第二章 セブンスを求めて
第八十七話 デュークへ向かう
「ったく……、今度こそ忘れ物はねぇよな?」と冗談交じりに聞けば。
「ダイジョブデス」
結局、全員の手に境界焼きを手渡しで配った後再離陸したプレクス。
「これ、美味しいね」とシャリーが笑えば、「そうだろうそうだろう♪」と頷く。
フェティも、頬を緩ませ。セリグも、しっかりして下さいよと肩を叩いた。
あれから、プレクスは順調に宇宙を航行していて。最初は同じ映画を死ぬ程見るだけの粗末な映像出力装置があるだけの小部屋だった所はコタツと座椅子が置かれまったりのんびりできるようになった。
というのも、アンリクレズが自動操縦しており。難しい判断を迫られる様な緊急事態的な事が無い通常運行程度であればパイロットを必要としない。という事を、最近になって知った。
響やモブは基本的には自力でプレクスを飛ばしていたので、この自動操縦すらアンリクレズの方から響に自己申告して発覚した。二つ目のセブンスをドッキングした時にそれだけの演算出力を得られる様になったようで、響が助かると言っていた開発ツールみたいなサポート機能も副産物として得られた様だ。
結果、こうしてコタツの電気こそ入っていないがコタツ部屋にみんなで集まって楽しく映画を見たり勉強したりして時間を潰していた。
ちなみに、少し前にモブが自室ではなくここで寝落ちしており。響に、ジト目で起こされていた。
映画も保存してある旧式の円盤を二十枚程に増やしており、モブが完全制覇しようとして六枚目で意識を失ったのだと白状。
フェティやシャリーもこの部屋を気に入っており、最近プレクスの面々は暇があると全員ここにいるという有様だった。
セリグも、苦笑しながら目覚ましのインスタントコーヒーを入れる。
シャリーとフェティとフランには先に、冷やしたジュースを配った後でだ。
時々シャリーに聞かれたハードウェア的な事を答えつつ、モブはせんべいをかじっていた。響も、この部屋には居るが。ソフトウェアや設計なんかを考えたり音楽を聴いたりした。
「そういえば、艦長そんなに暇ならこの部屋にスピーカーつけてくれねっスか」と響が言うと「ん?スピーカーは今ついてるだろが」。「もっと複数つけて、立体的に音が出る様にして欲しいッス。今だと、二ラインのステレオじゃないっスか。思い切って七チャンネルとかいってみないっすか」「良いけどよ、それ誰が組み込みと制御を組むんだよ。お前の仕事が増えるだけだぞ」そういって、体を起こした。
「俺が欲しいんっスよ、ここ最近で、随分設備も増やしたじゃないっスか。前なら同じ映画をループする様に見てるだけだったッスから音が出りゃいいや位だったんっスけどね」
そうだな、確かに言われてみりゃそうだわとモブも納得した。
「それなら、防音壁も入れてくれると嬉しいんだが?」フランも便乗して注文をつけ。
「可能なら、脱臭設備が欲しい所ですな」とセリグも笑う。
「おいおい、待て待て。防音にスピーカーに脱臭かぁ、次の拡張予定に考えとくわ」とよく見ると凄く小さくシャリーが手を上げていた。
「シャリーもなんかあんのか?、言うだけ言ってみ。言うだけならタダだ、元気よくな。お兄さんに聞こえる様頼むわ」と笑った。セリグもフェティも、フランも響もゆっくりと頷く。
「お兄さん、私は医療ポッドをもっと良くして欲しいの」と言われモブも「貴重なご意見ありがとよ、ただうちは貧乏をまだ脱してる訳じゃないから、予算が出来たらでいいか?響、悪いけど拡張予定のトコ全員分書いといてくれ」
すまねぇな、本当はすぐつけたいとこなんだけどよ。そういうと、シャリーは首を横に振った。フェティーも続けて、手を挙げ。「おし、聴くだけだぞ。目標にはするが約束はできねぇ」というと。「あの、私はセリグのベッドをもう少し広げてあげたい……」かなりか細い声ではっきりと言ったフェティにモブは強く頷いた。
「お嬢様……」セリグは思わず涙ぐんだが、モブと響とフランは顔を見合わせ「あっ……」という顔をした。そういえば、飛び込んで来た時からゲストではなくなった為に臨時のベッドでセリグが寝ていた事を思い出したからだ。
「わりい、そういえば。セリグさんは最近クルーとして働いてもらってるから、正式な部屋とベッド用意しなきゃダメだわ」「艦長~、それは酷いッス」「あちゃ~」
その件はすんませんでした、次の星ついたらすぐ買ってきますんで勘弁してください。と頭を下げ「いえいえ、こちらがお世話になっているのですから」と苦笑した。
「そんな訳で、セリグさんのベッドが最優先になります。皆に意見出してもらって悪いけど、これだけ働いてもらってそりゃーねぇわと俺は思うので」
全員を見渡すと、意見は一つになったようだ。
「他は、予算出来たらっスね」「楽しみにしてるぜ」「それは、仕方ないね」とそれぞれが納得した所でアンリクレズから通信が入った。
「響様ご歓談の所申し訳ありません、少しコクピットにおいでくださいませんでしょうか?」「判ったッス、艦長と一緒に直ぐ行くッス」
「何かあったのかな……」心配そうなシャリーに、フランが大丈夫だってと頭を撫でた。
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