第七十二話 憩いの一時
モブが頼んだカツサンドにかぶりつきながら、響のゲームを対面の席から覗き込んでいるとシャリーとフランが入って来た。
「おっ、艦長も来たのか?」というフランの声に、ぱっと二人が顔をあげて反応するがモブが首を傾げた。
「シャリー、そこの美人さん誰だ?。 フランはどうした?」と尋ねシャリーの横に居たフランが笑顔でモブのほっぺたを引っ張りながら持ち上げた。
「いでで、何すんだよ」「オ レ だ よ」
言われて、モブが二度見するも頭の中のフランと一致しない。
はぁ……とフランが溜息をつくと、ゲームをしている響の横に座った。
シャリーもモブの横に座ると、席が一杯になった。
「ご注文はお決まりですか?」マスターが、二人分のおしぼりとメニューを持ってくる。
ゲームをしていた手をとめて、響がシャリーになんか美味しいもん頼むといいッスよと笑う。
「響お兄さん、この綺麗なのなに?」と響が飲んでいたクリームソーダを指さす。
「あれ、シャリーちゃん。クリームソーダ知らないっスか?、冷たくて美味しいっスよ」
そう言うと、マスターに俺が払うからシャリーちゃんにクリームソーダ出してあげて欲しいッスというと。マスターも「はい、ただいまお持ちしますので少々お待ちを」というと直ぐに作り始めた。
「しっかし、誰か判んなかったぜ」「これか?」フランがいつも着ている男物のコートではなく、女性用の私服の端をつまんで引っ張った。
「髪も、伸ばしてるしよ」「いつもは、首の中の方に入れてるからな」と肩を竦めた。
「艦長が、服買って来いっていったんじゃねぇか」「そうだけどよ」
モブがフランを見て、苦笑した。
(そんな、綺麗になるなんてきいてねぇよ)
「お待たせしました、クリームソーダです」
そこへ、マスターがシャリーの前にクリームソーダを丁寧にゆっくりと置く。
「わぁ♪」シャリー花が開いたような笑顔になると、三人がそれをみてつられて笑う。
「これから、どうすんだ?」フランがモブのカツサンドの一つを失敬しながらモブに尋ねた。
「あん? 今プレクスはガタガタだからな。もう少し修理に時間が欲しい。シャリーやフェティちゃんには申し訳ないが」
「そうか、じゃ飛べる様になったら稼がないとな」そういって、フランはマスターに自分の分のカツサンドと紅茶を頼んだ。
「折角、ギズモより優秀な倉庫を手に入れたッス。有効活用して、少しはマシなオマンマ食わないとやってられないッス」
「響様、お任せ下さい」と頭に響くアンリクレズの声。
雑巾の搾り汁味の保存食バーを思い浮かべて、イーという様な顔をした。
「なるべく、早くなおす努力はするけどよ。フランにもセリグさんにも、迷惑かけるな」
この通りだと、頭を下げるモブによせよせとフランが肩を叩いた。
「急かしてる訳じゃねぇ、ただ日程が知りたいだけだ。誘拐なんて真似されたんじゃ、子供二人抱えてるこっちとしちゃ心配になっちまう」
「そうだなぁ、今まで何とかはなってるが……。今後も、うまくいく保証はねぇもんな」
そういうと、モブが飲み物を一気に飲み干した。
「今出来る事をやるさ、そっちは明日からどうすんだ」
モブがフランに尋ねると、苦笑しながら「そうだな、折角暇なんだし。行くとこもこんな田舎じゃ殆ど無いだろうからトレーニングしとくよ」シャリーはどうする?とフランが尋ねると、シャリーはにっこり笑って「私は勉強する!」と元気よく答えた。
「精がでるねぇ」「お前らと一緒は凄く楽しいんだけどさ、何回スタント紛いのシチュエーションがあったと思ってんだ」と言われると響が飲んでいたクリームソーダが思いっきり鼻にはいって鼻を押さえながら「確かにッス」と何とも言えない様な表情を浮かべた。
「備えて積み上げるんだろ? こういうのも一日にしてならずさ」と笑ったフランをみて。
「ホント、別人みたいで調子狂うわ」とモブが紅くなりながら頭をかいた。
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