第六十三話 根悪

「そうか、アラネアが……」報告をきいて少し残念そうに俯く。そのまま部屋を部下が出ていくと、悪鬼の顔で高笑いを始めた。


「うはは! 傑作だ。所詮初期のナイトメアを使えばそうなるのは自明の理、もっともそうなる事が判っていて使わせたのだがな。力に溺れなければ、そうならずに済んだかもしれんが軍人にナイトメアはさぞかし魅力的にうつるだろうからな!!」


そもそも、国民等家畜だろうが。税を絞り、化学物質などや制度等を駆使しして延命させ労働力として老いさらばえさせ、逃げられないようになるまで使いつぶし。死んだ死体からもナイトメアで搾り取る。家畜は畑で働き、黙って殺され肉になっておればよい。そんな事も判らん似非の政治屋等いらんし、それを強制できぬ軍隊も必要あるか馬鹿めが。


目障りがかたずいて精々するわ。あの女はクソ真面目が過ぎる。貴族共も自治領を持つ連中が邪魔だが、デメテルという星を最終的に支配するのに、大貴族は各国の国王も同じ力を持つからな。新たなナイトメア艦が二つ手に入ったし、借金漬けにした平民やスラムの連中をさらってきて薬漬けの電池に加工してやらねば。


くくくと笑いをこらえる神威、ナイトメア艦は強い。その力があれば星の一つや二つ容易く破壊でき。避難させると見せかけて、睡眠薬を盛り。そのまま覚めぬ夢の中で電池にしてしまうという犯罪者ギルドのやり口に加え。その電池を丸ごと搭載する事で、燃料の心配をしなくなったナイトメア艦は正に無法の限りを尽くしていた。


フランが潜入した時に見た、透明な管に入れられた人間というのは正にこれ。他にも失敗などした部下等を窯に落とし直接燃料に変えさせる。



足を斬り落とせば逃げられず、両手を奪えば抵抗も出来ず。脳を破壊すれば正常な判断すらままならぬ。知識や教養の無い人間など獣も同然と神威は吼える。



時間とは平等にある財産などではない、その時間をあの手この手でむしり取る事こそが正しく人を獣に変えるのだよ。


スポーツを見せ、ギャンブルを見せ、真に重要な決定はスルーさせる。

正しい情報を与えず、あいつは良い思いをしているだのとにかくよく見える所を叩かせ合う事で不毛な時間を消費させる。


国民に有利な制度はなるべく手続きを難しく手順を多くして失敗させやすくし、助かる制度がありますなどと宣伝すればそれだけで人気を稼ぎながら時間を消耗させる事が出来る。


戦争が何故儲かるか?答えは簡単、自分が死なないからだ。

武器を売り、食料を高騰させ、自分の食べる分だけは確保する。


食べ物や安全な水をちらつかせるだけで、なびく人間の多い事多い事。

だからこそ、平時から食料自給率等ギリギリにしておかねばならん。

正義を唱えさせ、自身は金や食料を出すだけで良い。武器を作る技術は国を進歩させるが犠牲になるのは常に国民だ。支配者側は高笑いしながら、苦しむ様をワインでも飲みながら見物していればよい。


命の時間を使わせ、命を握るインフラを押さえる。

あれこれ、調べ周る事でも時間を消費させる事が出来る。


コスパだタイパだと述べた所で、システムというくくりで時間を使わせる事に特化しているのだよ。システムからはみ出している者以外は、用意にからめとる事ができる。


それを耳ざとく見つけた奴は、あいつこそが悪だというだろう。

その耳ざとい奴を潰す為に権力も金も武力もある。力の限り自身の椅子を守る為にそういった煩い連中を叩きつぶす。人類の歴史など常にそうではないか、俺に始まった事じゃない。



ナイトメアという武力、デメテル王家宰相という権力。そして、それら他者の命を使いつぶす事でいかようにも金は増えていく。他者の時間をしぼりとれば、ナイトメアは不老まで叶える遺産。他者の希望も夢も我が野望に消えてもらう。だからこそ、盲目的に死んでもらわねばなぁ!。


それを、ただの軍属の癖にピーチクパーチクほざきおってからに。

意識も時間も取られていると悟らせず、得をしたと思わせて毒饅頭を喰わせる。

それこそが、政治というもの。


綺麗ごとなど必要ない、自らの安寧と贅沢だけあれば良い。それが判らぬのなら同門とて切り捨てる。



神威は魅入られた、だがその足元でナイトメアを倒せるだけの遺産は徐々にその産声をあげているとも知らず。



現代でこそ、デメテル王家の御家騒動とも言えなくもないが。中身は遺産同士の激突に他ならない、ヴァレリアスかナイトメアか。



審判の時は迫る、その事を神威はまだ知らない。

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