第13話 作戦会議②
「勇次郎は俺達との数年間よりも、出会って数ヶ月のヤツを取ったってことだろ? じゃあ、俺達も勇次郎のお望み通り見捨てればいい」
松潤は、酷く怒っているようだ。元々短気で癇癪を起こすこともある彼だったが、ここまでキレているのは僕も見たことがない。
「まぁまぁ、落ち着けよ松潤。結論を出すにはまだ早いだろ。もしかすると、何か見落としがあるかもしれない。俺達はそれを話し合うために今日は集まったんだろ」
竹田が松潤センパイを宥めるが、松潤は「ふん」と一蹴する。どうやら、彼の怒りの火は未だ燃え続けているようだ。
「にしても、まさか勇次郎がマルチにハマるなんてね。僕のとこに勧誘来たときはびっくりした! つぴちゃんや竹田から聞いてはいたけど、やっぱ実際に来るとは思わなかった!」
「ふん。俺のとこにも来たから言ってやったよ。『これ以上俺にその話をするなら俺はお前と縁を切る』ってな。俺はそう言ったのに、勇次郎はその後もクドクドと……」
新鮮な様子で話す昂輝とは対象的に、松潤は忌々しく呟いた。
「それに今勇次郎はもう手遅れだろ。あんなふうに晒されてんだ」
松潤は「天罰だよ天罰」と皮肉げに言う。僕は松潤の言っている意味が分からず、松潤に質問する。
「ちょっと待って松潤センパイ。晒されてるってどういう意味?」
「なんだ、つぴちゃん知らないの?あー……つぴちゃんはインスタのフォロワ―少ないもんな。竹田説明してやれ。お前も知ってんだろ? 」
話を振られた竹田は、「あー……」と歯切れが悪そうにしていた。
「勇次郎今インスタで晒されてるんだよ」
答えにくそうな竹田に変わって、昂輝が代わりに説明する。僕は驚いて、聞き返してしまう。
「晒されてるの!? 一体誰に……」
「割といろんなやつに晒されてるぞ。まぁ、大体は高校の同級生どもだけど。写真送るわ」
そう言ってグループに数件の写真が送られた。その写真にはインスタのストーリーで、
『これってマルチじゃんwww』
『勇次郎マルチハマってて草』
『これ無いわ―w』
というような投稿が勇次郎との会話のスクショつきで上げられていた。
「なんだよこれ……」
「勇次郎、誰彼構わず勧誘してんだよ。正直晒されるのも自業自得って感じ」
現実を直視できず、恐れ慄く僕に松潤は冷徹に言い放す。そして、「ほんっとバカだよな」と小さく呟いた。それを聞いた僕には、松潤がわざと冷血漢を演じているような気がしてならなかった。
「んで、今後どうするよ。正直勇次郎とこれまで通り関わっていくのは厳しいと思うぞ。あんなのと関わっていたら俺達まで同類に見られちまう。そんなの俺はゴメンだね」
「うーん僕は様子見かなー」
「俺も今のとこは様子見する。取り返しがつかなくなるまでは……な」
「つぴちゃんはどうするんだよ」
松潤から急に話を振られた僕は黙ってしまう。勇次郎と今後どうするかは決まっていない。
「まぁ、今日決めることでもないし、つぴちゃんもゆっくり考えなよ」
竹田は庇うようにそう言った。
その後は、誰一人勇次郎の話はせず、とりとめのない雑談をしたあとに解散した。
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