第9話 困難な道のり
「えっとさぁ……これアカウント間違ってたりしない? いくら何でもこんな胡散臭い人に騙される人いないでしょ」
「そいつのフォロワー見てみ。勇次郎いるだろ。あと、カイトもこの垢フォローしてんの確認してる」
竹田の言う通り、そのエセ社長のフォロワーには勇次郎がいた。どうやらこの胡散臭い社長と先生とやらは同一人物のようだ。
「えぇ……ないわぁ…………」
僕は呆れて何も言えなかった。僕は勇次郎は頭の良い方だと思っていたが、今日を期に、認識を改めなければいけないようだ。
「よりによって、こんなのに騙されるなんて……ほんとバカじゃないの?」
先生のことは『口止めされてて言えない』のに、インスタはフォローしているのか……。しかも専用のアカウントでフォローするならともかく、普段から使ってる表垢でフォローしていたことで、竹田に見つかるなんて間抜けもいいところだろう。
逆に言えば冷静な判断ができないほど勇次郎は洗脳されているということだ。僕は今でも、なんとか勇次郎を説得して正気に戻すつもりでいたが、それは困難な道のり――茨の道を進むことのようだった。
「あいつ前まではこんなんじゃなかったのに……絶対、知能低下してんだろ」
竹田がため息をこぼす。
「すまん、つぴちゃん。俺、そろそろ彼女んとこ行かなきゃならねんだわ。また明日にでもゆっくり話そうや」
竹田は申し訳無さそうに僕に言う。壁掛け時計を見ると、針は11時を指していた。竹田は数ヶ月くらい出来た彼女にぞっこんだ。竹田が付き合ってからというもの、夜中に通話する機会は以前と比べてめっきり減った。竹田のことを思えば、喜ぶべきなのだろうが、僕の心中には一抹の寂しさがあった。こうやって、いつか一人一人姿を消していくのだろうなと。
今思えば、今まで毎日のように開かれていた通話が無くなったことも勇次郎が染まった要因のひとつなのかもしれない。これに関しては誰が悪いというわけではないのだ。皆が各々の道を進んだだけ、ただそれだけなのだ。
「分かった。こっちでもいろいろ情報を集めてみるよ」
「助かる。こっちも色々声はかけとくわ」
「彼女さんにもよろしくお伝え下さい」
「おうよ。んじゃ、おやすみ」
そう言って電話は終わった。僕はメッセージアプリを再度立ち上げ、ある人物を探す。中々見つからなかったが、下までスクロールするとようやく見つかった。僕は『アキヒコ』という名前のアカウントにメッセージを送る。
『お久しぶりです。勇次郎の件について聞きたいので時間があるときにご連絡ください』
僕がそのメッセージを送ると一瞬で既読がつき、電話がかかってきた。
「久しぶりだね、アキヒコさん。元気してた?」
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