第12話 作戦会議①

「ということで作戦会議を始めるぞ」


 竹田が仰々しく宣言する。

 あの日から数日後、僕は竹田が企画したグループ通話に参加していた。参加者は僕を合わせて4人で、全員高校時代の同級生だった。


「あれ? アキヒコは?」


 僕と小学生時代から高校まで一緒の安田昂輝やすだ こうきが質問する。先日まではアキヒコさんも通話に来ると言っていたが、この場には来ていなかった。


「さっき本人から連絡があってさ。急遽用事が入って来れないんだってさ」


 ちなみにこれは嘘だ。そもそも、竹田とアキヒコさんは仲がよろしくない。と言っても、竹田は全くそのことには気付いておらず、アキヒコさんが一方的に毛嫌いしているだけなのだが。


 まぁ、でも今回に関しては竹田が悪いと思う。竹田はまだ参加するとも言っていないのに、アキヒコさん含めた友人達の名前を勝手に使って昂輝たちを呼び込んでいた。勝手に名前を使われたことにアキヒコさんも腹を立てていた。


 竹田はこういうところがあり、僕含め一部の友人達からは反感を買っている。僕も後で一言物申しておこう。


「そっかー残念」


 久々に話したかったのだろうか。昂輝は残念そうに言った。そう言えば、昂輝とアキヒコさんは、入学してはじめはクラスが一緒で仲が良かったなと思い出した。


「そう言えば、 陽平も来てないね」


 昂輝が不思議そうに言う。僕と竹田は二人して「あぁ……」と歯切れを悪くする。村山陽平むらやま ようへい。彼も高校の同級生で、勇次郎やアキヒコさんと同じ専門学校に通っていた。


「あぁ……陽平はねぇ……」

「勇次郎が勧誘したせいで、マルチに興味津々みたいなんだ。何なら俺も入ろうかな

 なんて言ってるらしい。だから今回は呼んでない。あいつも馬鹿だよなほんと」


 僕たちは呆れながら言った。先日のアキヒコさんとの通話で、僕はその情報を得ていた。それを聞いた僕の正直な感想は『ほんとに馬鹿じゃないの?』だった。騙された勇次郎も馬鹿だが、あの勇次郎の話を聞いて入会したいなどという陽平はもっと馬鹿だと思う。


「えぇ……それ大丈夫なの?」

「まぁ、あいつは勇次郎と違って単純だからすぐに説得できるだろ。それにアキヒコがどうにかしてくれるさ」


 困惑する昂輝に素っ気なく竹田が答える。


 高校時代から陽平はよく言えば純粋、悪く言えば単純というようなやつだった。僕も人のことをとやかく言えた立場ではないが、彼は人が言ったことを全て真に受けてしまうところがある。それと金にがめつい。だから、勇次郎の言葉を信じてしまったのだろう。


「まぁ、陽平はどうにかするとして、まずは勇次郎だ。ぜひ忌憚きたん無いみんなの意見を聞かせてくれ」


 竹田はまるで司会者気取りだ。もしや、この状況を楽しんでいるのではないかとすら思えてくる。まぁ、流石にそんなことはないだろうが。


「そんなの絶縁一択に決まってるだろ」


 今まで沈黙を守っていた松上潤まつがみ じゅんがぶっきらぼうに吐き捨てた。


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