第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト短歌の部 二十首連作「介護日記」

金子ふみよ

「介護日記」

病院の待合室から夕陽見え「様子見ましょう」認知症の父


強烈な眠気がとたんにやって来る要介護の父寝かしつけて


憑き物が落ちたみたいな無力感ショートステイへ父を送って


帰宅して35缶を流し入れる介護の父の夕食を作る


めまいする悪寒や吐き気波がくる介護の帰路の帰りたくなさ


王族のように足組み車いす父はこれから内科の受診


病院のレストランにてうどんのびる父の食事の介助を終えて


勤労感謝の日デイサービスのごちそう私はカップラーメン


めまいでも腰が病んでも介助する歩行困難父を支えて


父親の一挙手一投足が気になる居間のチェアで寝始めていても


家ではまるで私がU字歩行器父を抱えてゆくりと歩く


飲み込みが困難になった我が父にこの歳になったか小さな背中


肺炎の父の口には酸素マスク命をつなぐ点滴をする


電話鳴る病院へ急ぐその時父の灯火は消え


炎昼の日盛り過ぎて納棺の支度と整えあっという間に


時計見る火葬は早く終わると言う収骨に立つもう涙なく


父が逝きたった一人の家に居るふとした瞬間無力感来る


読経する位牌見ながら拙くも戒名入れた夫婦位牌に


昼前に遺影を飾る母の横四十九日を過ぎたこの日よ


亡き父の月命日に真言の動画を流す一人の合掌

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト短歌の部 二十首連作「介護日記」 金子ふみよ @fmy-knk_03_21

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ