第八十二話 一難去って

結局、盗賊艦隊が旗艦以外全滅するのをプレクスの中で見届けたモブと響。

アンリクレズも、問題なしと判断しクマドリを消失させた。



「しっかし、機械惑星の警備はおっかなくていけねぇや」

「ホントっスよ、流れ弾飛んでくるたびに。以前みたいに、艦長が暗算して俺が運転で避けるみたいな状態だったら。また何発か貰って、修理費嵩んでたとこッス」



「響様、つかぬ事をお伺い致します。何故、プレクス程の艦の外観がずっとボロのままなのでしょうか?」


アンリクレズは、効率を求める機械ゆえに判らない事をマスターに尋ねる。


「見た目がボロの方が都合がいいからっス、もっというなら舐められる位で丁度いいッス」


「理解不能です」



「そりゃ、俺が説明するぜ。例えば今の状況なら、あの盗賊はこっちがピカピカの艦なら真っすぐこっちにきて盾にするなり。人質にするなりするだろ?」


そうならねぇのは、ボロだからなんだよとモブが言った。


「相手だって、逃げてる最中。しかも、そんなボロ艦に金があるとも思えない。中身は無論クレズやフランの様な優秀なので固められてるから負けるはずもないが、争う労力考えたら基本的には無駄だ」


アンリクレズは、咀嚼しながら演算とシュミレーションを重ねつつ聞いていた。


「それに、このプレクスは艦長と俺が作った艦っス。家であり、宝物であり。そして、俺たちにとっては商売道具何ッスよ。クレズさんは、道具は使われてこそだと言うッスけどね。この艦は俺たちにとっちゃ実の子供同然何すよ、傷つかないならそれに越した事はないッス」


優しい眼で、響は言った。プレクスは、自分にとって守るべき子供と同じだと。


「創造主に疎まれた私には、嫉妬を覚えます」


その言葉に、モブと響がぶっと噴きだす。


「例え、どんなに見てくれが醜くても。俺たちにとって愛する家が傷つかない為になめられるなら問題ない、それだけわかりゃ良いさ。中身は妥協しねぇけどな、逃げ切れなきゃ意味ねぇし。快適でないと宿代わりなんだから辛いしな」


モブがおどけながらそういうと、クレズは無言でチリチリとした計算音を響かせた。


「さてと……、警備の連中も引っ込んだみたいだし。戻って報告すっかな」


そういうと、推進機のレバーを三分の一程下げる。



「微速前進、全計器異常無しッス」



「目標機械惑星へ……って、強化機械兵がまだ出撃しっぱなしになってんぞ」


「もう、盗賊艦隊は残骸になったかトンズラしたのにおかしくないっスか?」



「響様、報告がございます」「手短に頼むッス」



「どうやら、盗賊艦隊があの位置に居たのはワープに失敗した為の様です。しかし、そのワープアウトした場所に空間に歪みが生じています。それ故、通常空間を運行する全てにとって警戒対象になっている様です」


「空間に歪みだぁ? そんな初歩的なミス盗賊がやるかぁ?」


「業種は違っても、俺たちも盗賊も逃げ足は命綱ッス。クレズさん、もうちょい詳しい事判らないっスか」


「畏まりました……、調査の結果どうやら盗賊ギルドがワープで逃げている最中に開拓機構が作った時空乱流に突入し。あちこちダメージを受けながら通常空間に戻ってきて、出現した場所が機械惑星の真正面だった様です」


約十秒で、調査を終えたアンリクレズの返答に二人が変な方向に椅子から落ちた。


「大丈夫ですか?響様」「大丈夫だけど、ちょっと頭が痛いッス」


「そりゃ、幾ら何でも運が無さすぎだろ。いきなり横っ腹に巨大戦艦がワープアウトして突っ込まれる様なもんだぞ」



「空間修復と、その警戒で機械兵の警戒網が終わっていないようです。こちらも含む周囲の艦は全てロックオンされていますが、認証が既に済んでいる艦は通れます」



「判った、じゃぁ微速のまま。機械惑星港に着陸、港に着いたらギルド行って金を受け取る」


「異議なしッス」



「全く……、トラブルの無い旅ってなぁないもんだな」

「ゆる~い、配達の予定だったんスけどね」



そういって、二人とものんびりしながら会話していた。

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