第3話リーダーの秘密
その日は、夕食に半沢と武田が蕎麦屋に行き、日本酒を飲みながら話した。
「リーダー、リーダーって学歴は?」
半沢が武田に問うた。
「い、一応、大卒」
「ヘェ~大卒ねぇ。俺は関西の大学卒で専攻は法律、リーダーは?」
半沢は、カウンター席の板に肘をつきながら、日本酒を煽った。
「物理学」
「えっ?物理学?何だ、理系かい。大学はどこ?俺の大学は結構有名な浪花大学だよ」
「へ、ヘェ~。いい大学だね」
武田はいたわさを口に運び、グイッと日本酒を流した。
「リーダー、どこの大学?」
「しつこいなぁ。一応、東都大学」
「と、東都大学?まさか〜、リーダーのホラ吹き!」
「みんなには、黙っていてくれ。頼むよ」
「じゃ、ホントに東都大学なの?」
「うん」
「うわぁー、リーダーのクセに東都大学!何で東都大卒がこんなちっちゃな、サ高住で働いてんの?」
「じ、実はこのサ高住の管理会社の会長の孫なんだ」
「なんだって?会長の孫?」
「うん」
「リーダー、ウソが上手いね?」
「これ見る?」
と、武田はスマホの写真を見せた。
「うわっ、会長とリーダーが並んで酒を飲んでる。……あ、会長も名字は武田だわ」
「頼むよ。誰にも言わないでくれ」
「何でよ?」
「単なるボンボンと勘違いされるから」
「物理学でなに勉強したの?」
「量子力学」
「あ、シュレーディンガーの猫のね?あれ、どういう意味?」
半沢は、大葉の天ぷらにたっぷりつゆにつけて口に運ぶ。
「簡単には説明出来ないけど、箱に猫がいてAとBのどちらかのボタンを押すと毒ガスが出るとして、その状態の猫を『2分の1猫は死んでいる』と、言う決定付けられた……」
「もう、いい。分かったよ!リーダーは東都大卒でボンボンなんだな。その事、上司は知らないの?」
「うん。おじいちゃんとの約束で、決してこの秘密を口にしたらいけないって決めてるんだ。誰にも言うなよ、半沢!」
「ま、俺は信じるけど、周りは信じないだろうから大丈夫だよ」
「オー・マイ・ブラザー。ありがとう」
翌日、武田が出勤すると、井口が、
「リーダー、おはようございます。聞きましたよ!東都大卒なんだってね?半沢に見え張ってどうするの?」
「そうだよ、井口の言う通り!リーダーの嘘つき!」
「なんだ、亀山!お前ら、オレを馬鹿にしてんのか?」
「イエース!オッサンリーダー!」
今後しばらく、リーダーは嘘つき呼ばわりされていた。
半沢は、総務課の若い連中みんなに言いふらしたのであった。
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