第8話 センセイの正体

「まず、お互いの持っている情報を共有しよう」

 竹田はそのように言った。


「俺もこの数週間ずっと情報を集めてきたんだ。だから、俺のほうがつぴちゃんよりもそのへん詳しいとは思うけど、念の為つぴちゃんの話も聞かせてくれ」


 竹田は交友関係が広いのと、本人のある意味狂気的な調査能力のおかげでこの手の調べ物は得意分野だった。


「分かった」


 そうして僕は、竹田に勇次郎から聞いた話を全てを話した。竹田は「あぁね」などと相槌を打っていたが、目新しい反応は無かったので、きっと僕が話したことはとっくに知っている内容だったのだろう。


「僕からはこんな感じ。もう竹田は既に知ってる内容だったでしょ?」

「いや、そうでもないさ。あいつの近辺を探ってはいたけど、あいつがどう思っているかまでは分からなかったからな。良いタイミングにあいつの本心が知れて良かったよ」


 淡々と話す竹田だったが、その言葉の節々から勇次郎に対する怒りを僕は感じた。それは当然だろう。勇次郎は今の交友関係を捨ててでもセミナーとやらで出会った人たちとの関係を優先すると言ったのだ。実際僕もそこに関しては納得できていない。


「さて、次は俺の話なんだけど――つぴちゃんは、先生ってやつはどんなやつだと思う?」

「うーん……大体こういう胡散臭いことしてる人は、自称社長とか自称投資家みたいな人ってイメージ」

「だよな。俺もそう思う。俺この前、勇次郎とカイトに聞いたんだよ。お前らのトップのこと教えろって。そしたらなんて返ってきたと思う?」


「なんて返ってきたの?」

「ふたりとも口を揃えて言ったよ。『先生から口止めされてて言えない』ってさ。普通あり得るか? 会社で例えるなら、自分の会社の社長は秘密なので言えませんって言ってるようなもんだぞ」


 竹田の言う通り、自分のところの代表の名前を隠すなんておかしい。余程やましいことがなければそんなことする必要ないと僕も思う。


「だが、俺はその先生のインスタアカウントを手に入れたんだ。つぴちゃんにも送るから見てくれ」


 スマホを見ると、メッセージアプリのトーク画面に、竹田からURLが送られていた。


「これどうやって見つけたの?」

「まぁ、色々あるのさ。とにかく見てみてくれ」


 竹田から送られたURLを開くとインスタが起動し、先生と思わしきアカウントが表示される。

 アイコンは、サングラスを付けた黒髪の短髪の男がアロハシャツを着て、ビーチのようなところで映っている写真だった。


 そのアカウントのユーザーネームには『年収1億☆タワマン最上階に住む田舎好きの社長AKIRA』と書かれ、プロフィールには『私が1億稼いだ方法を限定で伝授いたします!以下URL……』だった。


「いや、いかにもすぎるでしょ!?」


 僕は思わずツッコんだ。勇次郎はこんなどこからどう見ても詐欺師です――みたいなやつに騙されたのかと頭が痛くなってきた。

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