第11話 カミラと冒険者ギルドに加入しよう
俺は上級騎士ユルゲンを
しかも、キンタマを思いっきり蹴り
ユルゲンは泡を吹いて気絶して戦闘不能、残った騎士たちも俺に恐れをなして動けない状況だった。
そこでカミラが出て来て、騎士たちに頭を下げた。
「先輩方、今までお世話になりました」
カミラは騎士隊を脱退した。
本来なら何かしらの手続きが必要なのかもしれないが、もうカミラにとって騎士隊は意味あるものではなく、騎士たちもカミラを持て余すだけだろう。
こうして、俺たち2人は騎士団詰所から去っていった。
「それで、これからどうする? 騎士を辞めたってことは、身分がなくなったってことなんだろう」
「そうですね。ですが、私たち2人が食いつないでいく方法はあります」
俺とカミラは通りを歩きながら、話していた。
そこでカミラが足を止めた。
彼女は目の前にある建物を指差した。
「ここです」
「なんだ? ここは」
「冒険者ギルド、という場所です。簡単に言えば、何でも屋の同業組合が運営しています。魔物を討伐するも良し、財宝を探すも良し……色々な人間がいますが、ここなら身分問わず、すぐに腕を売ることができます」
「なんだ、良い職業があるじゃないか。どうしてお前さんは冒険者にならなかった?」
「お恥ずかしい話、実家の親の
カミラは頬をかき、苦笑いする。
そうだった。たしかにカミラも名字持ちだったな。
騎士たちはカミラが
俺も前世では、今川家の
重い責務を背負わされて、自分の将来を
「はは、大丈夫だ。今日、ここから始めれば良いんだ。お前さんには武の才能があるから、きっと別の場所でも才能を発揮できるはずだ」
「わ、私に才能が……?」
「もちろん! 言っとくが、これは
「団長よりも、ですか? そんな、そんな」
「ふふ、近いうちにわかるさ」
カミラは否定したが、俺は確信している。
あんなイジメられていた環境下でも、カミラはくじけず行動していたのだ。
正しい環境に身を置けば、彼女はさらに伸びるだろう。
それから俺たちは冒険者ギルドの建物に入った。
入ると、そこは広い酒場になっていて、奥には受付人らしき女性が立っている。
酒場には多種多様な者たちがおり、顔に傷のある荒くれ者、やけに耳の長い人間、肌を露出した鎧を着た女、さらには獣と人間の合いの子のような者もいた。
なんだろう、珍しそうな顔で見られているな。
別の世界から来た人間だと、すぐに見た目でわかるのか?
「行きましょう、ウジザネさん」
「おー」
俺はカミラの後ろを追い、奥の受付人のもとに行った。
「こんにちは、バーバラさん」
「あら、将来有望な若手の女騎士さんじゃない」
カミラが挨拶をすると、バーバラと呼ばれた受付の女性はニコリと微笑んだ。
バーバラは少し年増で、
「私の誘いを蹴って、お堅い騎士職に就いたのに、こんなところに来るなんて、いったいどういう風の吹き回しかしら?」
「いや、実はその、ついさっき騎士を辞めてきたので……冒険者になろうかな、と」
「……本当??」
「はい、本当です」
「へえ、それは嬉しいわね!」
バーバラという女は微笑んだ。
「それに、良い顔するようになったわね。騎士だった時よりも晴れやかな顔をしているし」
次にバーバラの視線が、俺の方を向く。
「まさか、こんな良い男を捕まえたから
「こ、寿退社だなんて……っ!?」
「やっぱりカミラちゃんは、からかい甲斐があるわねえ」
バーバラはケラケラと笑いながらも、俺のことをしっかりと観察している。
俺もバーバラという女を観察しているから、まあお互い様だが。
「綺麗な顔したお兄さん、あんた、ただ者じゃないね」
バーバラの視線が、俺をじっと見る。
表情こそ柔らかいが、目の奥には警戒の色が見える。
「格好も、雰囲気も不思議だし……もしかして、
「おお、バーバラと言ったか。ずいぶん察しが良いな」
「このギルドで色んな男たちを見てきたからね。はじめは
なるほどな、この世界にも西洋、東洋の国々があるのか。
「え、ちなみに転移者だと冒険者ギルドに入れなかったりするのか?」
「いいや、そんなのないよ。少なくとも、この平和なルークス王国では転移者をどうこうしようとする制度はないから」
「他の国ではあるのか?」
「ああ、あるね。東のウォンドラス帝国では転移者を見つけたら通報義務があって、転移者は国直属の部下になるか、人体実験されるかのどちらかよ。他の国でも、特別な力を持った転移者は保護もしくは監視の対象になるし……つまりあんたは、この国でラッキーだったってわけさ」
ふむ、このルークス王国とやらは転移者について
それは我ながら運が良かったな。初めて出会った人間がカミラという善良な女であることも良かった。
「じゃあ、早速、冒険者ギルドに入れてくれ」
「あいよ、じゃあ身分証を出してくれ。街の門番に金属板をもらっただろう?」
俺はバーバラに身分証を
「ふむふむ、名前は……
「ああ。茶道や歌道に関しては気にしないでくれ。とりあえず、この刀を扱うことはできるから」
俺がそう言うと、横にいたカミラが訂正した。
「って……いやいや!! とりあえず、で済ませちゃダメですよ!? ウジザネさんはオークジェネラルを赤子扱いするほどの豪傑じゃないですか!」
オークジェネラルを赤子扱い。
その表現に、目の前にいたバーバラも、そしてギルドの酒場フロアにいた冒険者たちも驚いた。
カミラの言葉の後、一瞬だけ、しんと静まった。
それから、ある冒険者の一団がどっと笑った。
「ぶははっ、おいおい、俺の耳がバカになっちまったか!? そこのひょろい男がオークジェネラルを赤子扱いしたってホラ話が聞こえてきたぞ!!」
「きっと他の冒険者にナメられないように、っていう涙ぐましい演技だろうぜ。見ろよ、魔物を倒すどころか、血を見ることすらなさそうな
その冒険者の一団が笑って馬鹿にすると、他の冒険者もつられて笑いだす。
明らかな
やはり、この見た目では侮られるのだな。
中には俺のことをしっかり観察して、馬鹿にせず静観している者もいるが……ここにいる冒険者のおよそ8割は、俺を見た目で判断している。
「なら、試してみるか?」
俺がそう言うと、笑い声がピタリと止んだ。
最初に俺のことを笑った2人が、席から立ち上がる。
「ほう、意外と威勢が良いなあ、若造」
「俺らに喧嘩を売るとは、良い度胸だ」
2人の男は体格が良く、体や顔には傷があり、いかにも気性の荒い冒険者といった見た目だ。
片方は大きな剣を、もう片方は斧を持っている。
同じ席には仲間の冒険者たちが残っていたが、どうやらこの2人が顔役らしい。
「小僧、名前は?」
大剣を肩にかついだ男が尋ねてくる。
「無礼な者に名乗るほど落ちぶれていないのでな」
「はっ、口だけは達者だな。今なら土下座すれば許してやるんだが」
「お前たちこそ、覚悟しておいた方が良い。今からこっぴどく負けて、恥をかくのだから」
「ガキが。もう泣いて謝っても、許してやらねえぞ……!!」
斧を持った冒険者が、青筋を浮かべる。
「待ちなさい、あんたたち」
険悪な雰囲気になっていく氏真と冒険者たちに、バーバラが待ったの声をかけた。
「なんだよ、バーバラ。お前が止める権利はねえだろうが」
「今夜、俺の部屋に来るんなら止めてやっても良いがな、ぐはははっ」
「おあいにく、私はそこまで安い女じゃなくてね。それに、私は別に喧嘩を止めるつもりはないさ」
バーバラはニヤリと笑った。
「やるならこの若い子を冒険者という形にした方が良い。それなら私的な喧嘩ではなく、ギルド組合員どうしの正式な決闘として処理できるから楽なのよ……たとえどちらかが死んでも身内の事故ということになるから、衛兵にも目を付けられないし」
ギルド、というものについて、氏真は理解が深まってきた。
つまり冒険者ギルドは、国や公的機関から独立した自治組織、ということか。
もちろん国を揺らがすような破壊工作をすれば取り締まられるのだろうが、基本的にギルド内で起こっていることは、公権力が及ばないのだろう。
「そういうわけで、ウジザネくん」
「おーう」
「早速だけどギルド加入の手続きをするけど、良いかしら? ただ、もしもこいつらと戦いたくないって思うなら、このギルドに加入するのはやめて、衛兵隊の詰所に避難することをオススメするわ」
バーバラがそう言うと、男2人も笑う。
「俺たちもそれが良いと思うぜ。もし殴られるのが怖いのなら、さっさとここから出て行って、衛兵にでもなんでも泣きつけば良いさ」
剣を持った男がからかう。
「へっ、今さら
こうして俺は冒険者ギルドに加入し、からんできた男2人と決闘をすることになった。
◆◆◆お礼・お願い◆◆◆
第11話を読んでいただき、ありがとうございます!!
さっそくギルドでもトラブル続きで面白い!!
冒険者になって活躍する氏真を早く見たい!!
ヒロインのカミラの活躍も見たい!!
次回もまた読んでやるぞ、ジャンジャン書けよ、鈴ノ村!!
と、思ってくださいましたら、
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皆様の温かい応援が、私にとってとてつもないエネルギーになります!!
鈴ノ村より
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