第12話 ギルドで実力を見せつけよう



 冒険者ギルドに加入できたのは良かったが、それと同時に、冒険者2人と決闘することになった。


 俺も売られた喧嘩を買ったまでだから、誰が悪いとかはない。

 だが、あれほど馬鹿にされたままだと、冒険者として活動する時に支障が出る。

 冒険者ギルドは同業組合どうぎょうくみあいだが、究極的には個人で仕事を取らねばならんし、実力を知らしめるのは大切だろう。




「すみません、ウジザネさん」


「は? なんでお前さんが謝るんだ」


「私がいらないことを言ったせいで、こんなトラブルに」


「いやいや、むしろ感謝しているぞ。あそこで引き下がれば、冒険者稼業も先行きが怪しくなっていただろうし」




 申し訳なさそうにしているカミラに、俺は微笑んだ。




「つーわけで、お前たち2人には生贄いけにえになってもらおうか」




 俺は男たちにそう言った。


 喧嘩を売られたまま引き下がったら、隣にいるカミラにも恥ずかしいしな。

 この2人には悪いが、遠慮せずボコらせてもらおう。




「はっ、上等な口を利くじゃねえか!!」


「もう泣いて謝っても許さねえ。手足の骨をへし折って、クソめにぶちこんでやるからな……!!」




 大剣を持った男も、斧を持った男も、やる気は充分だ。


 俺たちは、ギルドの裏手にある運動場に移動した。

 この場所は冒険者どうしの模擬戦もぎせんに使われるもので、敷地は広く、青空の下で何人かの冒険者が汗を流したり、雑談したりしていた。




「ちょっと場所を空けてちょうだい。今から決闘を行うから」




 バーバラがそう言うと、経緯を知らない冒険者たちもヤジ馬根性で集まってきた。

 なお酒場にいた冒険者たちも、ほぼ全員が運動場についてきた。


 見物人は50人以上。


 全員が冒険者で、老若男女、人種はそれぞれだ。頑丈な鎧を着ている者もいれば、杖を持ったローブ姿の老人、娼婦のような格好をした女剣士もいる。




「まずは俺からいかせてもらうぜ!!!」




 先に出てきたのは、斧を持った大男だ。

 こいつは俺の言葉に対して、だいぶ腹を立てていた男だ。剣を持っている男よりも、怒りの沸点ふってんが低いのだろう。




「言っておくが手加減はしねえぞ。ギルド内での決闘では『誤って』殺したとしても何も問題ないからな」




 その言葉は、暗に殺してやるからな、という意味を含んでいるな。




「ガルフ、お前が殺したら、俺が楽しめねえだろうが」


「はっ、こんなの早い者勝ちなんだよ。ここは俺に譲りやがれ」




 ガルフと呼ばれた斧使いは、俺と対峙する。

 凶悪な顔つきだ。ひげは濃く、目は残忍な光を浴びている。




「じゃあ、始めるわよ」




 受付嬢のバーバラが中心に立ち、その左右に俺とガルフが別れて立つ。




「D級冒険者、大斧使いガルフ!! そして新米のF級冒険者、ウジザネ!! この2名による1対1の決闘を行うわ!!」




 バーバラが決闘の合図を告げると、集まっていた観衆が沸く。




「さあ、死ぬ準備はできたか? 小僧」




 ガルフは斧を構え、ニヤリと笑う。




「腕一本はもらっていくぜ……そらあっ!!」




 叫びながらガルフが突っこみ、大斧を振り下ろしてくる。

 さすがに腕力はすごいな。こんなデカい鉄のかたまりを振るうなんて常人技じゃない。

 当たれば腕一本くらいは簡単に切断できるだろう。


 当たれば、だがな。




「おっと」




 俺はヒョイッとかわして、ガルフの腕を取る。


 そして、




「そいやあっ!」




 思いっきり、一本背負いで投げ飛ばした。

 もちろん受け身なんてとらせねえ。

 そのまま地面に叩きつけてやる。




「がはぁっ!?」




 ガルフは何が起こったかわからないようで、痛みと驚きが混じった声をあげた。

 いくら鍛えているとはいえ、受け身ナシで一本背負いを喰らったら、大の男でも失神するほどだ。


 けど、コイツは耐えたな。

 冒険者ゆえか、意外と体は頑丈らしい。


 ならばトドメだ。

 仰向けに倒れたガルフののどに、手刀を叩きこむ。




「ごぶっ!? ぐ、う、げぇぇぇ……っ!!」




 ガルフは喉を押さえ、もがきながら失神した。

 泡を吹き、白目を剥いて、ピクリとも動かない。




「はい、お疲れさん」




 俺はガルフの頬をそっと叩いた。 

 手加減はしたから、多分このまま死ぬことはないだろう。




「そ、それまで!! 勝者は新人冒険者のウジザネ!!」




 バーバラが終了を宣言する。


 見ていた者たちはあぜんとしていた。

 信じられないものを見ている、と言わんばかりの顔だ。




「な、なんだ、何が起こったんだ!?」


「あの男、なんという体術の使い手なんだ!!」


「おいおい、剣すら抜かずに、あのタフなガルフを一瞬で気絶させたぞ!! もしかしたらメチャクチャ強いんじゃないか?」


「不思議な体術だ。力任せではなく、ガルフの力を利用して、豪快にぶん投げやがった」




 周りにいた冒険者たちがザワつく。


 その様子を見る二、俺が勝つと思っているヤツはほとんどいなかったのだろう。中には俺の実力を読んでいる者もいたかもしれんが、おそらく少数派だ。




「ほれ、次だ。面倒くせぇから、早くかかってこい」

 



 俺は残った大剣使いの男に対して、手招きした。




「う、うぉおおおおっ!!」




 大剣を振りかぶり、男が襲いかかってくる。

 先ほどのガルフとは違って、本気で俺の頭をカチ割ろうとしてくる。


 さて、今度は足技を見せるか。


 迫る刃をかわして、男に足払いをかける。

 攻撃をしかけた勢いそのままに、男の体が浮き上がる。



 

「あっ」




 足を刈られて、男は前につんのめって浮く。

 何が起こったかわからない、という顔をして。




「せいやぁっ!!」


「おぐぉっ!?」




 空中に浮いた男の背中に、カカト落としをぶちこむ。

 ボゴゥッという鈍い音がして、男はうつ伏せに地面に叩きつけられた。


 そしてまた、失神者のできあがり。

 男は地面に倒れ、ピクピクと震えている。


 正確に背骨にカカトをぶちこんだから、まず立てないだろう。

 かなり筋肉質な男だが、背骨は筋肉に守られていないしな。




「す、すげえ!! なんだあの蹴り技は!?」


「おいおい、あのボッツも10秒もかからずに瞬殺かよ!!」


「上手さはもちろん、なんて威力のカカト落としだ。浮かせたとはいえボッツの巨体を真下の地面に叩きつけやがったぞ!」


「なあ、あいつは新人だからフリーなんだろ? 今なら引き入れるチャンスなんじゃねえか?」


「てめえ、抜け駆けすんなよ! 俺は最初からアイツの強さを見抜いていたんだからな!!」


「知るか、抜け駆けなんて!!」




 またも冒険者たちの間で驚きが広がる。

 それらの声の中には俺のことを味方にしようとしている者もいるな。

 仲間になるかどうかは置いておいて、力は認められたようだ。


 その一方で、審判を務めたバーバラは剣吞けんのんな表情をしていた。




「…………化け物、ね」



 

 バーバラはそう言ってから、俺のほうに近づいてきた。




「あなたの強さはよくわかったわ、ウジザネ」


「そいつは何よりだ。これで俺の実力はわかってくれただろう」


「ええ、そうね。ところで……」

 

 

 

 バーバラは手元から杖を取り出した。

 その杖には炎をまとったヘビがからみついていた。


 異世界に来て間もない俺でも、これだけはわかる。


 バーバラは、ただ者じゃない。




「せっかくなら、私とも勝負しない?」




 バーバラはあかい唇を微笑ませた。

 妖艶ようえんな魅力と同時に、殺気を帯びて。

 






 ◆◆◆お礼・お願い◆◆◆



 第12話を読んでいただき、ありがとうございます!!



 氏真が冒険者を叩きのめすシーンがすごかった!!


 氏真の転移モノなんてクセが強い!!


 バーバラ vs 氏真のシーンを早く見たい!!


 次回もまた読んでやるぞ、ジャンジャン書けよ、鈴ノ村!!


 

 

 と、思ってくださいましたら、


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 皆様の温かい応援が、私にとってとてつもないエネルギーになります!!



 鈴ノ村より

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