第百十三話 右往左往

方、こちらはプレクス一行。急に地面が揺れ出したので文字通り右往左往していた。



「お兄さん!」「椅子に捕まってろ! ったくなんでこんなに揺れんだよ。地震かなんかか?」


「申し訳ございません、プレクスの艦長はおられますか?」

「艦長は俺だ」「申し遅れました、ローレンス様の使いでウラトと申します。現在デュークは犯罪者ギルドから攻撃を受けており、プレクスご一行様には安全の為準備ができ次第離陸をお願い致したく」


その瞬間、セリグの方をみるモブ。


「ローレンスさんってなぁ、使いが出せる位偉いのか?」



それを言った瞬間、全員がずっこけた。



「私が知っている、ローレンスさんは色んな人に慕われてるって感じですが」

「あぁ、にしても礼儀正しい兵士が使いに来たって逆に偉いやつかなと思ったわ」


(一緒にいるフェティ様の方が、偉いんですが言わない方が良さげですよね)


「とにかく、危険なので艦全てに可能であれば避難をお願いしております」

「判った、ありがとな」


モブが手をふると、ウラトは次の艦に同じような注意を繰り返していた。


「とにかく、攻撃を受けてるので離脱するにしろ。ここに居るにしろ気をつけてくれってこったろ、ここの領主随分神経質だな」


「そうっスね」


セリグは、この二人は無神経が過ぎると思いながらも。その無神経さに助けられてきたので、完全否定もできないでいた。



「にしても、星がこんだけ揺れるってただごとじゃねぇぞ」


「セリグさん、ジャンク品は詰め込み終わってるが。飯の方はどうなってる?」

「それにかんしては、ばっちり終わっております」


「うし、じゃ後は仕事関連だな。取り敢えず、一時避難してから戻ってきて探す方向でいこう」


「そうですね、それが宜しいかと」


早速、相談をまとめると艦を止めている橋を降ろして。接続を切っていき、最後に推進機に火をいれた。


「うし、これでいつでも出られる。後は、情報収集だ」「クレズさん、敵さんの情報ってこっから判るっスか」「おまかせ下さい」




「なんじゃこりゃ~~~~!」

「ぃぃぃぃぃぃぃ~~~~!」

「おぃおぃ、ありゃナイトメア型の遺産。それも、戦闘艦だぜ」



一機とはいえ、人間の脳みそを巨大にしたような気色悪いデザインが映し出された瞬間フェティとシャリーが口元を押さえた。


セリグも思わず、手で口を押える。



(なるほど、ローレンスが早めに避難を呼びかけていた理由はこれですか)



デュークの守りも相当固く、浮遊砲台や強化機械兵等で応戦しているのが判った。



「これ、下手に出てくとハチの巣っスよ……」

「判ってる……、つかこの弾幕の中を避難しろとか。ガード固めて港に泊まってた方がらくじゃねぇ?」


「それだと、万が一直撃を貰ったらプレクスは周りの艦達ごと蒸発間違いなしッス」


取り敢えず、シャリーとフェティはあのキモイ見た目をもろに見ちまって。ショックがデカいだろうから、背中をさすってやってくれとフランにモブが頼むとフランは無言で頷いた。


「クレズさん、正直な意見が欲しいッス」「はい、響様」

「何発なら耐えられるっスか?」「申し訳ございません、現在の残量エネルギーでは一発が限度かと」



そこで、モブがカセットの残量も確認する。しかし、無情にもメモリは一回分しかたまっていない。


思わず、二人がセリグの方を見るも。セリグは、無言で首を横に振った。


二人が思わず、歯をガチガチと言わせながら。足もガタガタと震え始める。



「ヤバくね?」「めちゃんこ、ヤバいッス」

「クレズさん、情報ッス」「デュークの戦力と敵の砲台や航行能力……、とにかく今判るだけの情報が欲しいッス」「畏まりました」



今のプレクスは、車で言えばエンジンだけがかかっている状態。

コクピットのモニターには、両陣営の布陣や速度。砲台の命中率等が全て表示され、響がそれを眼を血走らせながら右往左往に眼球を動かした。


モブも同じように、首ごと色々動かして突破口を探す。

勿論、セリグも立っていて腕を組んではいるが。二人と同じ様に、必死になって現状のプレクスで出来る最善を探していた。


(本当、これずるいですよね)


セリグが、その情報を視ながらそう思わずにはいられない。

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