第八十一話 盗賊艦隊がそこに居た訳
「クッソ!」
思わず舌打ちしながら、盗賊艦隊頭目バルボが頭を抱えた。
というのも、連合艦隊からトンずらこくときにいつも通りワープを実効。
余裕の逃げ切りと思いきや、ワープ空間でトラブルが発生。
「なんで、ワープ空間がねじ曲がってんだ!!」
悲痛な叫びをあげ、副頭目のリネエルがしがみついて報告をあげる。
「どうやら、先だって使用した開拓機構のバカがワープ空間の安全弁を中途半端にしめた事で色んな時空にゆがみが出ている様です。ワープアウトした場所は機械惑星真正面!」
「あんだって?! そいつはまずいぜ、連合艦隊よりヤベェとこに事故ってワープアウトとか運が無さ過ぎにも程があんだろ!!」
「強化機械兵、数は約一千!」
「全艦に通達、死にたくなきゃ艦の体勢を立て直せっ!!」
逃げ遅れた奴は盾にして置いていく、死にたくなきゃフルパワーで推進機回して。フォーチュンバリアを三重にはって全力離脱だ急げよ。
「もし、俺達の艦が遅れたら置いていけ!。 これは頭目としての絶対命令権を行使する!!」
(終わってたまるか、他人のミスで終ってたまるかクソッタレがっ!)
「焔影一番、三番、七番の中型艦大破!、続いて、四番と八十一番中型艦装甲剥がされました!!」
「一番と三番を盾に、二時方向に離脱。すまねぇ!」
「お頭、必ず逃げ切って俺達を無駄死ににしねぇでくだせぇ!」
それが、三番艦の艦長の最後の台詞だった。
軍隊より統制の取れている、盗賊というのは法の秩序が無い分もっと手ごわい。
それでも、プレクス面々の様な技術力がなく。傭兵にもなれなかったもの達なぞ、幾ら数がいても最新兵器でパイロットが乗っていない強化機械兵には蹂躙されるしか無かった。
「推進機、出力百三十パーセント。これ以上は、爆発します!」
震える手を押さえつけ、油汗を床に落とし。それでも、動揺を見せてはならない頭目が指示を飛ばす。
「各種、隔壁閉鎖。切り離して部屋ごとくれてやれ、閉鎖に逃げ遅れるなよ!」
「機械惑星から、更に強化機械兵RとE型がそれぞれ三千機上がってきます!」
レーダーを見ていた、一人が叫ぶ。
更にそれらが、それぞれの兵器でこっちをロックオンしていた。
「躱せ!」放射状に飛んでくるそれらを千切れんばかりに面舵をきった。
バリアを二枚持っていかれるが、何とか初弾を躱し切った。
「被害報告!」
「バリア二枚破損、敵次弾マーク、速度は音速二です」
「次、とりかじだ!」
「次の命中まで、十秒」「次も躱せるか……?」
祈った事もない神に、祈る日がくるとはな。
「砲雷長、自爆覚悟でフェリムブラストで応戦。狙いは適当で良い、採算も度外視。エネルギーが尽きるまで弾幕を貼りつつ離脱を続けろ」
次々と味方艦が爆散していき、今いる艦もしがみついていなければならない程揺れながら最後まであきらめず怒鳴る様に指示を出す。
(さっきの攻撃で艦左側の部屋は大分オシャカになった)
映し出されるダメージやエネルギー残量等を見ながら、装甲もバリアに回すエネルギーの量も残されていない事を悟りつつ。それでも、懸命に運命に抗う。
「野郎ども、粘れ粘れ!。俺達は、粘って生き残って来たんだっ!!」
発破をかけながら、相手が機械惑星なら生きのこれりゃ御の字だなと頭を抱えた。
「機械どもに、人間様の底力見せてやんぞ!」副頭目もここが正念場だと頭目と共に叫び。
砲雷長も「採算度外視なんて命令もう二度とねーぞ、撃ちまくれ!」
全員が一丸となって、猛攻に抗う。
その間にも、他の仲間達が爆散していく姿があちこちに見えていた。
「たく、今日は人生最大の厄日だぜ。疫病神は開拓機構だな!」頭目が叫ぶとあちこちから「全くだ!」と賛同の声が上がった。
結局、頭目たち以外の艦は全て大破させられたが。頭目たちだけは命かながら逃げ切る事ができた。
そして、それは盗賊ギルド達にとって。機械惑星から逃げ切った、初の盗賊艦として有名になった。
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