第百四十八話 プレクスの挑戦

プレクスの内部で、セリグとフランは驚愕していた。


「これは、たまりませんね……」

「あぁ、これは洒落にならねぇって」


二人が驚いているのは、流星群を逆行して飛んでいるのにも関わらずバリアの類を一切はらずに全て回避して速度が一瞬も落ちていないプレクスの飛行能力。



(確かこの艦、星から離陸する時も宇宙でも同じような軌道がとれていた)



「ちぃ、やっぱ推進機を三つもやられたのが痛てぇな……」

「クレズさん、今どの位最高速落ちてるッス?」


「出力が三十七・五%落ちてます」

「約四割も落ちて、まだこの速度で飛べるんかよ」フランが呆れたように言うとモブが「逃げる事や生き残る事に特化してるからな」と苦笑する。


「クレズの機能が上がる前なら、取り逃がしてた可能性が高い。今でさえ索敵ギリギリの位置じゃなかったら判らなかった」



(ここでとり逃がして更に遠くから撃たれても面倒だ、なんとしてもここで捕まえたい)

グングンと距離は近づいているが、時々チラチラ見ているって事は流星群から出たら撃つ気かもしくは……。


「誘いこまれてるって線は?」「それはない、それをやるなら流星群の上からでも叩いて俺らをあぶりだす筈だ。それが無いって事は、俺らに気づかれたのは想定外。だから、脱兎のごとく今逃げてんだろ」


(確かに、この距離で気づかれるなんて普通思わねぇわな。普段バカやってるくせにそう言うとこはよく見てるなこいつ)


「じゃ、距離つめてから俺がヴェルナーでぶった切ればいいか?」「斬れる相手ならな」「了解」


「艦長、斬れないなんて事あるんスか?」「あぁ、ありゃ改造型強化兵だ。普通の強化兵なら間違いなくフランなら斬れるだろうが、改造型って事は防御をすこぶる上げてあればもしかしたら斬れない可能性も考えなきゃいけねぇだろが」



可能性を考えとくってのは大事だ、俺達にはろくな装備がないんだしなとモブが苦笑すると。セリグとフランは、何とも言えない様な顔になる。


「言われてみりゃ確かにそうだ、相手は間違っても遺産持ち。なめてかかって、ボロカスに負けるよりはいいわな」



セリグも、その言葉にゆっくりと頷いた。



「シャリー、ここから詰めるなら何処から行くのがいいと思う?」


一度シャリーは少しだけ考え、「私が敵なら流星群を抜けた後で牽制をいれて、距離を取りたい」と答えると「だよなぁ、それで?」と次を催促する。


シャリーは、プレクスの敵にバレてる能力を考えると敵は絶対近づかれたくないと考えてる筈だと力説する。それを、聴いたモブとフランが頷きながら聞いていた。


「ならこっちは意地でも食らいついて、お義母さんを送り込める距離まで詰めたほうが有利よね」「そうだな」「現状ただ追っても追いつけはするだろうけど、それが有利なポイントとは限らない……。なら、有利なポイントをクレズさんに今から探してもらうのはだめかな?」と響の肩にのっているクレズに尋ねる。


「要望に叶う、場所はこちらになります」即座にコクピットに表示するクレズにプレクス乗組員全員の眼が点になる。


「クレズさん……」憂いを帯びためでそれを見る響、気持ちが判るだけにフェティも苦笑い。


「他に、ご要望は御座いますか?」人間の気持ちがいまいちわかっていないクレズが尋ねる。シャリーが、一点を指さし。「敵をこの位置に誘導するには、プレクスはどうやって追えば確率をあげられますか?」とクレズに尋ねると「少々お待ちください」と眼に幾つもの信号が走って計算しているのが判る。


「順路としては、このルートが一番確率が高いです」とルートを二本表示した。


「おい、クレズルートが二本あるようだが……」「同確率の為、二ルート表示しました」

全員で考えていると、セリグが徐に口を挟む。

「恐らく、二番目のルートの方が確率が高いのではと思います……」


苦虫を噛み潰したような顔でいう、セリグに「心当たりでもあるのかよ」と尋ねると頷いて肯定された。


「根拠は?」「性格です、この狙撃をおこなったものが私の予想通りであればですが」


全員がじっと見る中、まだ確信が持てていないので名前は伏せますが。元デメテル軍人でこの距離の狙撃が出来るもの等片手の指で足りますと説明した。


「フランはどう思う?」「セリグのいうルートで構わねぇと思うぜ、どちらも同じぐらいの確率なんだろ?」「はい」



うーむとモブが悩む、そこへ響が尋ねる。「艦長、なんか引っかかるんスか」


「あぁ、フランとセリグさんとクレズが言うなら間違いないとは思う。無いとは思うんだがなんかしっくりこねぇんだよな、こうなんていうかド天然の地雷が埋まってそうでさ」

全員がモブのその言葉を聞き、ルートの表示をもう一度見直す。


「じゃ、間をとってここはどうっスか?」そういって、響が間の全然関係ないルートを指さした。


「ここ、なんもねぇよな」「ですね……、ですが真っすぐ距離を詰めるならこれぐらい障害物がない方が有利とも言えます」「ここぉ?」三者三様の台詞がでるが、響は自信ありげに言った。


フェティも首を傾げながら、ここに小さい障害物が幾つかあるからこれを影にすればいい様な気はするけどというと。「これが、障害物になりうるか?」と余りにも小さい岩影を見つめながら考え込む。


「じゃ悩む時間も惜しいし、久々にこれやるか」


そういって、モブは赤い印のついた紐を取り出した。


「セリグさんとフランがひいたら二、響がひいたら間、俺がひいたら1、シャリーがひいたら響の案に蛇行をアレンジ。怨みっこなしだ」


そういって、紐を全員の前に差し出した。


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