第百二十三話 強襲ラミアム

結局、コタツで眠りこけていたモブだったが爆音と共に最悪の目覚めになった。



「どうした!」

「撃たれたッス!」



「修理がまだ途中だってのに」と叫びながらコクピットに飛んでいく。

「クレズ、敵は何処から撃ってきてる?」「かなり遠くです、距離七千六百」


はぁ?!と響とモブが顔を見合わせる。


「間違いないッスか」「間違いございません」



やべぇぞ、なんだってそんな凄腕が……。


「おい、何事だ!」そこへフランが入ってくる。「かなり遠くから狙撃されたみてぇだ、クレズの見立てで七千六百だってよ」



フランが唸り、七千六百で誤差はこれだけってこたぁ相当まずい。


「敵影は出せるか?」すぐにクレズがコクピットに表示させると「ラミアムだな」ぱっとみ相当カスタムされてるが、間違いなく強化兵のラミアムだ。



「速度は出ない筈だ、こいつは狙撃特化型強化兵だしな」(にしても、まさか敵さんも七千六百の距離から撃って敵影まで丸見えになってるとは思わねぇよな……)


「どうする?」「取り敢えず、艦長。プレクスは動かせるか?」「十五分くれりゃ」


「判った、俺が凌ぐ。クレズ、力貸せ」フランがいうと響も「クレズさん、頼めるッスか?」と尋ねた。「お任せ下さい」と力強い返事が返って来た。


響はコクピットの椅子に座り、モブがダッシュで道具箱をかっさらって走り出す。


「セリグさん、攻撃受けてるからフェティとシャリーを頼む!」セリグは走っているモブに判る様に大きく〇を頭の上で作った。



取り敢えず、動かすためには切ってある接続系繋ぐしかねぇ。


内側から、開けて頭を突っ込むと接続を片っ端から繋いでいく。

フランも、腰からヴェルナーを抜くと、プレクスの上に飛び乗って。クレズに、距離と速度と着弾地点を網膜に情報が映る様にしてもらい、ラミアムの狙撃をぶった切って逸らしていた。


それを見ていた響は「もし、フランさん敵だったら。マジで、洒落になんね~ッス」とぼやく。


「おい、響!。推進機動かせるぜ。ポジションは全部下回せ」


「ガッテンっス!」


響が素早く操作をすると、推進機が下側に移動。

それを、確認すると火をいれ。フランの邪魔にならない様に移動に備えた。


「艦長、全推進機起動出来たっス」「ヨシ、推進機以外の舵やなんかも全部繋いでくから信号が来次第チェックかましてダメだったら回せ。最期に聞く!」


返事を待たず次々に、接続のランプがつくのを響がコクピットで確認しながら。「相変わらず仕事がクソ早くて助かるッス」


「何か言ったか?」「今ん所順調ッス」また無言になって、ランプの進行がどんどん進んでいく。


外では、フランが逸らした攻撃があっちこっちに飛び散って大地に穴をあけていた。


「おい、響!」「もうちょいッス、後バランサー繋いだらいつでも飛べるッス」

「入り口あけといてくれ、飛び込む!」「了解っス!」


最期の接続ランプが灯った瞬間、響が素早く操作しプレクスが動き始めた。

「響、間に合わせだから宇宙には上がれねぇ。後、速度も六十%以上出すな」

「それ、厳しくねッスか?」



「つか、なんで狙われなきゃならねぇんだ!」

「俺も知りたいけど、後回しッス!」


それだけ言うと、一気に浮上し。そのタイミングで、フランが飛び込んだ。


「ったく、オチオチ二日酔いもしてらんねぇぞ」

相変らず傭兵らしく、豪快な事をいいながらヴェルナーを腰のホルダーに戻していた。


「サンクス、おかげで助かった」「しかし、本当ズルだなこりゃ」とクレズを称賛するフランに思わず響も「俺が使った所で、俺がこんがり上手に焼けるだけっスから」と言いながらも全員がコクピットのデータをガン見していた。


「心当たりは?」「ラミアムって事は、傭兵の強化兵だろうが。生憎と、あの距離からこんな正確な狙撃してくる傭兵のパイロットに心当たりがねぇ。傭兵のフリしてるかもしれないし、傭兵からパクったものかもしれないな……」


しばらく攻撃したあと、すぐに引いて行った判断もかなり早い。


「取り敢えず、プレクスを移動させとこう」

「そうだな、街からある程度近くて上から見えない所がいい」


昨日、外を先に塞いどいて良かったと胸を撫でおろす。

「襲ってくる連中に居る星がばれてるんじゃ、うかうかやってられねぇぞ」

「直したら、この星速攻出ていくって事っスか」

「これじゃ、俺クルーのヒモ同然じゃん……」ガックシなっているモブ。



しかし、プロ送ってくるってその神威って外道はどんだけ節操ねぇんだよ。


「悪いが、明日全員で買い出し行ってくれ。俺は急いでプレクスの残り直す、寒いとか言ってられねぇ」


全員が、頷いた。



(そんな、すぐにこっちの位置がバレるもんか?)


それでバレるなら、犯罪者ギルドとかにもう囲まれてなきゃおかしい。


その疑惑は、どうしてもモブの中で拭えない。


ラミアムは一機だった、つまり傭兵なら最低でもフランと同等位に見て無きゃやべぇってことだ。


「シャリー、悪いが明日は全員で買い物行ってきてくれ。かなりの量買い込む必要があるからな」「うん、判った」


真剣な顔のモブに言われ、シャリーも真面目な顔で答える。


(こんな、顔の艦長初めて見る……)


いつも、どんなピンチでもへらへらしているモブが急に真面目な顔で指示を飛ばしているとやっぱり艦長なんだなと感じた。


「セリグさん、下手すると数ヶ月以上飛ぶ事になるかもしれねぇ。相手がどうやってこっちを特定してるか判らねぇからな」「了解です、備えて買いこんでおきます」


フェティも、連れてってみんなで相談してくれ。


早速、今から作業を始めようとしたモブが天井の奥で「うわっち!」と叫んだのを聞いてメンバーは何とも言えない顔で苦笑した。


そりゃ、緊急始動で動かして泊めた直後に冷まさず触ったらそうなるだろうなぁと。


一方、その頃襲ったラミアムのパイロットは頭を抱えていた。

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