第4話朝の喫茶店で

武田は出勤前に必ず、喫茶店でアイスコーヒーを飲んでいる。

これは、入社した時以来毎日。

今年でこの喫茶店ポエム通いも8年目だ。

武田は朝刊を読みながら、アイスコーヒーを口に運んでいた。

「リーダー?ねっ、リーダーでしょ?」

声がするので、顔を上げると亀山と井口だった。

「リーダー、相席で良いよね?」

「……う、うん」

武田は朝刊を仕舞い、話しをした。

「君たちに尋ねる。人生には何が付きもんだ?」

亀山は考え込み、井口は、

「セックス」

と答えた。

「せ、セックスだと〜!贅沢は日本の敵です」

「じゃ、リーダーは童貞なんだね?」

と亀山が突っ込むと、

「初めての相手は、ナンシー。でも、日本人だ」

「それって、ソープと言うのでは?」

「違う!僕はナンシーを愛していた」

「で、どうなったの?」

と、井口が尋ねると、

「他所の風俗に転職したよ」

「うわぁ〜、痛い過去だね」

「誰にも言うなよ!」

「うん」

「うん、分かった」

井口と亀山はお勘定をリーダーに任せて、先に出勤した。

リーダーは、ポエムでサンドウィッチを食べてから出勤した。


「おはようございます。リーダー」

「おはよう。ひかるちゃん」

「気安く『ひかるちゃん』って、呼ばないで下さい!初めの人がナンシーさんだったって聞きましたよ。そのナンシーさんは、無理難題をリーダーに言われて、姿を消したとも。女性の敵です」

と、山下は憤慨していた。

「ひかるちゃん、それは誤解だ」

「じゃ、亀山君達がデタラメを言ってたとでも?」

「ナンシーはナンシーだが、無理難題は言って無いし、姿を消したのはあっちが勝手に店を変えたんだ」

「リーダーは、普通の恋愛は無理ですね」

と、言って山下は自分のデスクに座った。

亀山と井口はニヤニヤしながら、話しを聴いていた。

「OKOK、リーダー。僕たちに秘策がある」

「う、裏切り者が何だよ。秘策って」

「俺等が変装して、亜美ちゃんに絡むから身を呈して亜美ちゃんを守る寸劇をしよう」

「そうだよ!リーダー、これは亀山の発案だけど、結構良いスパイスになるかも」

「あと、秘密道具もあるよ」


定時、17時。

亀山と井口は先に会社を出た。

小林亜美が人気の無い道を歩いていると、変装した亀山と井口が亜美に絡んだ。

「だ、誰か助けて〜」

すると、電柱の陰からリーダーが飛び出した。

頭に女性モノの下着を被り、

「ほらほら仮面ライダーだよ!安心しなさい、お嬢さん」

「あ、あなたは誰?」

「私の名は……」


ポンポン


「何ヤツ?」

「警察の者なんだけど、お兄さん、ちょっと話しを聴きたいんだが」

「どうして?僕は正義の味方だよ」

「何故に、女性の下着を被ってるの?」

「これは、仮面ライダーのコスプレです」


亜美は走って逃げて行った。

「君はどこの社員?」

「……そ、その先のサ高住の総務課の人間です」

「何が、正義の味方だよ。免許証持ってる?」

「はい」

と、武田は警察官に免許証を見せた。

「歳は30歳かぁ~。いい歳こいてパンツ被って何が仮面ライダーだ。今の子供だって、こんなことしないよ」

「すいません」

「今日は、厳重注意だけど次回は署に引っ張るからね」

「はい。すいません」


警察官は立ち去った。

「ナイストライ!リーダー」

「あっ、亀山〜」

「後、一歩だったね」

「何が?全然成功してねぇじゃん。亜美ちゃん走って逃げるし」

「イヤイヤ、逮捕にもう一歩だったね」

「井口コノヤロ〜!」

亀山と井口は笑いながら、小走りに現場を立ち去った。

頑張れ!リーダー!

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シュレーディンガーの迷い猫 羽弦トリス @September-0919

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