第3話 新討伐イベント開催?
悠斗ことシーカーは近くの噴水広場まだ行き、メサを使って目の前にモニターを表示し、慣れた手つきで多くのフレンドの中から将呉ことSyoをすぐに見つけて連絡を入れる。
「早く出てくれよ……ん?」
映像に映ったのは、木製の小さな小屋の中で、Syoがナイフで氷をゆっくりと慎重に削っていた。
「な、何やってんだ……Syo」
「おっ?シーカーさんじゃあないか」
「もうすぐで開催時間が迫っているぞ」
「あぁそっか‼︎忘れてた」
ーーーーーーーーーーーーーー
そしてSyoは作業をやめ、シーカーの元に戻ってきた。AlterFrontierだとSyoとシーカーの背に大差はなかった。
因みにSyoのスキルは"全力勝負"発動して数分間は、攻撃力・防御力を超アップする。そのかわり時間を過ぎると攻撃・防御共に超ダウンする。同じクエストを周回をするプレイヤーの中では使用率が一番高いスキルである。
「後少しで召喚獣イベントが開かれるんだぜ。何を作ってるんだ……」
「ジ、Gが足りなかったから氷像を……」
Gとは、安易だが
回復薬は1個500Gで売られており、ログインボーナスで毎日1000Gがもらえる。またモンスターを倒すと結構もらえる。
強い武器が欲しければそれなりの金が掛かる。武器や防具などは買える事も出来る。今最強と言われている龍破壊の剣は120万Gもする。
高くて買えない……そんな君達に朗報だ。このAlterFrontierではガチャがある。武器・防具・乗り物など、全部1回2000Gだ。ログインボーナスで毎日1000Gもらえる。誕生日には1万Gがもらえる。
弱い物ほどレア度は低く出やすい。強い物はもちろん出づらい。ガチャで龍破壊の剣は0.01%の確率で出る。10連やればレア物の出る確率がアップする。
高い金で確実に手に入れるか、2000Gのガチャで奇跡を願い手に入れるか……君達次第だ。
「氷像?」
「あぁ……このAlterFrontierのアイドル、アルちゃんの氷像を……」
「アルちゃん?」
するとSyoがメサからとある画像を、シーカーのメサに送られてきた。
「これがアルちゃねぇ……」
キラキラとしたスカートにキラキラとした半袖の服、右の髪は黒く、左の髪は白い、長いツインテールの目がぱっちりとした可愛らしい女の子の画像だった。
アルとはこのAlterFrontier内でのアイドルであり、超絶人気の今流行りのアイドルだ。
「可愛いだろう‼︎」
「まぁ……それにしても何でこの子の氷像を?」
「マニアに意外に好評で1個2万Gだ‼︎1個に2日以上かかる」
「……」
あまり興味なさそうなシーカー。別にアイドルとかは興味はないが、Syoはアイドルの事となると、いつも以上に元気になるから、多少引いている部分もある。
まだまだ語ろうとするSyoだが、全フィールド内にアナウンスが入った。
『全フィールドの皆さんに、ご連絡があります。間も無く[極炎龍討伐イベント]が開催されます。最初に討伐されたプレイヤー1名に、その極炎龍を召喚獣としてゲット出来る事が出来ます。それと同時に、召喚獣ガチャも追加します。討伐イベントに参加されたプレイヤー皆様に感謝の意を込めて召喚獣ガチャチケットを5枚プレゼントします。後10分後に開催されますので是非、新討伐イベントを堪能して下さい』
このアナウンスがなった直後に、多くのプレイヤーがバトルフィールドから離れて、このセーフフィールドに戻ってきた。
「お〜お〜増えてきた増えてきた」
「やはりみんな召喚獣が欲しいって訳か」
その多くのプレイヤーの姿の中には、レア武器やレア装備した上級プレイヤーから、レア度が低い装備をした初心者プレイヤーなどもいっぱいいた。
「課金勢がウヨウヨいるぜ」
シーカー達もメサで自分達のアイテム確認などをしている。回復薬の量、火傷直しの薬の調合をしている。Syoはシーカーに回復薬の量を見せる。
「回復薬50もあればいけるかな?」
「量の問題じゃない……誰が仕留めるかが大事だ……1番最初に倒したプレイヤーが極炎龍を手に入れれる。なら初心者プレイヤーだって手に入るチャンスがある」
「つまり最後まで待って、良いとこ取りするってことか?」
今回のイベントでは一匹に対して、全プレイヤーが一斉に戦闘を行えるのだ。だから、Syoの言う通り、最後にいいとこどりも可能であり、課金している奴らが必ずしもゲット出来るとは限らないのだ。
シーカーはそれに対し、手を横に振って否定する。
「いや、俺は普通に極炎龍を倒す‼︎」
「まっ……お前らしいこって」
そして開催1分前……多くのプレイヤーはメサからフィールド選択画面で極炎龍討伐が開くのを待っている。
「後1分……か……」
そして……3・2・1……0
その瞬間、フィールド全体に花火が打ち上げられ、極炎龍討伐イベントが開催の合図となった。プレイヤーが一斉に我先と討伐フィールドへとメサから飛んで行った。
「俺達も行くぞ‼︎もちろんタッグでな‼︎」
「おう‼︎」
シーカーはSyoとタッグ設定をし、別の空間へと繋がる円状のゲートが開き、2人はすぐさまフィールドに飛んで行った。2人ともワクワクを抑えられない顔をしている。
そして移動フィールドのゲートをくぐり抜けるとそこは……
ーーーーーーーーーーーーーー
「やっほぉ〜到着っと……ってあれ?」
到着した場所は、極炎龍が潜む火山地帯……じゃなくて地上がない、上も下も青空と雲しかなく目眩しそうな光景だ。それに現代風の廃墟となった高層ビル群がプカプカと無造作に浮いてる不思議な世界だった。
気づいた時には遅く、シーカーは下に真っ逆さまに落ちた。
「な、何だ。ここは⁉︎うわぁぁぁ!!」
シーカーは素早くメサを慣れた手つきで巧みに使い、あるものを呼び出した。
「来い‼︎ダッシュボード‼︎」
するとどこからともなく、スキー板の下にロケット噴射が付いている空飛ぶボード、ダッシュボードがシーカー目掛けて飛んで来た。
「うわっと!!」
ボードはシーカーの真下に飛んできてクッションとなり、上手く乗る事が出来た。いきなりの事に驚くシーカーだが、落ち着くため一旦ボードの態勢を整えてボードを止めた。
「危なかった。ここは一体……」
とりあえず周りを確認した。人がいる様子も全くなく、音も風もない。下を見るが底がないような青空と雲しかなく、上下が分からなくなりそうになる。
「バグの世界……なのか……」
するとメサからSyoの連絡が来ていた。すると慌てている様子のSyoの姿が映っていた。
「どうしたSyo‼︎」
『お前どこにいる⁉︎ついたと思ったら真っ逆さまに落ちやがった‼︎何とかダブルビークルのお陰で助かったが……』
「お前も同じ所にいるのか?人はいないのか?」
『あぁ……地図を見たところお前の反応しかないな……』
シーカーは地図を確認すると、右上に青い斑点のマークがあった。青は仲間の色であり、赤があった場合は敵のマークである。
『それにステージから出る事が出来ない……』
「な、何⁉︎」
シーカーは慌ててメニュー画面からセーフフィールドに戻るように押すが、何も反応がない。通常はステージが出る時は、メニュー画面でセーフフィールドに戻る事ができる。だが今は、何故か出る事出来ない。
『一旦合流しよう。そっちへ行く……』
「分かった……」
とりあえずSyoが居たことにホッとするシーカー。だがここ何なのか、そして何故出られないのか、不思議はどんどん増えるばかりであった。
その頃、シーカーの元に向かうSyoは、ダブルビークルと呼ばれる地上では普通のバイク、空ではタイヤを畳み空飛ぶバイクに変形し、後方左右側面からロケットエンジンを噴出して高スピードを出せるバイクでシーカーの元へと向かう。
「変な場所に飛ばされたな。こりゃ掲示板も荒れるぞ、きっと」
シーカーの場所をもう一度確認する為、メサから地図を開くと、赤い斑点が突然1つSyoの近くに現れた。
「おっ?他にもいたのか‼︎ここに飛ばされたプレイヤーか⁉︎」
一度止まり、地図を見るとその赤い斑点が猛スピードでこちらに向かって来ている。
「⁉︎」
その方向を目を凝らして見ると、赤い仮面を被った黒いフードを着てる男がダッシュボードで、Syo目掛けて迫って来た。どこか怪しい雰囲気を感じた少し身構えた。
「な、何だ一体……」
──決闘モード開始──
Syo vs ???
「け、決闘モード開始⁉︎どうゆうことだ⁉︎」
突如決闘モードが始まった。決闘モードとは本来ならば、お互いが承諾してから始まる。だが、今起きてるのは承諾もしてないのに急に始まったのだ。
「これもバグなのか……いや」
すると仮面の男が手を前に差し出し剣を出した。そしてスピードを落とす様子もなく、まっすぐこちらに進んで来る。
Syoはこいつは一緒に迷い込んだプレイヤーではないと、直感で感じた。
「どうやらやる気のようだな。まっ、時間潰しには丁度いい。倒させてもらうぜ‼︎」
「……来るんだな」
Syoはニヤリとワクワクする顔で、槍を出し戦闘態勢に入る。そしてダブルビークルに乗った状態で、仮面の男の方へ全速力で突撃する。
「うおぉぉぉぉぉぉ‼︎」
*
その頃、シーカーは──
「まだかSyo。いや将呉の奴……」
Syoからの連絡があり待ち始めてから5分くらい経つが一向に来る気配がなく、少し気になり始めていた。
ふと気になり地図を見ると、赤い斑点と青い斑点が地図上で激しく動いている。
「何だ、こんな時に決闘してんのかよ‼︎あいつッ⁉︎」」
シーカーはダッシュボードをバランスよく操り、Syoの方向へと向かう。
真っ直ぐ行けと意識すれば進む。初心者でも乗れる想像以上に簡単な乗り物だ。
数分後、Syoが戦っている場所に到達すると、衝撃の光景が広がっていた。
「な、何だこの状況は……」
宙に浮いているビル郡の破片が、そこら中に散らばっており激戦が繰り広げられたのがよくわかった。それにSyoの物と思われる槍が宙に浮いていた。
「まさか……」
その光景に嫌な予感が頭いっぱいによぎった。
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