第8話 馬車で作戦会議
(アウロラ視点)
私たちは今、帝国から王国へと向かう馬車に揺られている。
ガタガタと揺れる馬車の中で、麗しい金髪の貴人が悪態をつく。
そう、私である。
「で、あんたどうするつもりなのよ。何か目星はついてるの?」
目星、つまり誘拐事件の犯人の目星である。
私が尋ねる相手は正面にいる東方黒髪女だ。左大臣の娘だとからしい、知らんけど。
「目星って、私が知るわけないじゃないですか」
黒髪女はこともなげにそう言う。
「何を偉そうに言ってるのよ。全くしょうがないわね、そんなんだから宮廷内で嫌われるのよ」
「……そっちも相当嫌われるのには長けている様子でしたけれどね」
「あんたほどじゃないけどね」
「嫌われてるのは認めるんですね」
「あんたに比べれば大したことないけどね」
私がそう言うと一瞬、沈黙が訪れる。が、すぐに黒髪女が口を開く。
「……この密室ではあなたお得意の逃げ足が使えないことを忘れないことですね。次に余計なことを言っていたらその顔を蹴り飛ばしますよ」
「すぐそうやって殴る蹴るって、あんたって頭脳派ズラして脳筋のバカよねw…………ぐえっ! 痛ったぁ、やったわね!」
黒髪女が私の頭を平手打ちしてきた。
この女、もし将来私の軍門に下ったときには速攻でクビにしてやる。
当の黒髪女は一度叩いて気が済んだのか、冷静になって言う。
「さて……戦争やら真犯人の話も重要ですが、その前に情報共有をしましょう。まずお互いの自己紹介、次に日本語がわかる件、そして最後に戦争や真犯人について互いがどこまで知っているのかです」
まあ、筋の通った話である。
いい加減情報を隠してこの女に嫌がらせするのにも飽きてきた頃だ。
「わかったわ。その提案に乗ってやらないこともないわ」
「……」
黒髪女は不満そうな顔をしたが、今回ばかりは耐えて本題に移った。
- - - - -
私たちはまず、互いの名前やこの世界での出自・立場を共有した。
もちろん、私はノクストン公爵家のアウロラ=ノクストン。
そして黒髪女は、名家・黎明の一族直系の
とりあえず、お互い嫌われ大貴族令嬢であることはわかった。
次に話したのが、
お互い同じ時代、そして同じ日本出身。
なおかつ、前世で自分がプレイしていた乙女ゲームの悪役令嬢に生まれ変わっている。
ただしプレイしていたゲームは違っていて、私は西洋ファンタジー学園ものであるのに対し、黎音は東洋ファンタジー宮廷ものらしい。
そこまで話したところで、黎音が堪えきれずといった感じに笑う。
「フフフ。普通、悪役令嬢に転生といったら改心して周りが驚くのがテンプレなのに、あなた
なんだぁこの野郎?
「そりゃ少し前までアウロラとして生きてきたのに前世を思い出したからって急に別人になるわけないでしょ? そんなこと言ったらあんただって性格最悪のままじゃない」
私が言うと黎音はあっけらかんと答える。
「私は前世から今に至るまで善良で性格の良い美少女のままですよ? 嫌われてるのは噂話が原因で宮廷の人たちの誤解です」
……自覚がないぶんこちらの方がタチが悪い気がする。
■あとがき - - - - -
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