第10話 アキヒコさん
「久しぶりだね、アキヒコさん。元気してた?」
「おー久しぶり。いや、そんなことより、なんでつぴちゃんがそれ知ってるわけ!?」
アキヒコさんはかなり驚いた様子で僕に質問してきた。電話越しの僕にもその驚きが伝わってくる。
アキヒコさんこと、
また、アキヒコさんは勇次郎と同じ部活に所属していたので、勇次郎ともかなり仲が良かった。だが、竹田とは相性が悪いのか、一緒に行動したり喋っているところを見たことがない。僕たちは高校の頃から、竹田を除いた3人でよく一緒にラーメンを食べに行ったり、カラオケに行ったりして遊んでいた。
高校卒業後、アキヒコさんは勇次郎と同じ専門学校に進んだ。高校時代は特進クラスに入っており、頭も良かったので、きっと良い大学に進むんだろうなと勝手に予想していたのだが、本人から勇次郎と同じ専門学校に進むことになると聞いたときは僕も驚いた。専門学校に入学してからは、勇次郎と一緒に行動しているようだった。なので、彼以上に今の勇次郎に詳しい僕の友人はいないだろうと踏んでいた。
「ゆーじが僕のとこに勧誘に来たんだよ」
僕は先程自分の身におきた出来事に加えて竹田から聞いた情報をアキヒコさんに話す。アキヒコさんは僕の話を聞いて合点がいったのか、「なるほどね」と納得したようだった。
「いや、学校内の人間だと今の勇次郎がやってること知ってるやつは、オレ含めごく僅かなんだよ。てっきり、学校外のつぴちゃんが知ってるもんだからさ、他の人間にも手当たりしだいに声かけて広まってるのかと思ってビビったわ」
「同じ学校のお友だちとかには、あの人勧誘かけてないの?」
「あぁ。オレに勧誘かけてきたときに、同じ学校のやつ誘うのは違うだろって言って、学校内ではやらないようにさせてる。学校内でやらかしたら、普通に浮くだろあいつ」
確かに、同じ学校の人間がマルチをやっていたら流石に僕でもちょっと身構えてしまう。ましてやそれが人間関係がある程度希薄な大学の授業とは違って、ある程度人間関係が重要となってくる専門学校だと、彼への偏見はなおさら酷くなるだろう。
「でも、まだ知ってるのはつぴちゃんだけで良かったよ」
「結局それも時間の問題じゃない? きっとしばらくしたら、他のとこに声かけると思うよ」
勇次郎は今の友人を捨ててでも、同じセミナーの仲間を取ると言ったのだ。そんな事を言うやつが、友人の減少を気にするとは思えない。
「ねぇ、つぴちゃん。今から話すことは誰にも言わないって約束してよ」
唐突にアキヒコさんは真剣なトーンで話し始めた。彼の声には決意に満ち溢れていた。
「オレ、勇次郎をあんなふうにした元凶――先生だか社長だか分かんないけどそいつに会ってこようと思うんだ」
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