破 ―― オイオイ、お前も死ぬぜ?


 そこで、俺とレオンはハルの紹介で、農作業の手伝いをしていた。

 ポイントは、土を耕すことを中心に行うこと。

 なぜ、農作業をするかというと、実はこのゲームにおいては、低レベル時の救済のために、こういった農作業で経験値が稼げるのである。

 しかも、この農作業は「攻撃力」や「防御力」のブーストを貰えるというオマケ付きである。

 俺は、レベルが上がっている実感を感じながら、土を耕してはいるが、レオンはかなり不満のようだ。


「だいたいさ、なんで俺らがこんなことをやらなきゃいけないんだ」


 レオンはそれこそ土にクワを一振りするたびに不満の嵐。

 「こんなのゴブリンの仕事じゃない」だの、「いたずらがしたい」だの、「疲れたから休ませろ」だの、もう散々、言いたい放題である。

 そんなレオンをみて、エレンとドランは他人事のように応援する。


「レオン、がんばれー!」

「ぼ、僕も応援しているよ!」

「ふざけんな!お前らもやれよ!」


 そして、ついにはレオンはクワを投げ出して、地面に倒れこむ。


「もう無理だ!こんなのゴブリン虐待だろ!反対だ反対!」


 そう言いながら、だだをこねる。

 そして、俺はステータスを確認する。


「===

 LV:5

 名前:コリン

 職業:ゴブリン/勇者

 HP:178 MP: 21

 攻撃力:21 防御力:19 知力:9 素早さ:14 運: 11

 ===

 死亡フラグ――魔族の群衆に無残に殺される」


 さすがに、ここまでステータスが上がるといいだろう。

 確かに、魔族襲撃イベントであるとはいえ、序盤だからそれほど強くはない。こうやってレベルを上げていけば十分に勝てる可能性はある。


 俺は『みんな大変ね~おほほほほほ』というような、余裕しゃくしゃくの顔をしているエレンとドランを見る。

 その二人を俺は振り返り、そして名指しする。


「お前らはお前らでやることがあるぞ」


 すると、エレンとドランは『余計なことをしないでいいよ』という表情で俺を見る。

 ちなみにレオンは、エレンとドランに矛先が向いたのが楽しくて仕方ないようだ。


「そうだぞ、俺のように強くなりたければ、黙ってコリンのことを聞くんだ!」


 エレンとドランはため息をつく。


 ◇◆◇


 俺はエレンとドランを、ハルのところへ連れて行き、そして調合をさせる。

 そして、不満そうなエレンとドランを他所に、ハルに挨拶した。


「あっ、コリンちゃんだ!調合を手伝ってくれるんだ!」


 ちなみに、この調合という方法でも経験が手に入る。

 これらは知力をブーストできるのだ。

 そして、あとは単純に魔族との決戦であれば、ポーションがかなり必要になる。

 なので、いまのうちに作っておくことも攻略する上で肝心だ。


「え~?調合なんてつまんないです~。紅茶を飲みながらドーナッツ食べる修行がいいです~」


 エレンが不満を垂れる。

 しかし、俺はそんなエレンに言う。


「それは修行になんねえだろ。いいから黙ってやれ」


 そう言うと、二人はブツブツと、薬草をすり鉢ですり潰して、ポーションの原液を作ったり、その原液と原液をかけ合わせたりして、ポーションを調合する。


「おい、お前ら!サボるんじゃねえ!」


 そんな二人に対して、さっき無責任に眺めていた二人に対して、恨みを晴らさないかと言わんばかりに、レオンは二人をガミガミと怒鳴りつけるが、二人は知らん顔である。

 それでもすり潰したりして、どうやら疲れてきたらしく、二人はポーションを調合し終わると、机にひじをついたりして、だるそうにしていた。


「も~~~~~、疲れました!」

「僕、もう動けないよ……」


 そう言うと、二人にねぎらいのつもりで、ハルがドーナッツを差し入れする。 


 「おつかれさま!頑張ったね、二人とも!」


 そう言われて二人は嬉しそうにドーナッツを食べている。

 それを見て、レオンも「ずるいぞ!」と言って、ドーナッツを食べ始めた。

 俺も、ハルがドーナッツを差し入れしてくれたので食べることにした。


 食べながらステータスを見る。


「===

 LV:9

 名前:コリン

 職業:ゴブリン/勇者

 HP:221 MP: 40

 攻撃力:28 防御力:25 知力:20 素早さ:20 運: 19

 ===

 バフ――ドーナッツ」


 俺は見慣れないバフ・ステータスを見つけた。


 ドーナッツ、だって?

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