第百二十九話 強襲再び

フォーリ艦をけん引したまま、べセクまで来たプレクスは早速隣接した港を予約するとそこに停泊。プレクスから降りたモブと響は早速カサイとサオリに見てもらいながら、各種を点検。必要に応じて修理と補強をし、夜になると全員がプレクスに戻って宿代わりに休んでいた。



カサイなどは苦笑しながら、「本当凄いですね、宿いらないじゃないですか」とこぼしていた。所が、モブは頭をかきながら「そうでもねぇ、俺としてはもうちょっとでかい布団で眠りたいとこだ」と回答するとサオリが「何処の貴族様よ、この艦長は……」と頬を膨らませた。



「貴族様なら俺達貧乏してないっス、ただの夢見がちなメルヘンなオッサンなだけっス」と響が言えば「私は、それでも実現しちゃうからメルヘンでも艦長の事好き」とシャリーが言う。「そうっスね、艦長は金なくても腕で実現しちゃうから俺も好きっス」


「お前ら、言いたい放題だな」とフランも実はそう思ってるような顔で追従した。


サオリはクルーにここまで言われて怒らない艦長ってこの人くらいじゃないの?と呆れていたが、モブは「生憎とうちはメンバーのが優秀なんで、この位の方がまとまるんだよ」と言った。


俺がサンドバックになって艦がまとまるなら、サンドバックでかまわねぇよ。意思がまとまってねぇ艦なんざ、危なくてしょうがないからなとモブは言う。


所帯が小さければ、足手まといを入れとく余裕何かねぇんだよ。いくら優秀でも、足引っ張る奴なんかもっといらねぇんだわとも。


補強と修理も、二週間もすればかなりきっちりと仕上がっており。カサイは感謝しながらぺこぺこと頭を下げていた。


その後は、プレクス一行はまた艦族ギルドで仕事を請け負い。運び屋の仕事は無かったが、港でモブと響の様子を見ていた他の艦族達からメンテや修理の依頼が指名で貼られていてそれをこなしていた。


特に、モブはひっぱりだこ。凄腕のメンテ屋として、一躍ギルド中の噂になっていた。シャリーとフェティはセリグと一緒に行動し、響とモブとフランで別々に働いている為それぞれの職場に弁当を届けたりして過ごしていた。



そんなこんなでしばらく平穏にやっていたが、ある日セリグが狙撃を受けたので周囲を探すも感知範囲に敵影は無し。「こちらの感知範囲外です」クレズが悔しそうにいう。


遺産の感知範囲外という言葉に、左肩を撃たれたセリグが眼を見開く。


「弾道から逆計算、ドレット星系の外衛星の一つからの狙撃かと推測。熱源の残りや残留エネルギーの流れから、防御衛星四十二番排気口だと思われます」


自分の口で素早くハンカチをちぎってしばりつけ、空いた穴を簡易的に塞ぐセリグ。

それを、フェティが心配そうに見上げるがセリグは脂汗をかきながらもフェティを安心させるように頷いた。


「防御衛星からって、こんな星の街中に他の何処にも当てずにセリグさんの肩だけ狙えるもんなんスか?」「少し前に我々を攻撃してきた、改造ラミアムに、遺産が搭載されているのならば可能です」


ロストテクノロジーの兵器は、殆どがナイトメア系だがそれでも強力な武器には違いない。もちろん、遺産というのは完品は極端に少ないし。壊れたら殆どの場合直せない事も多い。モブの様に遺産を改造するような、技術者は現代には殆ど居ないからだ。



「但し、私のデータにあるナイトメア系兵器であるなら連射はできません」

弾道補正と、射程距離に極振りしているような兵器ですのでと付け加えた。



申し訳ございません……とクレズが申し訳なさそうに響に言うが響は首を横にふるだけ。


モブは、フラン達にセリグを病院に運ぶ様に指示すると顎に手を当てて考え込む。

しばらく、考え込んで一つの質問をクレズにぶつけた。


「もしそれが完品だった場合、限界の射程距離はどの位だ?」「射線が通り、パイロットが目視で狙いをつける事が条件になりますが有効射程は二十一万です。連射はできませんし、距離が離れる程殺傷能力が落ちますが人を殺せる威力を保証するという条件なら二十一万で間違いありません」



腕を胸の前で組んで眼を閉じ、再び考え込む。

「攻撃から、俺達を守る事は出来るのか?」「エネルギーがあればクマドリを個人用に展開できます」そうでなければ病院などの現代のバリアに頼る事になるでしょうとクレズが答えた。


「クレズ、もしかして心配しているのはエネルギーの残量か」「はい、現状の私では自然回復でしかエネルギーを回復できません。飽和的に攻撃を受けた場合、クマドリが維持できない可能性があります」


「何が必要だ?」「錬金塔かあるいはギャラルホルンがあれば、状況を打破できる可能性があります」


今保持しているが、開けられないのはライブラリだ。そんな直ぐに見つかるもんでもねぇし。てか探してほいほい見つかるなら、誰も苦労なんかしねぇ。



参ったな……と溜息をついたところで通信機が鳴った。



「こちら、フランだ。セリグさん病院にちゃんとついたぜ、今艦長に連絡するっていって外からかけてる」「応、すまねぇ。セリグさんのスーツの着替え持って俺もそっち行くわ」


そういって、通信機を切ろうとした時。通信機の先で再び狙撃された音がした。

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