第6話:君となら刺激的な毎日が過ごせそうだ
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寒気がして私は自分の体を抱きしめた。私はジョンのことを侮っていた。こいつは正真正銘の異常者だ。その時だった。ハロルドが一歩進み出てわざとらしい明るい口調で手を叩いた。
「よし、決まりだね。おじさん肩の荷が下りちゃったよ。それじゃ、手続きを頼むね」
明らかにハロルドは、私をかばってくれた。
「……大丈夫、メアリーちゃん?」
ハロルドが私に耳打ちする。
「ご心配をおかけしました。大丈夫です」
真性のサイコパスは危険すぎる。会話するだけで精神が汚染されるのを体感するなんて。私が深呼吸するのと同時に、ジョンが軽く身を振った。それだけで、ジョンを何重にも縛り付けていたベルト付きの拘束衣がずたずたに引き裂かれて床に落ちた。
「なっ!?」
「なんだと!?」
警備員が驚愕するのを無視して、簡素な灰色の服を着たジョンは軽やかに私に近寄った。これがジョンの異能だ。ここで見るとは思わなった。その名は「アグノスティック」。本人にも私たちにも認識できない上に理解できない、異次元のナニカを使う。認識不可能、理解不可能だから防御も回避も不可能という反則極まりない異能だ。
「さぁ、行こうか。君となら刺激的な毎日が過ごせそうだ」
ジョンが手を差し出す。私は自分の手が震えていないよう祈りつつ、その手を握り返した。
「あなたが協力的である限り、個性は尊重するつもりです」
ジョンはにこやかな笑顔のまま私の手を撫でる。
「ああ、思った通りだ。君は素晴らしい。筋繊維も脂肪も血管も全部が合格だ。理想的だね」
「それはどうも」
私は不快感に耐えながら答える。手を撫でるな、鳥肌が立つ。
「安心していいよ。僕はちゃんと手順を重んじているんだ。君はまだ白紙のキャンバスだ。完成してないのに汚してはいけないからね」
「意外と紳士なのですね」
「芸術品の制作に下準備は必要だろう? それに、完成した時に歪んでいると台無しだ」
ジョンは私の手を弄びながらにこやかにのたまう。この後非常ベルを鳴らした警備員によって、軍隊並みの武装した面々が押しかけてきて、ジョンの保釈がとんでもないことになったのは言うまでもない。
――こうして私、メアリー・ケリーはジョン・ドウとコンビを組むことになった。犯罪捜査官と、未遂のシリアルキラーという組み合わせで。
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