第七十六話 ギルドの仕事はいつも
港にプレクスを着艦させた後、すぐに艦族ギルドに四人でやってきた。
「何だぁ、子連れで来るとこじゃねぇぞ。ここは、ギルドだぜ?」
酔っ払いがそういって、絡んでくるがフランが殺気を飛ばしながら言った。
ちなみに、彼女は今RXで買った女物を着ている。
「俺の娘が、艦族やりてぇってのがそんなにおかしいのかい?」
その殺気に先に当てられたのは、絡んだ男ではなく。モブと響の方だった。
勿論、絡んだ男もヤベェと気がついたが後の祭りである。
ギルドの受付の殆ども、ビビり散らかしていた。
カツカツとシャリーの手を引いて、受付にどかりと乱暴に体をのりだしながら言った。
「新しく、受付してくれや。登録はプレクス、艦長にはもう話を通してる」
びっと、親指で後ろでガクガクしているモブを指す。
「本当ですか?」受付が恐る恐る尋ね、モブがあぁ……と答えた。
「脅されてじゃなくて?」「それはないっス」
咄嗟に響が口を挟み、二人が艦族の身分証をギルドの受付に渡した。
スキャンで、身元を確認すると。身分証を二人に返す。
「そちらの、お母さん?の身分証を拝見したいのですが」
「ほらよ」乱暴に傭兵用の身分証を受付に投げ、拝見いたしますとスキャンに通す。
「A級傭兵 通り名は……白刃!?。え?マジで」フランの顔と、モブと響の顔を三往復ぐらいして受付の顔が引きつった。A級といえば、一人で艦隊並の戦力と言われているのだからこの殺気も納得だ。
「白刃の娘さんでしたら、もっといい所からも沢山のお誘いが……」ざわついている艦族達にフランが睨みつけながら言った。
「うちの娘は、モブんとこに乗せる。それ以外は、艦族になる事自体認めねぇ」
受付はもう一度、モブに顔を向けるとモブは半泣きになっていたが頷いた。
「かっ畏まりました、それではプレクス専属で登録致します」それだけいうといそいそと撤収し、シャリーの艦族の身分証を持ってきた。
「これが、シャリー様の登録証です。最下級からのスタートになりますが、残りの説明等は艦長の指示に従って下さい」登録ありがとうございました。
そういうと、休憩しますと受付に札を置いて立ち去る受付。
「ほら、良かったな。シャリー、今日から正式な艦族だ」そういって身分証をシャリーに手渡す。
「うん♪」輝く笑顔のシャリーの頭を優しく片腕で撫でるそれは正しく母親のそれだった。
「それで、艦長」「ひゃっひゃい」モブがきょどりながら返事をした。
「これから、どうすんだ?」フランが尋ねたので「お仕事を探そうと思います」と言った。フランは一つ頷くと、シャリーの背中を押してモブと響の間に立たせると「仕事を探すんだってさ、頑張れよ」というと空いていた椅子にどかりと座って掲示板が良く見える位置に陣取った。
「あの、ご注文を……」とウェイトレスがやってきたので、これで足りるか?と金を盆の上に乗せ「酒とつまめるものを頼む。娘が見えねぇから、早くどいてくれ」と言うと残った片腕で頬杖をついて、一生懸命仕事を探す三人を眺めていた。
三人でしばらく、掲示板を指さしながら仕事を探している間。危ない笑みを浮かべながら、そこに座っているフラン。ウェイトレスが持ってきた、酒とソーセージを乱暴にかじりながらまるでギャングの様に座っていた。
フランが丁度食べ終わる頃に、三人が仕事を一つに決めて受付の所に持っていくが。受付は難色をしめした。
「あの、これ配達のお仕事ですけど。ギャラ安いですよ、戦闘系のいい仕事ありますよ?いいんですか」と小声でモブに話しかけるも。
「これで良いんだよ、良い筈だ……」と何度も自分に言い聞かせ。「これを受けるから、手続きしてくれ。荷物は明日受け取る」
それだけ言うと、三人がフランの前に歩いて行った。「シャリー、仕事はうけれたのか?」最初にフランはそう尋ねた、殺気は出しっぱなしだが優しい顔でだ。
「うん、お母さん。三人でちゃんと相談したんだよ♪」
顔を起こしたときじろりと二人と睨むが、二人とも頷いた。
「よし、じゃあ初仕事だな。ちゃんと頑張るんだぞ」それだけいうと背中を向けて、フランがギルドを出ていき。シャリーもフランの残った手にそっとつかまった。
その瞬間、艦族ギルドの全員。モブと響含むが、一気に脱力した。
「こっわ!」「怖いッス、あれ誰っスか。つか、多分そこの奴が子ずれでくんなとか絡んだせいっス。お前が悪いッス」さっき絡んだ筋肉質の男を響が指さしたが、見事に気絶していた。
「ったくよー、頼むから余計な事言わないでくれよ」とモブが言えば周りの全員が首を高速で縦に振った。
「あの……、本当に配達の仕事で宜しいので?」受付が恐る恐る尋ねるがモブが苦笑しながら「じゃ娘さんが受けたいって言った仕事拒否って、壊滅させられるの?。 俺、責任取るの嫌だよ?」とモブが言えば受付も「それもそうですね」と苦笑いした。
「そんな訳で、過保護が発動して。俺たち全員が死なない為にも、ちゃーんと通達しておいてくれると助かるんだが」モブが受付にウインクしながらいうと。艦族達も「あぁそうだな……」と達観した目で納得していた。
「じゃ俺達は、明日の準備があるから」モブはそういうと、そそくさと響と一緒にギルドを後にした。
その背中で、受付がこうつぶやいた。「モブさん、ドンマイ」と。
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