第11話 アキヒコさんの計画
「……それ
「うん」
動揺のあまりつい敬語になってしまった。僕の問いにアキヒコさんはさも平然といった様子で答える。
普段から飄々とした雰囲気で、いつも何を考えているかよく分からないアキヒコさんだが、このときばかりは僕も本当に何を考えているのか分からなかった。動揺しながらも、僕はアキヒコさんに質問を続ける。
「え? もしかして、そのマルチの中身に興味があるとか?」
「それはない。だって、あれ法律に触れてないだけでどう見ても一般的なマルチのそれでしょ。ていうか、オレは勇次郎が気づいていないだけで何かしらの法律には触れてると睨んでるけどね」
アキヒコさんは、そう冷静に分析する。だが僕は、なぜ彼がそんなことに関わる必要があるのかあまり理解できなかった。
「じゃあ、なんで行くの」
「まぁ、いくつか理由があるから順に話していくよ」
「まず、1つ目は単純に勇次郎に頼まれたから。竹田から聞いてるかもしんないけど、勇次郎含め、そのセミナーに入ってる奴らみんなノルマがあるらしいんだ」
「ノルマ?」
初耳だ。竹田もそんなことは言っていなかった。竹田は、勇次郎達から聞き出せなかったのだろうか。
「あれ? つぴちゃんは聞いてないんだ。あいつらノルマがあるらしいんだよ。なんか人によって違うとは言っていたけど」
「勇次郎の場合は月に3人を話を聞きに来させること。まぁ、先生と勇次郎と聞きに来たやつで仲良くお茶会ってやつだ」
僕は絶対に、そのお茶会とやらには行きたくないと思った。
「入会するかどうかはどうでも良くて、とにかく人を呼ぶのが条件らしい。まぁ、広告でも打ってるつもりなんだろうな」
「でも、それにアキヒコさんが協力する必要は無くない? ゆーじがノルマ達成出来なかったとしても自業自得でしょ」
「まぁ、それはそうだけど。でも、入ったばっかの勇次郎がノルマ達成出来なかったら、一体どんなペナルティーがあるか分かないんだよなー。一応念の為」
僕は、勇次郎はアキヒコさんに感謝すべきだと思った。こんなにも友人のためを思って行動してくれる友人はなかなかいないと思う。勇次郎は身の回りの友人を捨ててでもセミナーの仲間を取ると言った。だけれど、勇次郎は一度落ち着いて、冷静に身の回りを見てみるべきだ。
「それでもう一つの理由なんだけど」
僕はごくりと唾を飲み込む。
「単純に、あいつ騙したやつの面を拝んで一発ぶん殴ってボロクソに言ってやんないと気がすまないんだよね」
アキヒコさんの言葉にはメラメラと闘志が燃えたぎっていた。その様子を見て僕は苦笑する。彼の意志は硬そうだ。
「…………法律には触れないようにね」
「あったりまえじゃん。つぴちゃんの分まで殴ってくるからさ、安心してよ」
僕はアキヒコさんが実力行使に出ないことを心から願った。
その後、いくつか互いに情報共有をした後、通話は終わった。
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