第2話 今川氏真の死。戦国の終わり
◆◆◆ お知らせ ◆◆◆
この話まで、小難しい戦国知識がありますので、難しいと思った方は読み飛ばしても大丈夫です!! 氏真はどんな人生を送ってきたかを知ってくださればOKです!!
「……とまあ、俺の場合、そういう人生だったわけだ」
病床に臥せった俺は、記録係の青年にそう告げた。
「な、なんというか、
その青年は筆を置き、書き記した内容を読み返した。
彼が書き終えたのは、俺の人生の
それを改めてながめて、苦笑いを浮かべていた。
「言っても、そんなに波乱万丈か? 俺はそうは思わねえけどな」
「し、しかし、
「まあ、予定より早く今川家を継いだ時は一番つらかったな。でも、あとは気楽なもんだったぞ」
俺は当時のように、鼻をほじった。
「それに、本当に波乱万丈なのは、
「えっ?」
「時期はバラバラだが、一応はあの3人全員に、相談役として
天下人の苦労や重圧は、並大抵のものじゃない。
全員、栄華を極めれば極めるほど、とてつもなく孤独になっていた。
そばで見ていた俺も、痛々しいと感じるほどに。
俺は話し相手になったり、ちょっとした助言を行ったりしていたが、あいつら3人はみんな人知れず苦悩していたな。
「だから、俺は相当な幸せもんだったよ。妻子を自らの手で殺すこともなく、仲良くなったダチとはずっと共に生き、好き勝手に学び、楽しんで生きた」
大名だったら日々の政務や戦争に
山のような黄金、
抱き切れぬほどの美女、
頬が落ちるような美酒と美食、
アゴ先ひとつで万人を動かす権力。
……たしかにそれは魅力的な快楽だが、俺はそんなもん欲しくなかった。
剣術も、弓術も、茶道も、歌道も、
2年前に亡くなった最愛の妻も、血で血を洗うような日常ではなく、穏やかな人生を送れて幸せでしたと言ってくれたしな。
「幸せとはなんなのでしょうね」
ぽつり、と記録役の青年は言った。
「さあな、仏門に入った俺でも、そこんところはようわからん」
俺はずいぶん前に出家して、
「自分が幸せだと思えるんなら、そうなんじゃねえか? カネとか名誉とか、それは人それぞれの物差しだ。もしお前さんが
「ほ、
「ははっ、まあ良いじゃねえか。俺は影ながら応援してやるぜ」
俺は笑い、視線を天井に戻した。
「さて、もう休むかあ」
俺はそう言って、目を閉じた。
ようやくお迎えが来たようだ。
こうしてたまに若い人間とダベるのも楽しいことだが、もう体が限界だ。
「ああ、一つ思い残しがあったな」
「思い残し、ですか? あなたが?」
「そりゃ人間だから、一つや二つあるだろ」
「ぜひ、教えてください」
「えー……照れるから嫌だな」
「そこをなんとか」
俺は目を閉じていたが、青年が真剣な表情で懇願していることがわかった。
「ーーー妻に、旅をさせてやりたかったな」
「旅?」
「大名という立場から解放されたとはいえ、ずっと監視付きの生活だった。生活が保障されている代わりに、北条、徳川、織田、豊臣、そしてまた最後に徳川と……下手なことをさせないために、誰もが俺と家族のことを監視していた」
「それは、あなたが本気を出せば……天下を狙える方だからでしょう」
「はっ、買いかぶり過ぎだ。俺は身内に甘い人間だし、そんなことできねえ」
俺はため息をついた。
「とにかく、俺と妻は、ずっとカゴの中の鳥だった。だから俺たち夫婦は常々、いつか自由に広い世界を一緒に渡り歩いてみたいと思っていた」
まあ、これは高望みだな。
命があるだけマシだし、戦乱の世では俺より厳しい生活をしていた者たちは掃いて捨てるほどいる。
「とまあ、そういうことだ……あ、今のは記録に書くなよ。こっぱずかしいから」
「すみません、もう書きました」
「あ? やれやれ……ふふっ……」
そうして俺は、意識を手離した。
1614年、12月28日。
名門今川家を守り切れなかった『
◆◆◆お礼・お願い◆◆◆
第2話を読んでいただき、ありがとうございます!!
この作品では、あの最弱武将の今川氏真を異世界に飛びこませて、思う存分に無双させていきます!!
ぶっちぎりザコ武将の氏真が主人公なんてクセが強い!!!
実は強かった氏真をもっと見てみたい!!!
早く氏真を異世界無双させてやれ!!
次の話が気になる!!
と、思ってくださいましたら、
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皆様の温かい応援が、私にとってとてつもないエネルギーになります!!
鈴ノ村より
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