第18話 王都へ。そしてカミラの実家に訪問



 国王陛下に保護してもらえば良い。


 バーバラにそう言われて、俺とカミラは絶句した。

 この世界に来て間もない俺でも、国王陛下の意味くらいわかる。


 要は、このルークス王国の最高権力者にお願いしに行けってことだろ?




「言っとくけど、これは冗談じゃないわよ」




 バーバラは説明する。




「あなたたちが保護したルルちゃんが、もし本当に北エルフのお姫様なら、私たちの手では追えない、よ。ギルドで護衛するといっても限度があるし、もし何かあれば責任はとれないわ」


「だから、この国の王に頼むのか」


「それが最善だと思うわ。王族どうしで話し合えば、スムーズにルルちゃんを故郷に戻してあげることができるし」


「なるほどな……」




 たしかに俺たちには何の権限もない。

 ルルのためにやれることがあるとすれば、国王陛下に面会できるまで護衛してやることくらいだ。




「それで、俺とカミラが護衛役か」


「その通り。保護した時の状況をよく知る当事者だし、お姫様を保護した功労者なんだから、あなたたち以外に適役はいないわ」


「しかし仮にもお姫様なんだろう? 自信がないわけじゃないが、護衛が俺たち2人だけで良いのか? もっとこう、大勢のおともを連れて、万全の態勢たいせいで……」


「ルルちゃんをこのルークス王国までさらった犯人一味が、どこに潜んでいるのかわからないからね。たくさんの人間に関わらせる方がむしろ危険よ」




 うーむ、バーバラの言う通り、それしか方法がなさそうだな。


 よっしゃ、善は急げだ。

 色々と不安はあるが、乗りかかった船なら乗るしかないだろ。




「カミラ、覚悟は良いか」


「大丈夫です、ウジザネさん」




 カミラも力強くうなずいた。




「俺は王都までの道のりも知らないし、それどころかこの国の礼儀作法や常識すらもわからん。幼い子を連れて旅をしたこともない。だが、腕には自信がある」




 俺は左文字さもんじつかを叩いた。




「その他のこと、任せても良いか?」


「もちろんですよ、ウジザネさん。あなたは私にとって命の恩人ですし、新しい道を進むキッカケを与えてくれた方です。ルルちゃんを守る旅路、お供しますよ。それに王都は故郷みたいなものなので、行くのは慣れています」


「故郷? つまりそれって……」


「はい。私の実家、リュディガー男爵家の別荘が王都にあるので」


 






 それから俺たちは旅支度を済ませて、2日後、ルルの体調が改善してからハイドンを出発した。


 港湾都市ハイドンからルークス王都へ向かう経路は、カミラが考えてくれた。彼女は王都へ向かういくつかの経路の中で、最も安全な経路を選んでくれたから、まさにいたれりくせりだ。

 なお、ルルは馬車の中から姿を現さないようにさせた。ルルをさらった輩に見つかっても困るし、エルフの少女の身柄をさらって売ろうとする悪人も多いからだ。




「ほれ、また仕留めたぞ。今夜はシカ鍋にしてくれ」




 道中、俺は馬車を操りながら、遠くに見えた獲物を弓で仕留めていた。

 携帯食料も用意しているが、そういうのは、イザという時のために残しておきたいからな。




「もう驚くのも疲れましたよ。馬車を進ませながら、片手間で狩りをする人なんて見たことありません」




 カミラは苦笑いしている。




「そんなにすごいことか?」


「はい。ウジザネさんが思ってる以上に」




 そう言われてもな。弓の師匠である一宮いちのみや随波斎ずいはさい殿と比べれば、俺の狩りなど子どもの遊びみたいなものだ。

 あの師匠の腕なら、大荒れの海に浮かぶ船の上に乗っていても、飛ぶ鳥を百発百中で撃ち落とす。

 あの人が矢を外した姿を、ついに俺は一度も見たことがなかったし。




「ちなみに王都に別荘があるということは、領地は別にあるのか?」


「そうです。貴族は色々大変なので、王都の別荘に移って仕事したり、領地に戻って領地経営したりします。私も父や兄に連れられて、何度も王都と領地を行ったり来たりしていました」


「だから王都も、故郷のようなもの、なのか」




 俺は合点がいった。




「しかしその別荘に人はいるのか」


「多分いると思います。父上が領地に戻っていたとしても、兄上が代理で滞在しているはずなので」




 カミラの兄はすでに外務院がいむいんで働く貴族で、かなり優秀な人物だという。




「王都に着いたら、まず兄上のいらっしゃる別荘に行きましょう」


「わかった。しかし、安全に滞在できるツテがあるのはめちゃくちゃ助かるな。ルルの身の安全を考える上でも、非常に楽だ」


「私もそう思います。兄上はすごく優しい人ですし、前もって手紙も送っています。きっと温かく受け入れてくれるでしょう」









 さらに3日後の夕方。


 活気にぎわう王都に着いた。

 ルークス王国の首都は人が多く、市場も賑わっており、冒険者ご用達ようたしのギルド酒場もたくさんあった。


 だが、俺たちは今、ルルという要人を護衛している最中だ。

 なので寄り道することなく、リュディガー家の別荘を訪問したところ。




「貴様のような馬の骨に、俺の可愛いカミラには指一本触れさせんぞ!! ここで俺と勝負しろ、ウジザネとやら!!」




 俺はリュディガー家の別荘の庭園で、カミラの兄と対峙していた。

 すでに向こうは剣を抜いており、対抗心がき出しだ。




「どうしてこうなった」




 俺はげんなりしていた。

 

 いや、こういう流れ、前世にもあったな。

 風魔小太郎ふうまこたろう殿と同じじゃねえか。







 ◆◆◆お礼・お願い◆◆◆



 第18話を読んでいただき、ありがとうございます!!



 氏真の異世界転移とか、設定のクセがすごい!!


 王都に着いてからの展開が気になる!!!


 もっと氏真の能力や特技をを見たい!!


 カミラのお兄ちゃんとの勝負が気になる!!


 次回もまた読んでやるぞ、ガンガン書けよ、鈴ノ村!!


 

 

 と、思ってくださいましたら、


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 今後ともよろしくお願いします!!



 鈴ノ村より

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