第八十三話 知り合い
結局あの後、何事もなくギルドに港に戻り。ギルドで配達の料金を受け取った帰り道に一人の女性に話しかけられた。
「失礼します、プレクス一行の方々とお見受けします。私、アラネアと申しますが。そちらの艦にセリグ様は乗られておられるでしょうか」
若干セリグよりは若いが、それでも十分年配のアラネアと名乗る白髪が数本ある女性に話しかけられた面々は一瞬戸惑うが、セリグに通信すると覚えがあります。本人かどうか確認したいので実際に会いたいのですがとの事だったので、響が呼びに行って代わりにプレクスに残ってフェティを守る事を提案。
そして、カフェに向かい合って座る。
「お久しぶりです、アラネア」「セリグ様も、ご無事で何よりです」
その後、しばし無言になる。
「今まで、何処で何をしていましたか?」「私はセリグ様側につくであろうという事で、神威から狙われておりました故。点々と星を渡り歩いておりました所、RXでセリグ様を見かけたという情報を手に入れ。こうして、お会いしたく探しておりました」
お互いは過去軍人だった事から、探り合いは余りせず淡々と話す気の様だ。
セリグは、ゆっくりとコーヒーを飲み。
「そうですか、大変でしたね」と笑い、アラネアはセリグのその微笑みに眼を見開く程驚いた。
「セリグ様は、大分変られたようですね」とアラネアが静かに見つめた。
「こちらの、プレクスにコックとしてお世話になっていてその影響もあるのかもしれませんね。食事は、楽しく食べてもらいたいものですし」
アラネアはちらりと、モブの方を見たがすぐに向き直る。
「とにかく、お元気そうで何よりです。私としましては、やはり一人で脱出して心細かったので連絡だけでもと思って」
そういうと、苦笑いを浮かべ。膝に拳を作って俯いた。
自分にはプレクスの面々もフェティも居たし、必死だったのもあって気づく事が無かったセリグは己を恥じた。
(そうですよね、神威のクーデターで神威側についていない元軍人は全て追われる対象ではあるのでした。ただ、掌握しきれていない部分もあり。追跡の優先順位が低ければこうして助かる事もある……ですか)
「今日はお時間を作って頂いて、ありがとうございました。元とはいえ仲間が健勝であった事を胸に、頑張れそうです」
そういって、アラネアは連絡先をすっとセリグの目の前に置いた。
セリグも、自身の連絡先……といっても料理人ギルドの自分のボックス当てだがを出した。今私は定住していませんので、料理人ギルドに手紙を届ける形での連絡をお願いします。
「私も逃亡中なので、それは返って助かります。傍受されず、一度ボックスに入れてしまえば職員でも見れませんからねギルド関係のボックスは。私も、何か身につけておけば良かったかな……」とこぼすアラネアは歳より若く見えた。
「私は寝る時間を削りましたが、軍の様な規律厳しく体力を使う様な所で何か併修してギルドの資格を取る事は難しいですからね」
傭兵ギルドは強く無ければ、そもそも傭兵ギルドにすら入れないし。
艦族ギルドは、艦を所持しているか。その艦の所属である事を艦長に認められていなければならない。そして、調理ギルドではその味がホテルのコックやパティシエに届いていなければそもそも最低ランクの登録すら出来ない。
だから、一定以上のランクを持つものというのはそれなりに仕事も回って来るし優遇もされる。高ランクの傭兵が、低ランク艦族の専属でいる事は本来ならおかしいのだ。
そして、艦を持つものがモブの様なタイプである事は99%無いのをセリグもアラネアも知っている。だからこそ、アラネアはセリグのこの信頼に驚いたのだから。
「それでは、セリグ様。ご健勝である事を願っております」
「アラネア、貴女も」
カフェからアラネアが消えたあと、モブが「良かったのかい?」と尋ねると「えぇ、アラネアは現役時代神威より階級こそ一段下ではありますが。優秀でしたから」
(彼女が助けを求めていないのなら、彼女は大丈夫でしょう)
「優秀ね、羨ましいこったよ」「それ、貴方がいいます?艦長」
「バカいえ、響が優秀で、フランも優秀で、アンタも優秀とくれば。見限られない様に、振舞うのに必死なんだよこっちはさ」
(貴方が貴方のままでいる限り、見限られはしないと思いますがね)
内心そう思いながら、セリグは意味深に笑うだけだった。
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