第16話 再戦
あれから3ヶ月ほど経った。
相変わらず僕の日常は変わらず退屈で、なにか面白いことが起きないか――なんて考える毎日だった。
あれ以降、勇次郎とは連絡をあまり取っていなかった。全くというわけじゃないが、3週間に一度連絡を取ればいい方だった。
どうもあの日以降お互いギクシャクしているというか、気まずい雰囲気になっているのだ。だが、こちらとしても以前のように振る舞うのは中々難しく、どうしたものかと悩んでいた。
「早く元に戻ってくれるといいんだけどな」
僕はお気に入りの椅子に座りながら、虚空に向かって呟く。
だが、それは実際現実的でないなのは自分でも分かっていた。
ふと、ズボンに振動を感じ、ポケットから携帯を取り出すと着信がかかっていた。
しかも、相手は勇次郎からだった――。
僕は急いで電話を取る。
「もしもし」
「やぁ。つぴちゃん久しぶり。元気してた?」
久しぶりの勇次郎の声は以前のような野心に溢れたギラついた感じではなく、どこか優しさを感じるような口調になっていた。この数ヶ月で彼に何があったのだろうか。
「まぁ、なんとか。そっちこそコロナは大丈夫だった?」
「おかげさまでね。あのとききつかったー。喉痛いわ、味も分からないわで大変だったよ。もう二度とかかりたくないね」
勇次郎は苦笑しながら言った。その様子を聞いて、僕は勇次郎が以前の状態に戻りつつあるのではないかと思った。
「それはよかった――それで今日はどうしたの?」
「最近つぴちゃんと話してないなと思ってさ。近況報告?的な」
何か意図があるのではないかと勘ぐる僕へ、勇次郎は淡々と、けれども笑みを交えながら答える。
「なるほどねー……で、それはどんな意味で?」
「そんなに警戒しないでよ――って言っても自業自得か。別に勧誘しにきたんじゃない。そこは信じてくれると嬉しい」
勇次郎は真剣な声色で僕に訴えかける。どうやら勇次郎の言葉に嘘偽りはないようだ。
「……分かった。話を聞かせてよ」
それからはお互いの近況を報告しあった。大学での出来事だったり、身の回りの話、それに共通の友人――竹田やアキヒコさん、陽平などの話などをした。
だが、お互い避けるようにマルチの話はしなかった。
お互い一通り話題を話し終え、沈黙が訪れる。2人とも分かっている。きっと、ここからが本題なのだ。
先に口火を切ったのは勇次郎だった。
「それで本題なんだけどさ」
僕はゴクリと唾を飲む。
「近い内に会わない? そこでつぴちゃんの気になっていることも全部話すから」
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