第百八十一話 マクフォス星

マクフォス星の港まで飛び続けたプレクスはとりあえず小さな港に着陸、セリグはフェティと買い出しに。フランは傭兵ギルドに顔を出す。艦族ギルドもカウンターが同じな位で酒場までドッキングしている典型的な小さな港町のそれ。



モブ、響、フラン、シャリーの四人が入っていくと如何にもここは親子で来るとこじゃねぇよみたいな空気が建物中に漂う。


「おい、そこのやつら! 来るとこ間違えてんじゃねぇのか!!」赤ら顔の連中がガハハと下卑た声で笑う。それを無言で青筋を浮かべたフランがいきなり首根っこを掴んで左手でぶん投げる。ギルドの扉が一瞬で粉々になりお向かいの店に突っ込んだ。直ぐにフランが辺りを見渡して「うるせぇ、こちとら気が立ってんだ」と一蹴するとギルドのカウンターまで歩いていくとどかりとカウンターに座る。「当、傭兵ギルドに何か御用でしょうか」すっと、傭兵カードを出すフラン、それを見てコメツキバッタの様になる受付嬢。


「一応、しばらくやっかいになるから面通しにな。扉悪かったな、これで足りるかい?。あぁ、これは娘のシャリーだ」と受付嬢に娘を紹介しつつ。お金を渡そうとするが大丈夫ですと受付嬢は微笑む。若干顔が引きつってはいたが。


その隙にモブと響はというと二人でこそこそと、艦族ギルドの受付を済ませなるべく空気と同化しながら掲示板の前で仕事を物色し始めた。


「いてぇな! 何すんだ優男!!」とさっき投げ飛ばされた大男がギルドに入ってくるがギルドマスターが怒鳴る。「止めんか! お前がかなう相手じゃない事位わからねぇか!!」すまねぇ、身の程しらねぇ奴には俺からよく言っとくから勘弁してやっちゃくれねぇかい。「ギルマスかい? 俺は娘さえ大丈夫なら文句はねぇからさ」「恩に着る」それだけ言うと怒鳴った大男にギルドマスターが耳打ちし、大男は鳩が豆鉄砲喰らったような顔になったあと真っ青になった。


一方、更に姿が透けて見える程空気と同化していたモブと響は掲示板でこれを受けると受付を済ませ。肉串焼き屋のお手伝いの仕事を受け、明後日から仕事だなと三人分の仕事を受けるとそそくさと帰ろうとした所でフランに捕まった。


「お前らは何してんだ?」「俺らはほら艦族だし、艦族ギルド行って同様に面通しして仕事物色してシャリーと三人分受付もしてもらったし、用事は終わったから出ようかとしたんだよ」とモブが言うとフランがジト目になった。「その割には、えらい気配薄くしてたな」「ほら、俺達は元々薄いからさ」そうっスと響も頷く。


「折角、久しぶりに地上の酒場なんだから。なんか食ってこうぜ?。特に艦長、おめぇすき焼き食いてぇって喚いてたじゃねぇか」親指で席の一つを指すとフランが笑う。「食ってきたいけど生憎俺達には金がねぇんだよ」「奢ってやるから、俺も久しぶりに酒とステーキが恋しいんだ。付き合え」「そう言う事ならお供シマス」


そういうと、フランがステーキと酒とジュースとすき焼きを頼み。響とシャリーには適当にサラダとかマッシュポテト等が盛られた皿がやってきた。


無言でモブとフランががつがつと食べ始め、響とシャリーも同じ席で大人しく食べ始める。「ギルマス、あれいいんですかい?」誰かがギルマスに尋ねるが「いいも悪いもあるか……、あいつは個人の上級傭兵だぞ?。 ここに居る全員でかかっても明日にゃ更地にされちまわ~な。飯と酒で大人しくしてくれるってなら、それで良しとするのが大人の対応ってもんだろが」


その言葉に店内がざわつく、上級傭兵というのはそれだけ憧れであり雲の上の存在だからだ。それが、今眼の前にいる……。


「あのぉ……」シャリーがウェイトレスに声をかけると、直ぐにやってきた。「どうなされました?」「これの御代わりが欲しいのですけど」空になった皿をお皿を恥ずかしそうに両手で差し出すと直お持ち致しますとだけ言って直ぐに引っ込む。


「シャリー遠慮すんなよ、ここ二週間位節約生活だったからな」とフランが優し気に笑う。「うん!」満足そうに力強くうなずくと、モブの方を見たらモブは口いっぱいにすき焼きを突っ込んでハムスターになっていた。その顔が余りに面白くてシャリーが笑いだす。


シャリーは、セリグさんとフェティちゃんはいいの?と尋ねるが、セリグが作った方がうめぇからちゃんと連絡しておけば大丈夫だろと答えた。


「傭兵の仕事はどうすんだ?」「いいのがあれば受けるさ、その辺はお前らと一緒だな」それだけ言うと、また厚手のステーキにナイフを入れて肉を頬張る。


「ほんじゃ、明日は休みにして。明後日から各々動こうぜ」「了解っス」「判ったわ、お兄さん」「修理としては、最短一か月を見てくれ。それまでは、精々働かせてもらおうぜ」それだけいうとモブはすき焼きの御代わりを頼んだ。



はみ出し者だらけの酒場の一角で、やたらほのぼのとした空気が流れていた。

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