第七十一話 ぶらりぶらり
ふらりと、歩く響がRXのムシっとした気候に顔をしかめた。
「あっつ、外は何でこんな暑いッスかね」
「RXは一年が二百日きっかりだっけか、艦族の母星みたいに四季折々とはいかないだろうさ。宇宙にはいろんな星があって、色んな環境がある。人ってなぁ、逞しいもんさ」
フランが響のボヤキに爽やかに答えると、シャリーもだらしないとくすりと笑った。
「フランさんが、逞しすぎるんすよ」と響がジト目で言えば。フランも負けじと苦笑しながら「傭兵は、逞しくなきゃやってられないんだよ」と言った。
響は、シャリーに「傭兵は逞しくなきゃダメらしいっスよ」と小声で囁く様に言った。
「頑張る」短く決意を固めてるシャリーを見て、響とフランが顔を見合わせ笑った。
若干へばりかけの響に、元気いっぱいのシャリーがぐいぐい引っ張る。
よろよろと引っ張られながらも、何処か楽しそうで。
「やっぱ、人は大地に足がついてないと安心できないもんッスね」と響が言えば「あったりまえだろ」とフランも返す。
そうやって歩いていくと、さっき通りすがりのおばちゃんに場所をきいた服屋の前についた。
<服屋 扉>
古すぎる曇ったショーウィンドウに、二世代は前の古いセンスの服がかけられていた。
「俺は、隣のカフェで何か食いながら待ってるッス。シャリーちゃんはどうするっスか」
そそくさと、モブから預かったお金をフランに渡すと隣の古ぼけた紅いソファーのカフェに行こうとした。
「待てよ」とフランがそれを掴む、響はぇ~という様な顔をした。
「どうして、ここまで来てカフェに行こうとする?」フランがにやけながら尋ねると、「苦手なんスよ」と答えた。
「そっか、悪かったな」そういって手を放すと、響も「すまないッスね」と言った。
「私は、お母さんと居る」そう答えたので「振られたな」とフラン。
「じゃ、俺は一人でクリームソーダでも飲みながら。昔のテーブル筐体でブロック崩しでもやってるッス」とカフェに入っていった。
その背中でシャリーが「響お兄さん、勿体ない」とぽつりと言った。
その台詞にフランが、シャリーの頭に手をのせて「全くだ」と呟く。
ーーーーーーーーーーー
古ぼけて、響以外客が居ないカフェで端っこのテーブル筐体に座ると老人がおしぼりとメニューを持ってきた。
「ご注文が決まりましたら、お呼び下さい」綺麗に一礼すると、立ち去ろうとしたので響が声をかけた。
「いや、取り敢えずクリームソーダあるんならそれを頼みたいっす。無ければコーヒーが欲しいッス」「どちらも御座いますよ」「じゃ、クリームソーダで頼むッス。後、この筐体電源入ってないッスが」
老人が苦笑しながら、筐体のふちを撫でながら言った。「もう壊れて、メーカーも無いので直らないんですよ。私同様もう、ガタがきてますから」「連れって呼んでもいいんすか?」「ご注文頂けるお客様なら、この通りガラガラですからね」と見渡す。
響が、通信機を取り出すと艦長ちょっと直して欲しいものがあるっス。というと直ぐ行くと答えが返って来た。
十分も立たないうちに「どうしたよ、響」と修理道具の箱を持って店内にやってきたモブ。「直して欲しいのはこれッス、どうにも遊びたくなったけど壊れてて」
自分の前のテーブル筐体を指さして言った。
「あぁ、ゴルッグ崩しか。店長、これあけてもいいんか? 後、俺コーヒーとカツサンドがあったらそれ頼みたいんだけど」「コーヒーとカツサンドもありますよ、おしぼりはすぐお持ちします。後、テーブルの状態に戻して下さるのであればあけても大丈夫です」
そういうと、料理を始める為に一旦下がっていった。
「さて、ほんじゃ物を拝見しますかね」そういって、手早く開けると埃で咽た為ウェスを口にくわえてマスクの代わりにしながら拡大鏡で基盤をずっと追っていく。
「これ、どこも壊れてねぇぞ?」コンデンサも一個一個調べていくが特に膨らんでいる訳でもない。
次に、通電を端子を当てながらチェックしていくと一か所ビーと音がした。
「ここかぁ、クラックで切れちまってるだけだな。ちょっと待ってろ」
そういうと、薬剤を塗ってクラックになっている汚れを綺麗にふき取ると新品の爪楊枝の背に液体金属を塗って線を引く様に線を再形成する。
もう一度通電チェックすると、今度はエラー音が鳴らないので一つ頷く。
元通りに蓋をして、通電させると今度はちゃんと電源が入ってゲームのロゴが映る。
一度電源を切って、ボタンのバネが弱ってないか点検して。少し固めになる様にして、しめると丁度マスターが響が頼んだクリームソーダとモブのおしぼりを持ってきた所だった。
「どうですか?」とマスターが聞けば、「中で線が切れてるだけだったから、すぐ直ったもう遊べるぜ?」とモブがにかっと笑って答えた。
「お代は?」「お代はいらねぇが、俺のカツサンド早めに頼む」腹減ってんだと料金を修理しながら響に聞いていたのですぐに手渡した。
「かしこまりました」そう言って、再び下がっていく。
「さて、それじゃ俺は響の神プレーでも見ながら待ちますかね」
「ワンコインで、夕方まで遊んで見せるっスよ」
そういって、クリームソーダのアイスクリームをスプーンで沈めながらスタートボタンを押す。
店内には、カツサンドのカツをあげる音とゲームの音だけが聞こえ。
(懐かしいな)
肘をついて、対面から響のパドルさばきを見ながら童心にかえっていた。
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