第百四十話 起死回生のダブルアンロック

「クッソ! こんなに急いでるってのに!!」

推進機をフル稼働させ、最短距離を飛び。背後が見えていて追撃しているのに、追いつけない。もどかしさを抱えながら、今も必死に食らいついていくモブ。



「響様、可及的速やかにお知らせしたい事がございます」

アンリクレズから、いきなりこう切り出され。プレクス全員の顔が響の方を向いた、全員が心配そうな顔をしているがモブだけはすぐに前を向く。


「いい知らせっスか?」「はい、かなり朗報です」

「今、ナイトメア艦の最後の門番とフランさんが交戦し。フランさんが苦戦、足を撃たれました」「それの何処がいい知らせっスか! 最悪じゃねぇっスか!!」


「怪我はありません、ついでにいうとその攻撃によってロック機構が破損しました」

「それはどういう事っすか?」「端的に言えば、今響様が許可すれば。格納されていた、私の本体を無条件で統合できます。統合すれば、プレクスが追いつかずともセリグさんとフランさんをこちらに回収できますが如何致しましょう?」


その瞬間、眼がゴマ塩の様になるコクピットのメンバー。


「あー、そっか。本体がねぇから倉庫移動には向こう側に誰か必要だって話なんだから。クレズの本体があればこの距離からでも回収できるのか……」「はい、クマドリ同様にエネルギー残量の制限はありますし。虚数領域索敵内等の様々な制限はありますが可能です」



「統合一択ッスね」「かしこまりました、同時にライブラリのセキュリティもアンロックになります。ご了承下さい」そういって、モブの手元にあったライブラリも中空に消えた

「遺産のセキュリティ破損させる攻撃なんて、一体どんなやべぇ兵器と戦ってたんだよ……」


「そんなの後から聞けばいいっス、統合完了したらすぐにセリグさんとフランさん秒で回収してトンズラっス」「それまで、べた踏みであれについてきゃいいんだな!」


モブと響から焦りが消え、フェティとシャリーにも笑顔が戻った。


「統合完了まで二十秒」「うっし、余裕を見て一分ついてく。二人を回収して状態を確認し、速やかに離脱だ! フェティちゃん、シャリーちゃん悪いが体制が落ち着いたらでいいから二人の面倒みてやってくれ」「「はい!」」後ろの二人が元気よく返事をした。


「つか、何処にあったんだよ。おめーの本体……」「フランさんが持っていたパズルの中にあったようです。セキュリティがかかっている時は気づけませんでした」


モブがにやけながら、マジかぁ~。おめぇそれマジで言ってんのかよとボヤキながら肩を震わせた。宇宙中探すつもりだったものは、艦内にありましたってか最低過ぎるだろ。


「統合完了」「クレズさん回収宜しくッス!」「畏まりました」


そういうと、行き同様に空間に取り出す用の穴があいてボロボロのフランとセリグがキョロキョロ辺りを見渡す。


「ここはプレクスか……? セリグは!」「ここに居ますよ」そういって体を起こすセリグ。「確か、足を撃ち抜かれてもうダメだって時に、すげぇ力で後ろに引っ張りこまれて出て来た場所がプレクスってことは、やったのはクレズか?」


響が頷いて、フランさんが敵に撃たれた時に壊されたパズルの中に本体があったらしいっスよ。クレズさんの使用者が近くに居る場合に、優先権があって本体を統合。本体の機能でプレクスにフランさんとセリグさんを引っ張り込んだ見たいッス。


「助かった……のか」「そうみたいですね」と安堵の溜息をはく二人にモブが謝るが二人は苦笑して気にしないで下さいとセリグは笑った。


まだ二人は、仰向けでプレクスの天井を見ていて。もう視界に映っていない数値等を確認し、改めてアンリクレズの恐ろしさを認識していた。


「クレズさんのマスターが響さんで本当助かります」

「同感だ、他の奴に持たせたら何されるか判ったもんじゃねぇなこりゃ」


ナイトメア系の底力や、ナイトメア艦内部で戦うナイトメア式強化兵の恐ろしさを身をもって知ったフランがこぼす。


「結局、俺が戦ったあのやべぇ強化兵のラスボスみてぇな門番名前は何だったんだ」「パンデモニウムです」とクレズが間髪入れず答えた。


パンデモ二ウム……、再戦する時までには両手にしておきたいもんだなと苦笑した。


「悪い、全速離脱する。捕まるか重力板のあるとこに居てくれ」それだけいうとモブが宙返りするような軌道で宇宙を駆けた。



「そうか、ライブラリが統合されたから、遺産の設計図も名前も登録されているモノは知る事ができるって訳か」ますます手がつけられないなと苦笑するフラン。


「おい、セリグ。約束は覚えてるか?」「覚えてますよ」「どっか落ち着いたら、全員にだぞ」「心得ておりますとも」


フランとセリグがニヤリと笑い、それを見ていたフェティとシャリーの二人も両手でハイタッチ。



「後は、トンズラして万事解決って事だな!」ガッツポーズをとりながらいうとクレズから無常にも。「ナラシンハ、反転してこちらに向かってきています」「なんだって!」


思わず、目ん玉飛び出して椅子から崩れ落ちるモブ。


「現在アンリクレズは、クマドリを展開できません。エネルギー不足です」


(そうか、人間二人をあの距離引っ張り込むのに使ったエネルギーが回復してねぇのか)

申し訳ございません、錬金塔があればとこぼす。

「大丈夫だって、今回は全員こっちにいて。カセットジャンプがある、クレズ最長距離飛べる場所を演算。クレズのご主人様は死にたくねぇよな?」「聞くまでもないッス」「じゃ、クレズ協力できるよな?」「問題ありません」



「でました、二時と三時の間直進距離七十五万八千」アンリクレズがジャンプ予定位置を先にモニターに映す。


「よし、距離七十五万八千にセット。スタンバイ!」いつもの様にカウントが始まるが、ナラシンハからの砲撃が届く距離までもう幾ばくも無い所まで追いつかれていた。


「ジャンプ後、まだ敵さんが来るようなら直ぐに二回目のジャンプ」「了解しました」

「ったく、敵さん早すぎだっつーの!」「向こうも多分同じ事を思ってるっスよ!」


二人は冷や汗を流しながら、プレクスを操作。カウントがゼロになった瞬間、ナラシンハの初弾がプレクスの透けた部分を通過。間一髪で逃げ延び事なきを得た。

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