第七十四話 機械の星へ

「そういや、フランさん。アクリスってどんなとこなんスか」


響は、アクリスに行ったことが無い。モブも、地図で調べただけの情報しか持っておらずフランの方を向いた。



「ん? 機械惑星アクリス。その名の通り、星が全部機械になってるとこだな。衛星の数も抱えてる艦隊の数もそうだが、何よりやらかすと兵士が半数位強化機械兵だから宇宙まで追って来るぞ。もっとも、装備のおかげか知らないが治安はかなり良い」


RXみたいにド田舎だからそもそも人が居ないとかじゃなくて、ガチで衛星に人がいてもすぐ捕まる。空に見える星が全部監視カメラみてぇなトコだからな、艦内とかトイレぐらいじゃねぇのって位には監視がうようよしてんぞ。AIだから、響位の腕がありゃ何とかなるかもしれないけどな。


そういって、肩を竦めた。


「絶対やらないし、願い下げッス。それを世間では、フラグって言うッス」



「仕事はあるだろうが、かなりガチガチだから俺としちゃ窮屈ってイメージが強い」そう、締めくくるフラン。



「それでも、俺達はそこしか近場がないから。そこで、稼ぐしかないんだけどな」

モブが、長い長い溜息と共につっこんだ。


あれから、宇宙に上がって。こうして、のどかに喋りながらプレクスは通常航行でゆっくりとアクリスへ向かっている。正式名称は、アクリスジュディスだが。基本的にはアクリスで呼べば大体通じる。



「重力もあるし、観光地や寄港なら悪くは無いんだが。住みたくはない、そんな所さ」


言い終わると、フランは部屋から出ていった。


「そういや、フェティちゃんとシャリーはどうしたよ」

「お部屋で、お勉強っスよ」「精がでるねぇ」


「まぁ、本人たちにやる気がある内は砂漠に水まいてるようなもんっス」

「俺らの仕事はそのやる気が消え失せねぇように、聞かれた事だけ答えればいいってか?」


「考えても見るっス、俺たちがあの位の年の頃に横でごちゃごちゃあーだこーだ言われてやる気出るっスか?」


モブが、腕を組んで考えながら「俺だったらキレ散らかすわ」と答えた。

響も呆れながら「自分が怒るんだったら、尚の事見守る事を覚えた方が良いっス」と苦笑する。



「暇なんだよなぁ、以前と違って航路計算を計算尺でやってるわけじゃねぇし」


それを偶々聞いていた、セリグが食器を落っことし凄い音が響いて二人もびっくりした。


「それは本当ですか?」「あぁ、今はクレズがやってくれてるから。その辺のコンピューターなんかよりも余程正確だぜ?」


なぁ、響と笑うモブを見て。セリグは落としたものを片付けながら、背中につめたい汗が流れるのを感じていた。


(この広い宇宙で、星の重力や隕石やら計算は無数にある。それを、計算尺一本でやってたとか無謀にもほどがある)


「クレズさんとは……、あの無機質な声が頭に響いてくる感じの方の事でしたよね」

「そうっス、アンリクレズさんはセブンスっていう遺産ッス」


(やはりっ、人間にしては反応が早すぎるし。機械にしては、出来る事が多すぎると思った)


「姿を見せては頂けないので? 可能なら挨拶をと思いまして」

「それなんスけど、クレズさんは色々あってまだ復帰してないんスよ。雑務や計算みたいなものならいけるんスが、無茶をさせ過ぎたせいで」


何とも言えない顔で響が言えば、「申し訳ございません」と反応が返って来た。


セリグは、「そうでしたか、これは失礼をしました」と頭を下げた。


「気にしちゃダメっス、取り敢えずプレクスに乗ってる間はタダの響でフェティちゃんでセリグさんッス。クレズさんも、プレクスの仲間は俺と同じ様に接して欲しいッス」


「権限が許す範囲でなら、必ず」


とまぁ、必要最低限声をかければ大体反応が返ってくるんで。修復や再チャージに専念してもらってるっスよ今は倉庫でもあるんで何か欲しかったらプレクスの中で呼んでだしてもらって欲しいッスと締めくくった。


「人も生きたまま入れられる、時間停止倉庫というのは驚異的ですね……」

「ギズモと違って、ご主人様命だから全く融通がきかねぇけどな。実際、響が事あるごとに念押ししてるから便利に使えてるけど。後、こういうのがあるってバラすなよ」


「判っております、自分の元部下を見て欲がどれだけ人を腐らせるか見て来たもので」


モブが「漫画出してくれ」といってタイトルをいうと、手元にちゃんと漫画が一冊出て来た。ありがとなというとそれを読み始め、無言になる。



「俺は今から、バランサーのパラメーター調整やるッスから。多少揺れたら申し訳ねぇッス、お嬢ちゃん二人には宜しく言っといて欲しいッス」


それだけいうと、トレーサーのログを見ながら数値を追い始める響。


(大した二人だ。やはり、この艦に逃げ込んで正解だった)


そういうと、片付けた食器類を捨てに行く為部屋を出ていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る