に、そこら一帯を一掃する」








 


 エルフの里の北西に発生した魔界の門は、巨大だった。

 

 家一つほど大きい黒い穴が、空中に浮かび、バチバチと黒い稲妻を発している。

 その穴から、魔族と魔物が続々と出てくる。

 空気は淀み、禍々しい力を発しているのだと、俺でも感じ取れる。


 だが、俺には関係ない。




「俺が先陣を切る。後ろは任せた」


「わかりました」




 俺が先に飛び出し、カミラが続く。


 すでに左文字さもんじは抜刀済み。

 初めから闘気を解放し、雑魚を威圧しながら斬り込む。




「ぉおおおおおっ!!!」




 俺の闘気にくじけた魔物は、一定時間動けなくなる。

 もちろんすぐ後ろにいるカミラにも闘気が届いてしまうが、彼女もずいぶんと急成長したため、俺の闘気の影響をほぼ受けなくなっている。


 瞬時に魔物の集団に接近し、左文字を振るい、むくろに変えていく。

 前後左右に魔物たちがいるから、目に映ったやつから斬り殺すのみ。




「鹿島新当流ーーーらん太刀たち




 魔物たちの動きを瞬時に見極めて、一刀で急所を取る。

 首を断つような派手な剣はいらない。

 最小の動きで、最速で命を刈る。


 そしてそれを絶え間なく続け、激しく乱れ舞う。


 その乱舞に終わりはない。斬るべき相手がいるまでは。




風烈長剣ウィンド・ソード、三連斬りッ!!」




 カミラも風の剣を生み出し、いきなり三連続で薙ぎ払う。

 俺の左文字では成しえない、圧倒的な攻撃範囲だ。

 

 槍よりもはるかに長い風の剣が振るわれるたびに、何体もの魔物の肉体が切断されて、派手に宙を舞う。

 一網打尽に薙ぎ払う、という点では、彼女の風魔術はとても優秀だ。




「ナ、ナンダ、コイツラ……ッウギャアア!!」




 たった二人で現れた俺たちに、魔族どもは恐れをなしている。 

 彼らも応戦し、俺たちを取り囲んで襲ってきたが、そんなこと関係ない。


 まず、俺に触れることができる相手がいない。

 どの魔物の攻撃もノロマだし、魔族が放つ魔術も簡単にかわせる。

 向こうからしたら、俺の動きは「消えた」ように思えるだろう。



 そしてカミラの方も、危なげなく戦っている。

 戦いに慣れてきたというのもあるのだろうが、それよりも、魔王メルゴスという怪物と対峙した経験が生きている。

 あの魔王に比べれば、そこらの魔物たちなど、物の数ではないのだから。



 そして、しばらく俺たちが暴れ回ったことで。



 魔界の門の周囲にいた魔の軍勢は、半分ほどに減っていた。

 むわっとした死体の山が築かれ、俺とカミラは返り血まみれになっている。

 俺とカミラが倒しまくったことで、いつの間にか、魔界の門から出てくる魔物も散発的になってきた。


 そりゃそうだ。どんどん魔物が出てくるとはいえ、無限ではないらしい。




「ぜぇ……ぜぇ……けっこう、やりましたね」




 あ、カミラがそろそろ限界か。

 まあ、休みなく一時間以上剣を振って、魔術もぶっ放して暴れたら、さすがに体力が尽きてくるだろう。




「おう、これで残る魔物は半分くらいだな。良い感じに体が温まってきたぜ」


「……どんな体力なんですか、凄すぎですよ」


「ははっ、俺なんかまだまだ半人前だ。お前さんほどの才覚があれば、いずれこれくらい当たり前になってくるぞ」


「そ、そうですか」




 カミラが苦笑いしている。


 と、そこで、魔界の門から変な音が聞こえてきた。

 馬の蹄が大地を踏みしめる音と、鎧がすれる音が聞こえてきた。


 あ、嫌な雰囲気がする。


 その直後、魔界の門から、首のない騎士たちが出てきた。

 全員が不気味な黒い馬? のような怪物に乗っており、合わせて9人だ。




「なっ……デュラハンッ!? しかも9体も!」




 カミラが驚き、顔がこわばる。




「雑魚じゃないようだな」


「気を付けてください、B級の中でも最上位に位置する危険な魔物です! 知能もそれなりにあって、狙った獲物を執拗に追いかけてくる習性があります!」


「なるほど」




 B級というと、オークジェネラルくらいの強さか?

 ただし、このデュラハンどもから発される殺気と怨念は、オークジェネラルとは比べ物にならないほど強い。


 B級と定義されている中でも、こいつらは強い部類なのだろう。


 そんな奴らが9体も現れたということは、俺もいよいよ気を引き締めなければならないな。

 こいつら一人一人は魔王メルゴスよりも弱いが、集団で一斉に襲いかかられると、メルゴスよりもキツい勝負になりそうだ。



 

「追いかけてくる、か。ふーむ」




 それは厄介な習性だな。しかし、逆に好機にもなるか?


 今、カミラは体力が消耗している。このまま二人でここにとどまって戦えば、残る魔物たちと、このデュラハンどもを同時に相手にしなければならない。


 それは悪手だ。いくら優勢でも、消耗戦に持ち込むのはダメだ。

 最悪、カミラが集中攻撃を受けたら、攻撃を捌ききれずに死ぬ。


 そうなると、方法は一つ。




「カミラ、お前さんは一時撤退だ。エルフの軍勢と合流しろ。体を休めた後、エルフ族と一緒に魔物の頭数を減らせ」


「えっ、ウジザネさんは?」


「俺はこいつらと追いかけっこをしてくる」




 それから俺は指笛を鳴らし、自分の馬を呼び出した。

 今まで馬は少し離れた位置に待機させており、俺がいつも訓練している通りに、指笛を鳴らして呼び寄せることができた。




「うし……かぁああああっつ!!!」




 俺は、闘気を再び解放した。

 それだけで残る魔物たちは恐れおののき、俺とカミラから距離を取っていく。

 

 そして、デュラハンたちの体が、一斉に俺に向いた。

 当然、殺気も俺の方に集中していく。


 よし、これで

 魔物たちの包囲もゆるくなったから、カミラも安全に撤退できるだろう。




「よいしょっと……ついて来れるもんなら、ついて来い!!」




 俺は馬に乗り、高らかに笑う。

 すると、デュラハンたちがさらに殺気をふくらませ、襲いかかってきた。


 総勢9人の首なし騎士との早駆け、そして殺し合いか。

 なかなかの修羅場だが、俺の持ちうる武術を全て繰り出せば、勝てる。


 俺も馬を駆り、デュラハンたちから逃げる。

 俺の挑発を理解したのか、奴らは猛然と追いかけてくる。

 



「命がけの鬼ごっこと洒落込むか!! 来やがれや、ノロマどもっ!!」











 ◆◆◆お礼・お願い◆◆◆



 第2章、第6話を読んでいただき、ありがとうございます!!



 氏真とカミラの無双シーン、すごく良かった!!


 デュラハンたちを一人で相手する氏真、続きが気になる!!


 次回もまた読んでやるぞ、ジャンジャン書けよ、鈴ノ村!!


 

 

 と、思ってくださいましたら、


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 今後ともよろしくお願いします!!





 鈴ノ村より





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