第百八十六話 オレルビスVSプレクス

一瞬、真上を取られたプレクスだったが速度で負けていても、切り返しの速さや旋回性能等では負けていない。更に負けていた速度も、ギャラルホルンの補助モードである鷹(ホーク)を二つ響が補助につけた事により推進機の合計は十個になったプレクスはさらに加速。


他のナイトメアを引き離しつつ、激しいドッグファイトを宇宙で繰り広げていた。

ただ、ギャラルホルンを二個補助に回し。二個シャリーに渡している以上響は四個で今までと同じ防御を維持しなくてはならず苦戦を強いられていた。



「響様、これ以上の速度はクマドリで保護しきれない可能性があります」

「了解っス! つか、今これマッハ十六ッスよ……」

「何でこれでついてこれるんですかねぇ?!」


「オレルビスはナイトメアの中でも速度特化です。その分防御力や攻撃力は控えめです」

姿勢を崩す程の砲撃を撃って来たナイトメアは別だとアンリクレズは説明した。


「艦長、ヤベェっスよ」「あ? 今十分ヤベェだろが!!」「そうじゃねぇッス、クマドリにギャラルによる補助までつけて飛んでりゃクレズさんのエネルギー持たねぇッスよ」

よく見れば、メモリがもう三メモリも減っているのが見えて思わず青ざめた。


その瞬間「あっ……」と眼が点になるモブ。


「提案があります」アンリクレズが言った瞬間、砂漠でオアシスを見つけたような表情に乗組員全員がなった。


「どんなだクレズ、簡潔に言え時間が無い!」

「艦長のヴェルナーを私にお貸しください」瞬間に響の方に腰に下げていたヴェルナーを投げ渡し響の膝の上にころりと落ちた。それを背中の機能に対応する羽に、差し込むように響に言った。


「ヴェルナーは鍵です。一時的に強化したい機能を担当する私の羽に差し込む事でその機能を爆発的に強化できます。但し、それを使うとしばらくの間完全に私の機能が使用不能になります。もちろん、ヴェルナーそのものもです」「壊れる訳じゃないんだな?」「お約束致します」




それを聞いた瞬間フランも響に自身のヴェルナーを投げ渡す。「使え」

流石に響がえ?みたいな顔で振り向くが、フランは怖い顔で睨んだままだ。


「ヴェルナーは二つ、強化できる機能は二つッスか……。どの位強化できるんスか?」

「三十分の使用で、三ヶ月の使用不能。変わりに能力値は完全体セブンスと同等です」


「十分で一ヶ月……、だとすりゃニ十分以上はやべぇぞ」その後の活動を考えるとかなり厳しいとモブは説明する。


こうしている間にも、オレルビスの両手両足から八本のレーザーが間断なく撃たれているのが判る。エーテルモードのスラスターにも無茶のさせ過ぎが重くのしかかってきていた。クマドリで保護されていなければ、間違いなくスクラップになっている。


「艦長、俺からも提案ッス」「簡潔にいえ!」「もうすぐ、リョウラ星の近くの隕石群ッス。そこに突っ込めねぇッスか?」瞬間、顔が今まで以上に輝くと「それ採用!!」


防御と攻撃がそこまでじゃないなら、隕石群に突っ込んでジャンプで飛べばいい。

自分達はすり抜けて、オレルビスは隕石群に今の速度で突っ込む事になる。


「だとすりゃ、ギリギリまで粘らにゃな。という訳でシャリーと響頼んだ!」

「お兄さん、頼んだじゃないわよ」「そうっスよ、おめ~も頑張るんスよ」


方針が決まれば、後は突っ走るだけ。そう思った矢先「ヤンカシュとインソロアの射程内にプレクスが入りました。砲撃来ます」とクレズが報告した。



「足速すぎません?」「恐らく今までのデータから、足の速いナイトメアを選出して送り出してきたものかと」


アンリクレズがそれを言った瞬間に、極太の紅の除夜の鐘をつく為の撞木(しゅもく)の様な砲撃が百本近くプレクスの周りを通過した。


プレクスの背後に直撃するコースのものが四本あったが、それはシャリーがギャラルホルンの般若を二個つなげる事でガード。耐久が一メモリ減ってはいるが凌ぎきった。

一瞬だけ、ギャラルの虚数フィールドに押される形でプレクスが後方から押し出されるが直ぐに体勢を立て直し。再び、宇宙を羽ばたく。



「シャリーナイス!」「助かったッス!」二人が歓声をあげ、心なしか汗びっしょりのシャリーも嬉しそうに笑う。そこへ、フェティがセリグが絞った搾りたてのジュースを手渡し。一気に飲み干すと、フェティが空になったコップを持ってまたキッチンに消えていった。フェティの表情が心なしか、綻んでいた様に見えたが気のせいかなとも思う。



オレルビスの攻撃も激しくなってきており、プレクスはまるで足が千切れた兵士が泥の中でのたうち回る様な切り返しでそれらを避けつづけていた。


「きついんじゃが?!」思わず変な言葉使いになるモブの頭をその場にいる全員が睨み続けていた。もちろん、シャリーもだ。


「きつくてもやるんだよ、死にたくねぇだろ?」とフランが言うと「おう」と答えてモブの眼が真剣になる。


(やりゃできるじゃねぇか……)思わずその勇士にフランが口の端を無言で吊り上げた。

「オレルビスに高エネルギー反応!」アンリクレズが警告を発し、モブが左手で素早くスラスターを調整しプレクスを真横に傾けた瞬間。見覚えのある砲撃がプレクスの腹のすぐ横をすり抜けていった。


「攻撃力無いんじゃなかったんッスか!?」それは響の悲鳴だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る