第百五十二話 とばっちり

「もうちょい気張れば追いつけるっ!」


モブがコクピットで叫ぶと全員が強く頷いた、機動がかなりおざなりになっているラミアムからは反撃も左程飛んできてはいないからだ。



だが、そこへアンリクレズからの緊急の警告が入った。


「前方から、巨大質量の攻撃。セレスティアル・ナイトホークです」


眼の前に迫る大き目のプラズマを纏った火球ともいうべき、蒼い発行体がプレクスめがけて一直線に来ている。速度もかなりでていて、今からでは防御も回避も間に合わず。推進機の場所を入れ替えている時間もない。


「うっそだろ!? おいクレズありったけでクマドリを展開!!」「了解しました」


直ぐに、プレクスに鳥の羽の様なクマドリが展開され。モブも全力で舵を左にきった。



「こなくそ、曲がれ曲がれ曲がれ曲がれ…………」


足までつかって必死に曲がろうとするも、ナイトホークが迫る速度はさっきまでの狙撃達とは比べ物にならない位速い。


大きすぎる、速すぎるでしかも今いる場所は隕石群ではなく。開けた場所で救いは蛇行していた事でポジションが正面から見てズレていた事だった。それを素早く判断したモブが逃げられそうな方向に舵を切って凌ごうとしたのである。


「右翼着弾」「わ~ってる!」クマドリがバチバチと押され、プレクス艦内のあちこちから悲鳴の様に雷撃が舞う。


「クレズさん、頑張るッス」響の応援を受け、クマドリとナイトホークが一進一退を繰り返し。モブも必死で舵をきりつづけた。



あちこちにダメージを残しながら、何とかプレクスがナイトホークを避けきるとモブが舵にしがみついたまま。脂汗を流しながら、「被害は?」と尋ねた。



「キッチン内部無事です」とセリグがすばやく確認すると、オペレーターのシャリーも「住居区画居間区画、ダメージ軽微。お風呂のお湯が止まりました」その言葉にうぇっとなる響とモブ。「艦長、フランさんが帰って来たら速攻謝るッス」「納得いかねぇがそうするわ」それだけいうと、響がクレズと共にソフトウエアの基盤や回路を調べていくがみるみる顔が青くなる。


「どうしたよ?」「推進機移動させる回路が、右翼部分全部パーになってるッス。どっかで直さないとヤベェっスよ」「ったく、あの攻撃ラミアムから飛んで来たよな。フラン、無事か?!」叫ぶ様にインカムに向かって尋ねるモブにフランが凄く気まずそうな声で「あ~、あ~お前ら無事か?」「無事ではないが、プレクスはちゃんと飛んでる。おめ~を回収したらまた修理する為に泊めさせてくれ」


フランは、了解。無事ならいいんだとだけいうとぷつっと回線が切れた。


「フランさんも、想定外だったみたいッスね」「乗り込んだあいつが無事ならそれでいい!」


シャリーも、必死に精査し。なんとか、一段落したのを確認する。


「こっちのチェックも終りました、あちこちダメージがあるみたいですけど。速度を落とせば航行に支障はないと思います」サンキューとモブが返すと、すぐにしがみついていた舵からはがれる様に席に戻った。



「ったく、切り札かなんかか?」「やっべぇ攻撃だったッス」

「次まともにもらったら動けなくなんぞ、クレズ悪いが全力で警戒頼む」「畏まりました」


モブが珍しく親指をかみながら、不満顔で不貞腐れていた。


「防御しても尚、損傷が一撃で二十パー以上持ってかれたっス」

「くそぉ、この前修理したばっかりだってのに……」


クレズが表示する数字や、計器類を全部確認したがいよいよマズイ数値がならんでいた。


「お義母さんが無事だっていうのだけが良いニュースね」

「全くだ、もっともフランさんは殺しても死ななさそうっスけど」


「そりゃ、傭兵だからな。俺達とは違った意味でしぶてぇだけが取り柄の職業だし」


全員が軽口を叩いているうちに、コクピットの雰囲気が良くなっていく。

「フランさん、大丈夫っスよね」「問題ございません、フランの勝率は九十四パーセントと高い水準にあります」


「そうか……、じゃ響悪いけどコクピット任せるわ。居間と風呂位なら動かしながら直せるだろ、特に掘りごたつの様子を確認したいからな」


そういうと、モブがコクピットを出ていく。


「艦長、本当掘りごたつ好きっスね。クレズさん、もし艦長が寝ちゃったら知らせて欲しいッス」「承知いたしました」


ダブルアンロックからこっち側、アンリクレズの処理能力は目に見えて向上している。

響は、落ちてしまった速度で停止しているラミアムに向かってプレクスを動かし。

モブは、動かしながら直せる所に手を出しながら。シャリーは刻一刻と変わる状況を響に伝え、それぞれの役目をこなしながら確実にラミアムに追いついていく。

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