第百八十九話 人を喰う機械
オレルビスを大破させる代わり、ギャラルホルンを一つ失ったプレクス。
シャリーも響も疲労が顔に出始めており、しかしまだナイトメアは重量級が追ってきている。最低でもインソロア、ヤンカシュ、ヒミコの三機は叩かないと逃げ切れない。
オレルビスは、修復がもう始まってはいるが炉にダメージがかなり入っているのか修復がかなり遅い。それは、プレクスにとってはありがたい事。
フランの案で、攻める事にしたプレクスだが実際の所攻撃手段は殆ど無いのだ。
「おい、クレズ。この前のフュージョンみたいなヤバい武器とか積んでたりするのか?」「警戒すべき武装はインソロアのXN7568、ヤンカシュのXE8375、ヒミコのXE5837です」
「すまん、名称で頼む」「インソロアはガリヤ、ヤンカシュはライド、ヒミコはガウです」
正直、本当に警戒しなければいけない相手は一つだけ。
「二百メートル級のヤンカシュ……ッスか」「だな、あいつ以外はあくまで速度でついてくるだけだったが砲台の追尾もあいつが一番早かった」
(お兄さん達、あれだけの格闘戦の中で敵影の動きまでよく見てる……)
まるで同じ動きで揃えて踊っているダンサーの様に無駄なく砲撃や射撃が飛んできていた。要するに高機動型の変化についてくる人型オレルビスなんかよりも、プレクスよりも大きめの全長でありながら砲撃、切り返し、速度でついてくる艦の方が余程手ごわい。
「普通に考えたら、艦や宇宙基地のデカさってのはそのまま砲台の数や見合う破壊力の兵器積んでるもんだ。幾らデカかろうが強力であろうが、当てられないなら意味はねぇ。それはプレクスが証明してんじゃねぇか」とシャリーの肩に手をのせながらフランが言うとシャリーは真剣な顔で頷いた。
(だけど、こっちも大分手札を見られてるんだよな。向こうだってバカじゃねぇ)
いくら、プレクスが変態的な運転技術と最強の兵器を積んでいたとしても戦場において手札がバレているっていうのはかなり不利。しかも、さっき目の前でジャンプまで使っちまった。本当にどうすんだ……。
フランは、叩き上げだからこそ情報がバレているという不利がどれ程響くか知っている。向こうも、人が乗って音速二桁いくような小型艦があるなんて面食らってるだろうがこういう格闘戦でもっとも重要な点はたった二つ。「捉える事が出来る」「撃破しうる武器がある」これだけだ。
人を喰うって事は、人をエネルギーや弾に変えてんだろ?。戦闘機を考えても、例えばレーダーの出力を上げるなら相応の電力をバカ食いする事になる。プレクスみたいな低燃費で音速二桁で急制動できるなんて艦はそれこそ遺産レベル。形状や材質で敵から捉えられる事を遅らせるのが本来考えるべき事だろうが。
それにアンリクレズがあらゆる演算や把握を可能にする事で、敵よりも早く敵の綻びを見つけ、そこにクソ度胸で飛び込むからさっきみたいな人間がやる交差法のカウンターみたいなのが撃てると考えれば、虚数空間によって通信からヒューマンエラーまで把握できる存在は中に乗ってる俺だって存在自体を正直信じたくねぇレベルだ。
「ヤンカシュのライドってのは、どんな武器なんだ?」「原理はラミアムの狙撃銃と一緒ですが、一撃に三十人分の命を必要とし。さっきの高機動型の半分の速度で追尾する二十五ラインの照射で因数飽和によりそばを通過しただけで殆どのバリアを溶かし貫きます。クマドリも例外ではありません」「影響範囲は、球体で半径三キロ、通過してきた位置にも影響が約二十五秒残ります」「触れたらアウトって事かい……」「その理解で間違いありません、般若のフィールドも融解しますので、防げばしばらく使用不能になります」
(ったく、そんなんばっかだな)
「照射って事は荷電粒子系っスか、それだと長距離飛ばない筈ッス」「空気中の元素を中継地点に使う事により、宇宙空間で長距離照射も可能です」
それを聞いて、響が思わず変な顔になった。
「本当、遺産は俺達の何百年も先行ってるとしか思えねぇッスよ。普通はそれにぶつかって減衰するんスから……」「原理自体はライブラリでも見る事が出来ます」「だ~! 俺の見てないトコにまだそんな垂涎ものの情報があるなんてッス!」
「それ、まだ撃ってきてないよな?」「はい、飛んできているのはこの時代の通常兵器ばかりです」
いつまでしょげてんだとフランが響の頭を叩くいて、生き残ったらまた艦長が修理してる間好きなだけライブラリ読めんぞというとゲンキンにも頑張るッスと前を向いた。
「撃って来てない理由が知りたいな」モブは真剣な顔でそういうとさらに考え込んだ。
一方その頃、敵側はというと……。
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