第2話 今日も夢の世界へ


 放課後、罰として居残り掃除をした二人は日が落ちる頃になって、すぐさま学校を飛び出した。

 悠斗の軽い怒りは治らず、愚痴をこぼしていた。


「あの先生め、教室の隅まで掃除させやがって」

「まあ、いいじゃないか。新記録達成したし」


将呉は学校の時計を見ながら悠斗に言う。


「それより、今日の夜から新要素、召喚獣追加記念と新討伐イベントあるらしいな」

「そっか、今日か。確かイベントをクリアしたら召喚獣ガチャ券もらえるよな」

「でも情報通りなら、今回の討伐モンスターは今までモンスターより遥かに強いらしいぜ……あのガイアプラトーンよりも」

「マジかよ!?インフレ早すぎだろ!」


 alterfrontierオープン当時はガイアプラトーン討伐は不可能だと言われており、多くのプレイヤーは挫折した。だがオーガスターと呼ばれる日本人プレイヤーが1人で軽々と討伐し、多くのプレイヤーの士気を高めたとして現在も有名な話である。2人にとっては憧れの存在である。


「まぁ、難しければより楽しみってやつだしな!」

「そうか?」


 この明らかに難しい討伐イベントが待っている中、悠斗は余裕そうに笑っていた。


「今回の討伐イベントも……やるしかねぇな‼︎」

「毎度の事気合いが入ってるな……」

「だが、お前には今回も頼りにしてぜ‼︎」

「おうよ!!」


 2人はオープン当初から始めているプレイヤーで、将呉の方が悠斗より強く、頼りにされている。そして無課金。2人の座右の銘は[課金は悪、非課金は正義]らしい。

 本当はお小遣いの問題でだけだが。


「それまで何してる?」

「う〜ん……開始は7時かららしい。それまだ適当に素材集めでもしておくかな」

「そうするか。またな」


 そうして2人は別れて寄り道せずに、お互いの家へと帰宅した。


 ーーーーーーーーーーーーーー


 悠斗は部屋に戻るなり、バックをベットの上に投げ、細長いボールペンのような物をポケットから取り出した。

 これは次世代機器Zack、ボールペンのような細長い形をしており、先端のボタンを押すと横から光から映し出されたモニターが現れる。それを操作してネットを調べる事も出来れば、電話やゲームも出来る。もちろん音楽も聞ける。この時代の高校生は9割持っている代物だ。1台……4万5000円。


 Zackを使いAlterFrontierの事が書いてある掲示板を覗く。毎日の日課で、帰ってすぐ新しい情報がないかなど調べている。

 今日は殆どの人が召喚獣の事で盛り上がっていた。でも、いつもはレアモンスターの目撃情報やチーターの晒し上げなど、多くのプレイヤーが利用している。


「召喚獣の事で話題は持ちきりか……どんなんだろうな」


 Zackをベットに投げ、AlterLinkを取り、椅子に座って顔に装着した。

 装着するとそこは真っ黒な世界、だが5秒ほど待つとAlterFrontierにLink中の文字が現れた。更に5秒待つと接続完了と現れた。このゲームは目の形からプレイヤーを認証し、ゲームへとログイン出来る。

 その瞬間、悠斗の意識はAlterFrontierとLinkした。


 ーーーーーーーーーーーーーー


 目を開けると、そこは空に浮いている空中都市にいた。西洋風の街並みに都市の中心には20mを超える巨大樹が佇んでいた。

 この場所はセーフフィールド。モンスターなどがいるバトルフィールドとは違い、敵は存在せず、安全なフィールドである。セーフフィールドは他にも大量に存在する。場所によって施設も全然違うので歩くだけでも十分に楽しめる。


 この都市には多くのプレイヤーが歩いており、重そうな鎧を着ている男性プレイヤーもいれば、アイドル服を着た女性プレイヤー集団もいる。そして人間以外にも羽が生えているドラゴンの格好をした竜騎士や角が生えた筋肉質な悪魔族などこれらも全部プレイヤーである。

 そして空を見上げれば空飛ぶボード、スカイダッシュでレースをする者もいれば、魔法の杖でアクロバティックな動きをする者など、空は多くの乗り物に乗った人達で溢れかえっている


 悠斗の姿は、現実より背が高く、現実では160cmのところ、175cmまで背を伸ばしている。目もまん丸からカッコいい鋭い鷹の目のような目に変えたのだ。

 服装も防御力が高い鎧にしようとしたが、結構重かったので、軽くそこそこ防御力の高い毛を持つ魔鳥ティザーゲイルの毛から作られた特製の紫色をした半袖長ズボンの道着を着ている。


 ー紹介ー


 魔鳥ティザーゲイル

 サンソウ山の谷 討伐難易度☆3.5 HP25000

 5〜7m級大型鳥類。茶色の毛が生えた巨大なプテラノドンのような姿をしており、サンソウ山の谷では、頂上を縄張りとして生きている。

 体力こそは低いが、攻撃力が異様に高く、鋭利な歯は当たりどころが悪ければ一撃でやられてしまう。また素早さも早く、目で追うのがやっとのモンスターである。だがティザーゲイルの毛はレア物の装飾品などに使用される為、貴重な素材である。


 そして首にもティザーゲイルの毛で作られた紫色のマフラーを装備している。

 悠斗が紫色の道着には理由がある。昔歴史で習った忍者に憧れて、忍者の格好に近づけた。そして実際は黒色だが、地味だからと紫色に変更したらしい。


 このAlterFrontierでは硬い装備が良い訳ではない。鎧を着れば防御力が高いが起動性が落ち、攻撃スピードも落ちやすい。道着などの軽装は防御力がかなり下がるが、素早く動けて攻撃スピードも早くなりやすい。どっちを選ぶかは君次第だ。


 そしてもう一つ、腕時計みたいな物が左手に巻かれている。これはMessiahHand、プレイヤー達からは略してメサと呼ばされているアイテム。

 全プレイヤーが所持していて、簡単に言えばメニュー画面だ。意識と同調しており、意識で唱えれば自分の目の前にモニターが現れてくれる。友達の居場所を探したり、連絡を取れたり、現在人気のフィールドを検索出来たり出来る。ここから素材を調合してアイテムも生成出来る。

 メサの1つでAlterFrontier内のすべてのフィールドに移動出来る。

 更に戦闘時には、手に入れた回復薬や爆弾などを出す事ができ、持ち歩きの手間を省く事も出来る。


そしてプレイヤーにはスキルが存在する。バトル中に使用でき、好きなタイミングで発動出来るものから、特定の条件で発動出来るものなどがある。

パワーやディフェンスなどを一定時間アップするものや、姿を変えるなど様々なスキルがある。


「さて……将──じゃなくてSyoは連絡を……」


 もちろんみんな個人情報は大事にしている。下手に自分の名前にすると、知り合いにバレる可能性がある。少し前にZackで掲示板を見てたら性格の悪そうな奴が漢字でフルネームの人の発見し、住所や顔写真まで特定していた。だからみんな自分の名前は使わないようにしている。

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