第百二十七話 フォーリ艦内部
「邪魔すっぞ」モブが堂々フォーリ艦の内部に入っていくと直にカサイらしき男ともめていたであろう女が立っていた。
「おう、居たな。早速だが入れ物はあるかい?」「水の入れ物はこれになります」「ちっさいな、遠慮しなくていいんだぜ?」
あれ?とフォーリの二人が顔を見合わせ「うちには持ち合わせがなくて」「あぁいらねぇからそういうの、その変わりちょっと情報が欲しいんだわ」
「判りました」カサイがそういうと、女がドラム缶みたいなタンクを指さしてカサイと二人で運ぼうとしたが「めんどくせぇから俺が手伝うわ」とフランが二個一人で持ってきて「指の力だけでタンクが二つ持ち上がってる」。モブが呆れながら「あれは例外だから、みんなは一個づつ。なんなら二人で一つとかにしといた方が腰がダイナマイトしなくて済む」と付け加えた。
ですね……とカサイも呆れたように返事した。
「後、食料と燃料だったな。食料はそこに居るセリグさんを食料だしてもいい倉庫に連れてってやってくれ」「ありがとうございます」
後はそうだな、この艦の燃料はなんだ?とモブが尋ねると「ポルキサイトエーテルよ」と女の方が答えてくれたので「響、ポルキサイトエーテルって在庫あったか?」「ポルキサイトはないっスけど純度が高いだけの実質同じもののブラストナノエーテルなら掃いて捨てる程あるっスよ」
「掃いて捨てる程……燃料がですか?」「うちは低燃費なんだよ」「羨ましい限りです」
燃料入れるとこに、響を案内してやってくれとモブが女にいうと女が頷いた。
「さてと、カサイさん。俺は情報が欲しいんだ、ここで何があったんだ?」
「お恥ずかしい話ですが、ここで燃料が切れた為二日立ち往生してまして。近くを通りかかったプレクスでしたっけ艦を見つけた所、救難信号弾と間違えてうっちまいまして」
あるある、俺もしょっぱなの時に同じミスやったわ。相棒にクッソ叱られた。
そん時に同じ艦族にしばらく酒の肴にされながら、燃料恵んでもらったんだっけか。
そんな事を言う間に、カサイとモブが話し合う為に部屋に入っていく。
別行動のプレクス一行はというと。
「こっちよ、私はサオリ宜しくね」と手を振ると響とフランとシャリーとセリグが頭を下げる。最初に行ったのは、食糧庫で早速セリグが食料を大量にクレズから取り出すと「ギズモ持ち……いいなぁ」と呟いたのを全員が苦笑で聞いていた。
次に、燃料タンクに案内されそこで響が「これ結構年季ものっスね、ちょっと道具貸してもらっていいっスか。クレズさんジャンク品からこれとこれとこれを出して欲しいんスけど」と声をかけると直に手元に出て来た道具とジャンクでちょいちょいと燃料タンクを補強してしまった。「凄腕のエンジニア……」
そこで、シャリーが頭に?を浮かべて「サオリお姉さん、お風呂とかシャワーとかはないの?」と尋ね。「あはは!何言ってるの、そんなものが小型艦にあるわけないじゃない」と大声で笑いだし。シャリーがフランの方を見て、フランが苦笑しながらシャリーの背中をポンポンと叩くと「ほらな、普通の艦にはねぇんだよ。判ったか?」。
(そういえば、同じ小型艦に乗ってるのにこの人達随分身綺麗ね)
「まさかと思うけど、そのプレクスでしたっけ?そちらの艦にはお風呂やシャワーがあったりするのかしら?」おずおずとサオリが尋ねると、キッチンと掘りごたつもありますよとシャリーが元気よく答えた事でサオリがその場で崩れ落ちた。
「何それ!どんな小型艦よ!!」
「見てみます?艦長はフランさんと一緒で、フランさんが許可した所なら好きにしろって言ってましたし」シャリーがそういうと、サオリがマッハでシャリーの両肩を掴んだ。
「是非お願いするわ!」そして、一行は今度は接続橋を通ってプレクス内へ。
「本当にシャワーもお風呂もあるぅ……」シャワーは男女別、風呂は兼用、トイレ男女別でキッチンも掘りごたつもあるのをみてサオリの常識が崩壊していく。
掘りごたつは真ん中に、鍋が置けるようになって蓋で塞げるようになってるし。
蛇口を捻ったら、全部水とお湯が出るのを確認した。
「こんな小型艦何処で売ってるのよ!」思わずサオリが天井に向って叫ぶが、「艦長と響さんが二人で作ったって言ってましたよ」とシャリーが答えた。
え?小型艦を作った??。ギギギと油が切れたブリキの様な音が全身から鳴るサオリ。
「あの、燃料入れてくれたエンジニアの人が響って人よね?」サオリが確認するとシャリーが頷く。艦長ってうちのに情報を聞きたいって言ってた、あの冴えなさそうな影の薄い男がもう一人?「ってか機体はほぼ、艦長でソフトとか内部が響さんの担当だって言ってたけど」
(何それ、そんなのありなわけ!!)
フランが、シャリーに「ほらな……、あの二人ずっと二人でいるから自分達がどれ程ぶっ飛んでるか判ってねぇだって、大体水と酸素ってのは宇宙では消耗品で、それにかかる金もバカになんねんだ」フランの言葉に力強く頷くサオリ。
だから、普通は水とか酸素は節約して使いまわすのがセオリー。
プレクスみたいに、キッチンや風呂で出た排水宇宙に投げ捨ててるような艦は何処探してもねぇんだって。大型艦でもタンクにためて港停泊時に処分や処理する事が殆どなんだよ。俺も最初聞いた時、何言ってんだこいつらって思ったからな。
フランがしみじみ語る度に、サオリがぇーって顔になっていく。
「ましてや、うちの艦長エアコンだけじゃ寒いからっつって掘りごたつなんかこさえちまって。普通の艦長なら燃料の無駄だって言って大目玉だぜ?」それが艦長自らが掘りごたつつけて鍋食いえてとか。
本人貧乏でひーひー言ってる癖に、設備をガンガン拡張しやがって笑えるだろとフランが説明した。
「お義母さん、だから艦族やるならプレクス以外じゃ認めないって言ってたの?」
「そう言う事」フランがにこっと笑うが、サオリが眼を見開いた。
「アナタ、男じゃないの?」「生まれた時から女だが?」「タンクを指の力だけで持ち上げてた位の力持ちなのに?」「鍛え方が違うからな、おかげで言葉使いは野郎臭くなっちまったけど」
その後、フォーリの二人はプレクスの風呂に入って。セリグの特製鍋をご馳走になり、「「ないわ~」」と叫んでいた。
ちなみに、セリグとフランにはその気持ちは嫌という程判ったが。シャリーや響は、首を傾げていた。フェティは、そもそも小型艦に乗るというのが初めてなのでノーカウントだ。
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