第百七十四話 献身
決めたらフットワークが軽いのが、モブ達の長所であり短所。但し、命がけだが。
丁度、ディアムの下。距離は五キロ程度の位置でディアムから再びフュージョンの兆しが見えたのでプレクスはギャラルホルンを構える。響はシャリーから情報を貰って、今防御に使っている五機のギャラルホルンの状態を逐一チェックしていた。
(まずいッスね……)
砲撃やレーザー等は問題にはならない、ダメージを幾ら受けてもギャラルホルンの耐久力は自然回復で回復してしまうからだ。今、セブンスは錬金塔以外全てある。つまり虚数空間も六機分あり、更に、保管に特化した袋の存在も大きい。
「響様、提案致します。フュージョンの防御に限り、私に任せては頂けないでしょうか?」
初めての提案に、響は首を傾げながら「勝算はあるんスよね?」と尋ね。「勝率は九十八%になります」と即答。「ほんじゃ任せるッス」「必ずや、最良の結果をお約束します」
クレズの眼に幾つもの走査線が走ったかと思うと、響と同じ様にギャラルの挙動をチェックしていた。そして、シャリーに渡していたギャラルホルンの情報が消え。モブと響のみ視界表示を残し。甲高い、音がキーンと鈴虫の様に鳴った。
「参ります」それだけ言うと、アンリクレズの口の端が吊り上がる。
それまでの、動きとは一線を越えたギャラルが虚数領域を駆使して透けた様に見えた。
(弾く事を捨て、プレクス本体を徹底的に守る)
五機のギャラルが時には一枚となり、時には響がやっていた様に拳として一個一個に分かれ時間差を使って僅かにダメージを自然回復で回復させながら、雷光のごときフュージョンを全弾プレクスに届く前に守って見せたではないか。
それには響は咽た様にゴホゴホと言いながら、口から魂が抜けるような思いだった。
(もう、俺のやり方と敵の武装の学習が終わってるじゃねぇ~っスか!)
学習状態で、虚数空間から情報収集の妨害されなかった情報は全て学習済み。その応用までを、ほぼ完ぺきにこなすAIアンリクレズ。頼もし過ぎる反面、響とモブの眼と眼があって決意の表情で頷く。男同士は眼でこう語っていた。
(本当、それの扱い気をつけろよ)
(うっス、流石にこれは冗談じゃ済まされねぇッス)
「響様、当機プレクスへのダメージゼロです」
あの飽和攻撃からあっさり守った事を響に報告すると、響は「助かるッス」とだけ言った。その言葉に、何故か誇らしげで満足そうな表情のアンリクレズ。
よく見れば、モブと響そしてフランとセリグの表情が引きつっているのをシャリーは見逃さなかった。「おい、フラン」「あぁ、今敵が撃ってくれたおかげで違和感の正体がはっきりした。あのフュージョンとかいう武器、撃つときだけあの軸の一点が尋常じゃないエネルギーで赤と蒼の点で光ってた!」アンリクレズが表示している敵のマップの一点をフランが指さし、アンリクレズは素早くそこに矢印をいれてウィークポイントと表示した。
「響様、ギャラルホルン最後の一機が復帰しました。如何致しますか?」
「プレクスの補助として待機させて欲しいッス。取り敢えず、考える時間が欲しいッス」「畏まりました」それだけ言うと、プレクスの腹部分にギャラルホルンが待機状態で追従した。
このやり取りの間にもモブだけは必死にプレクスを飛ばし、シャリーが提案した方面に高速飛行をべた踏みで続けていた。無論、回避しながらで真っすぐは進めず。中々難儀はしているが、先ほどアンリクレズが守り抜いた事で直進に変更。今は流れ星が地上に落ちる様に全力でそちらに飛ぶ事にした。直進するプレクスはギャラルホルンのパワーもあってグングン速度をあげる。
(やっべぇな、このパワー。普段でもこれで飛びて~)
今、不謹慎ながらモブはギャラルホルンのパワーに酔っていた。
「そういや、クレズさん。ギャラルホルンは砲としても使えたッスよね?」
「御座います、モードを変更して頂ければ可能ですが。現状、残エネルギーの関係で一機で一発が限度です」三秒位考えて、俺にその一発撃たせてもらうのはダメっスか?とアンリクレズに尋ねるがアンリクレズは何とも言えない表情で「響様がそうしたいと仰るのであれば、私に拒否する理由はありません」と答えた。
「どうした、このままモブが頑張れば逃げ切れるだろ」とフランが言うが響はムッとした顔になると「このまま、やられっぱなしとかなんか腹が立つじゃね~スか。一発で効果なんかなかったとしても一泡吹かせてやりてぇじゃねぇっスか……」と口を尖らせると。「しょうがない奴だな」とだけいうと腕を組んで「好きにしたらいいんじゃね」というと肩を震わせた。
プレクスの腹に追従させていた、最後の一個をモードを変更。レリーフが金のスペードに変わり。響の耳に、銃のシリンダーが回る音が響く。
(モード:メメント・モリ)
モードが変わった瞬間に、響が制御しているギャラルホルンだけが青白い炎に包まれた。
よく見ると、金のスペードのレリーフに人魂がはりついている様なエフェクトになっている。響の視界に、猫の手を逆さにしたようなレティクルが表示され。下側の肉球に当たる部分の透明な〇が一つだけ●になっているではないか。
その肉球の腹の部分中央に点が表示され、そこに響がウィークポイントと表示されている場所に標準を合わせた。
「俺の最後っぺを喰らうッス!!」響がトリガーを引いた瞬間響が眼にしたものは全員の予想を遥かに越えるものだった。
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