第七十五話 着艦オズマ港
人工的な灯りを纏う、機械独特の濁った色の星が視界に入る程近づいた。
「シャリーちゃん、フェティちゃん。そろそろ港に降りるから、宜しくな!」モブがやや大きめの声を張り上げた直後に管制側から通信が入る。
モブと、フランそして響がそれっぽく構えた。
「こちら、アクリスジュディス管制塔。オズマ港担当のフォードロです。身元確認をお願いいたします」
スーツ姿の、紅いネクタイをしめたサイボーグが画面にうつしだされる。
「俺は、当艦最高責任者モブ。こっちは、A級傭兵のフラン。それから、当艦専属エンジニアの響。俺たち二人は艦族、目的は仕事探しだ」
「確認致しました、所で紹介の無い方が乗っていらっしゃるようですが」
来た……とモブが真剣な顔をしながら内心は心臓破裂しそうな位だが努めて冷静に管制に受け答えする。
「あぁ、当艦専属コックのセリグとその娘フェティ。それから、フランの一人娘のシャリーの事か? 前に来た時はそっちは確認されなかったから、呼んでこようか?」
「お願いします」
(RXで執事服以外のコックものも、買っといてよかったぜ)
「響、悪いけど三人をコクピットに呼んできてくれ」
「了解っス」
しばらくして、響とセリグ。それから、フェティとシャリーの二人がコクピットにやってきた。
「セリグ様、調理師免許の確認を管制として要請致します」
(しまったっ!そっちは対策してねぇ)
焦るモブ、だがセリグは胸元から一枚の免許証を取り出すとご確認下さいと差し出した。
「これで、宜しいですか」セリグが差し出した免許をレーザーが通過すると、グリーンの灯りが点灯する。
「確認致しました、ようこそB級調理師セリグ様」
(B級?!)
それを聞いていた、モブの方が思わず脂汗をぽたりと床に落とした。
セリグは艦長の方を向くと、にっこり笑って「仕込みがありますので、戻ってもよろしいですかな」と聞かれたので「お……おう」とだけ答えた。
「フォードロ様、見習い扱いで娘も通して頂きたいのですが構いませんか?」
「資格番号を照合致しました、ただ娘が何か問題を起こした場合責任は貴方が取る事になりますが」
「かまいません」それだけいうと、セリグとフェティが部屋に戻っていく。
「後は、俺の娘だな。シャリー養子扱いにした時のカードを出してくれ」
そういうと、シャリーが一枚のカードを取り出してそれもスキャンし問題なく通った。
「全員の身元を確認しました、ようこそプレクス一行。オズマ港は貴方達を歓迎いたします、着艦は誘導にそって減速しながら行って下さい。百八十三番に、誘導いたします。着艦後、艦内宿泊をされるようでしたら着艦後港で手続きをお願い致します」
通信モニターが切れた瞬間、まるで溶けたチョコレートの様に椅子にぐったりとしがみつくモブ。
「うぁぁぁぁぁ、真面目な顔すんの疲れるわ」背伸びしながら、体がバキボキと軋みをあげていた。
「いつも、さっきまでの顔してたらモテるぞ」「絶対嫌だわ、モテたいけど」
フランに苦笑しながら言われ、モブが両手をあげて勘弁してくれと降参した。
「誘導してんのは、四機のユナイデットOOO(トリプルオー)っスね。装備品は、従軍用対物レーザーライフルとレーザーソード。複合装甲で重量は約七十トン、約なのは装備やタイプで変わるから。ここからじゃ、断定はできないからッス」
「あれから、追われた場合どうなる?」
モブは響に尋ねると、響は溜息をつきながら「ケツまくって逃げるなら逃げ切れるっすよ、今のプレクスはあれよりも最高速度、機動力共に勝ってる上に秘密兵器があるッスから」
ただ、俺たちは仕事しにきたんで。そういうトラブルは、勘弁して欲しいッスけど。
と響がいえば、モブも「俺だってトラブルはごめんだぜ?、何故かトラブルには熱烈に愛されてるけどな」
すると、響も「モテるんなら、美女が良いっス」と答えた。
それを聞いていたフランが「お前らなぁ……」と苦笑する。
(それにしても、セリグさんB級調理師ってそりゃ料理うめぇ筈だ。後でギャラ請求されたらどうしよ。結構、贅沢なリクエストしてきたからなー)
とモブが頭を抱えていると、フランがそんな事にはならねぇだろと苦笑した。
そうこうしてる内、徐々に高度が下がっていき。誘導ラインの両サイドには赤い点の様な明かりが道の様に一定間隔で続いている。
「稼げる仕事を頼むぜ」「そうっスね、シャリーちゃん達には腹いっぱい食ってのびのびやって欲しいッス」「あれ? 俺は?」「艦長は大好物の保存食バーがあるじゃないっスか」
そうだったのか?と嫌な笑いを浮かべるフランに、首を必死に横に振りながら「いやいやいや、好きであんなひでぇもん食ってるわけねぇだろ!」
強く否定するモブを、フランと響が笑いながら。
プレクスは、無事着艦した。
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