第2話カラオケ

深夜まで飲んだ、一行はカラオケ屋に行く。飲み放題2時間コースを選択した。

一行は、明日も仕事なのにまだ、飲むつもりだ。女性陣は、ソフトドリンクだが男連中は酒を飲む。

亀山なんか、さっきの居酒屋のトイレでリバースしたのに、まだ、酒を飲む。

リバースして、飲むと酒が強くなると言う迷信じみた説を忠実に守っている。

2回目の乾杯をした。

井口が先陣を切った。

彼はサザンの「太陽は罪な奴」を熱唱した。夏になると、誰かがこれを歌う。

「亜美ちゃん、どんなアーティストが好きなの?それを歌ってあげるよ!」

と、武田は言った。

「ありがとうございます。私はヒゲダンとか好きです」

「……」


「ねぇねぇ、半沢、「ヒゲダン」って何だ?」

実は武田はヒゲダンを知らないのだ。

「オイオイ、リーダー。そんな知識で亜美ちゃんにカッコつけようとしたのか?」

「頼む、半沢、教えてくれ!」

2人は小声で話している。亀山が今は、「あぁ、デンジマン」を歌っていた。

「半沢、「ヒゲダン」って何だ?」

「松鶴家千とせの事だよ!ヒゲが特徴的なアーティストだよ」

「し、松鶴家千とせ?フッ、なんだ。楽勝だぜ」


「では、この武田が歌います。新人の亜美ちゃんへ捧げます。ヒゲダンで「夕やけ小やけ」!」 

「……」

「……」 

「……」

取り敢えず、みんな拍手をした。

「夕やけ小やけ〜……、オレが夕やけだった頃、弟は小焼けで、父さんは胸焼けで母さんは霜焼けだった、俺は人間やる前、夕やけやっていた〜、イェーイ!……わっかるかなぁ〜?分かんねえだろうなぁ〜♪」

武田は、得意そうに歌っていた。

そしして、亜美にウインクした。女性陣は不思議な顔つきをして、男性陣は笑っていた。

「ねぇねぇ、ひかるちゃん。これ、ヒゲダン?」

「誰、松鶴家千とせって?全然違う!」

「えっ?半沢!オレを寄りによって亜美ちゃんの前で恥をかかせやがったな!」

武田は顔を真っ赤にして、憤慨していた。

「リーダー、騙される方がバカなんだよ!イェーイ!」

「このクソガキ!」

「リーダー、喰らえっ!」


ブスッ!


井口がマイクでカンチョーした。若い連中は、大爆笑。

『うわぁ〜、コイツら超ガキ!アラッ?亜美ちゃん、大爆笑してる。ここはコイツらに合わせるか?しかし、媚びることはねぇ、俺はこの中の年長者で30の大人!大人には大人の魅力がある。俺のバラードで亜美ちゃんをメロメロにしてやる。聴いてくれ!亜美ちゃん!』


「リーダー、また、次の番だよ!」

「ガキどもよ!俺のバラードを聴け!心臓の弱いヤツはパンツ脱いどけ」


「こらっ、テツヤ!なんば、しよっとか?……今も聞こえるお袋〜の声〜♪」

「リーダー、これって、海援隊じゃないの?「母に捧げるバラード」!」

リーダーは無視した。

周りは各々喋っていた。誰も聴いていなかった。

リーダーは、涙を浮かべた。

そして、一人、喫煙所に向かった。

「もう、や〜だ〜。いっつもそうじゃん。いい加減、神様、俺に彼女を!」

1時半に解散した。

翌朝、9時。


男性陣は昨夜の酒が残り、全員マスク着用して、ブレスケアをガリガリ噛んでいた。

リーダー頑張れ!

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