再婚で出来た義妹がウザい!!!



 朝、僕は朝食の準備をしていた。

 ここの家に居候するにあたって僕が望美さんに僕が提案した。いうか頼み込んで無理矢理頷かせた。

 朝食自体は別に苦でもない。本当に昨晩の残りを使ったりパンを焼いてもらったり。特に何もしてないわけだが、僕が台所に立ったのは他に理由がある。

 お弁当を作る。もちろん全員の4人分。元々望美さんや琴音ちゃんのお昼はコンビニ弁当や購買パンらしいのだ。なので、僕が作って印象を良くしてやろうという思惑だ。

 下心100%だと言われそうだけれど、何もしないで邪魔に思われたくない。ただでさえ勝手に転がり込んできたんだ。追い出されないようにしないと。

 まぁ原因である父さんは家事を何もしてない訳だが。能天気か。それとも追い出されないという自信があるのか。

「あ、あまねちゃん。無理はしないでね、大丈夫だから。大変だったらすぐに私が変わってあげるから」

 先ほどから望美さんはそわそわしていた。手持ち無沙汰

「大丈夫ですよ、ゆっくりしててください。お弁当作るのなんていつもやってたので」

「本当にあまねちゃんは良く出来た子なのねー。料理できる男はモテるわよ」

「......だといいですけど」

 あまね。16歳。恋愛経験ナシ。

 好きな人がいた事もない寂しい人生を送ってきました。



「おはようございますー」

「おはよ、琴音ちゃん。朝ご飯できてるよ」

 父さんも望美さんも出かけた頃、琴音ちゃんが起きてきた。ばっちりメイクも済ませて制服も着ている。

「いただきます」

 もぐもぐと朝ご飯を食べ始めた琴音ちゃん。

「よく寝れた?」

「いえ......あのサインがあると思うと興奮で」

「へぇ......よっぽど好きなんだね」

「お兄さんのお姉さんって何者......?というよりお姉さんがいたんですね」

「うん、こっちの離婚の時に母さんの方について行ったんだけど」

「へぇ〜、会えるなら会ってみたいなぁ」

「やめておいた方がいいよ」

「え、なんで?」


「相当性格悪いから」


 僕は琴音ちゃんに姉を紹介する気は微塵もない。寧ろ隠したいぐらいだ。僕は姉さんのことあんまり好きじゃないし、連絡もつきにくい。





 朝の登校。隣には先日知り合った異性がいる。よくよく考えてみると凄い出来事な気がする。

 昔は集団登校とかで他人とよく一緒の登校していたけれど、高校になればそんなものはない。高校一年生になったばかりの頃は自由に登校できるなって嬉しかった。反面、二年生にもなれば独りなんて寂しいから、話し相手がいるのは嬉しかったりする。

「あ、そういえばお弁当を作ったんだけど出来れば食べてよ」

 そう言って包んだ弁当包むを渡す。

「えっ!?良いんですか?」

「いつもあの購買なんでしょ?あそこ安いけど野菜とかないし」

「えっと、ありがたく貰います」

「良かった。男の手料理だから嫌だったどうしようって思ってたから」

「私だって毎朝弁当を作る苦労は知ってるつもりです。だから嫌がるなんてそんな事できないですよ」

 本当に琴音ちゃんが優しい人で良かった。良い子だし可愛いし、きっとモテるんだろうな。

 って、何を考えてるんだよ。

 誰がモテても僕には関係ない事じゃないか。なにか?俺はこの子にそういう感情でも抱いてるのか?


 やめよう。


「どうしたんですか?そんな虚しい顔して」

「ああいや、そんなんじゃないよ」





 昼休みがやってきた。

「おいあまねー。お前もしかして彼女できたかー?」

「なんだよ、おまえ」

 幼馴染で僕の後ろの席であるたけしが僕に話しかけてきた。こいつは本当に腐れ縁で、バカで授業中はいつもいびきを立てて寝ている。

 けど、異様にこういう事に関して鼻が聞く。いうならば世渡り上手?

「別に出来てないけど」

「嘘つくなよー親友だろー?」

「だから違うって。そもそも相手が誰だよ」

「あれだよ、あれ。お前朝女と一緒に登校してただろ。しかも結構可愛い子!」

「あれ、妹」

「お前姉だけじゃなく妹がいたのか!?」

「お前やっぱり良い反応するな。まぁ、義妹なんだけど。最近親が再婚したんだ」

「義妹......!?お前ギャルゲの主人公みたいな設定してるよな」

「設定っていうな。実際なってみると結構普通であんな風に綺麗に行くもんじゃないんだから」


「で、お前。凛先輩推しじゃなかったのかよ。乗り換えたのか?」

「は?違うが」

「じゃあやっぱり凛先輩が本命か!」

「そもそも誰も好きなんて言ってないだろ!?ただのバイトの先輩だって」

 僕のバイトの先輩で水泳部。外国人とのハーフという事らしく、神の色が金色も目立つ先輩だ。あと美人。

「じゃあお前先輩に告白されたら断るのか?」

「............そりゃあな」

「やっぱりお前!!」

「いやいやそもそもそんな状況になるわけないだろ?脈ナシなんだから」


「なんの話してるの?」


 話の中に飄々と入ってきたのは金髪の美人だった。

「ッ!?」

 心臓が止まるかと思ったた。おお落ち着けおれえ。

「凛先輩今日も美人っすね。今日お茶とかどうすかサシで」

「ごめんねたけしくん。今日用事できちゃったんだよね」

「ちぇっ」

 また誘ってねと笑う凛先輩。その仕草に少し心拍数が上がる。

「そう、その用事繋がりなんだけどさ、あまねくん今日のシフト代わってくれない?」

「もちろん良いですよ」

「良かった。それだけだから」

 じゃあねと手を振って教室を出て行く先輩。その後ろ姿を目で追っていた。

「お前、やっぱり好きだろ」

「悪いかよ」

「いやー?それにしても開き直ったな」

「でも、もう無理でしょ」

 そう、僕の好きな人は凛先輩。一年生の頃から繋がりがある唯一の先輩。

 憧れているし尊敬している。本当はこれは恋心じゃないかも知れないけれど、先輩の仕草にドキマギしてしまう。バカみたいな話だけれど。

「飯、食おうぜ」

 そう言って弁当箱を開ける。

「お前、白米好きすぎかよ」

 弁当箱は二段になった白米だけの弁当だった。

「ちょっと行ってくる」

「は?どこに?」



 一年生の教室へ。

「失礼しまーす、琴音さん居ますか?」

すっごい恥ずかしい。琴音も気づいていたのかオカズの入った箱を持ってやってきた。

「なんで弁当間違えるんですか。いや、それなら良いんですけど、なんで来ちゃうんですか??」

 少し彼女は不機嫌だった。ちょっと、いや結構ショックを受ける。

「ご、ごめん。でもお米だけ食べるのキツくてさ」

「じゃあはいこれ!もうあんまりこういう事しないでください」

「......ご、ごめん気をつける」



「ただいま」

「お前何があったんだよ。この世の終わりみたいな」

「いや、教室に行ったんだよ。弁当箱交換しに。そしたらめっちゃ怒られた」

「はぁ、そりゃあな」

「でもぶっちゃけそんなに怒るものかなぁ」

 弁当箱間違えただけじゃん。

「いや、そっちじゃないだろ」

「?」

「お前さぁ......鈍感か?」

「腹立つ言い草だな」

「おまえ、急に俺が女の子から弁当箱貰ったら、どう思う?」

「......彼女か?」

「ここまで言えば分かるよな」

「俺が彼氏じゃないか疑われるってことだよな?」

「そうだ」

「うわ、やっちゃった」

「お前よく善意が裏目に出るよなぁ。ま、全部お前が悪いけど」

 後で謝らないと。





 バイトが終わって家に帰り次第、僕はすぐに琴音ちゃんに謝った。琴音ちゃんはすごく煮え切らない表情をしてから言った。

「私も悪かったです。朝一緒に登校してちょっとした噂になったのも誤算だったし、お弁当を作ってくれたことがばれて彼氏かと疑われた。教室に来た時はなんか友達全員盛り上がるし、それがなんか嫌だった。ちょっと八つ当たりした事は、その、ごめんなさい」

「それは別に全然謝んなくていいよ。どっちも慣れてないんだし。距離感だって測れてないさ」

「はい、ありがとうございます」

 大丈夫、そうフォローはしてもちょっと俯いている琴音ちゃん。罪悪感を感じてるんだろうけど。

「結構琴音ちゃんって優しいんだね」

「へ?」

 突然のことに素っ頓狂な顔をする琴音ちゃん。いや、僕も自分で何言ってんだろうとは思ったけど。

「なんか最初の印象より真面目というか、もっとヤンキーみたいな怖い人だと思ってた」

「いや、誰ですかそれ!」

「いやだって、初めて会った時めっちゃ睨んでたから、人を殺す目だったから!」

「えぇぇ......そんな顔でしたか......そんな顔してたのか......」

 正直第一印象嫌われてると思ってたからね。胃が痛かったからね。

「てか、そんな事言い出したらあまねさんの方が優しいじゃないですか」

「へ?」

「料理もできるし何度も些細なことで気遣ってくれるし」

「いやだって、やりずらいじゃん?」

「うわぁ......ナチュラルに優しい人なやつだ」

 優しい、かぁ。

 他人に言われるとめちゃくちゃ恥ずかしいな。いや、嬉しいんだけどさ。

「まぁ、今日の事はごめんなさい。あとめちゃくちゃお弁当美味しかったです!じゃあね!」

 琴音ちゃんは少し恥ずかしそうに駆け足で部屋に逃げていった。とかいう僕ももうちょっとあの空気感は耐えられなくて、助かった。

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