第六十八話 フリーフォール
プレクスから縄バシゴを懸命に出す、セリグと響。
モブは全力でプレクスを動かし、落ちていく軍用ジープの真横辺りを急速落下するような角度で突っ込む。
ぐんぐんと地面が迫ってくるが、お構いなしに速度を上げた。
「艦長!」「わーってる!」
フランがジープのボンネットを踏み台に、縄バシゴに片手でつかまったのを確認すると響が叫ぶ。
モブが推進機の位置を、プレクス先端に移動させると落下に急ブレーキがかかり。凄まじいGがかかる。シャリーが椅子に掴まりながら、必死にこらえていた。
「こなくそっ!」推進機二つは別にプレクスの下あたりに移動させ、先端に移動させた推進機で減速をかけながら、機体の頭を無理やり推進機の力で持ち上げて。モブの足で断続的にペダルを踏みこむ事で、バッバッバッと残りの推進機が機体のバランスを取りながら徐々に水平に戻していく。
「よし、何とかなりそうだ!」とモブが冷や汗を垂らしながらなんとか機体の状態を持っていく。
その時、ガサガサバキバキという音が断続的に聞こえてくる。
「艦長! もっと高さを上げるッス。木に思いっきり当たってるッス」
「これで、めいっぱいだっての。こんなんになるならもうちょっと無理して出力上がる様にしとくんだった」
泣き言いってもしょうがないので、祈りながら両手で操縦桿を引き続ける。
徐々に艦の体勢が持ち上がり、水平に戻りつつあった。
何とか、水平からさらに高度が上がり始めると。先端に移動させていた推進機を徐々に艦の下側に持っていく事で艦を上昇させ、遂に木がガサガサと当たる音が聞こえなくなった。
「セリグさん、フランは?」とモブが尋ねると、あちこちがすれて服がめくれ。顔が擦り傷だらけのフランが「ったく、もうちょっと早く上げてくれ」と苦笑しながらもちゃんと生きてるよと返事を返した。
慌てて、モブが前を向くと。「とりあえず、服着替えてきてくれ。港に戻る」それだけいうと大きく息を吐きだした。
後ろでゼーゼーやっている、セリグと響が非常にのろのろと縄バシゴを片付け始め。
梯子を出す為に空けていた扉をゆっくりとしめて、横になった。
「老骨には応えますな」「クレズさん、フェティちゃんを出して欲しいッス」
了解しましたと、声がしたあとフェティがセリグの近くに座る形で虚数の外に出されるとセリグはそっと手を握りながら安堵し。「申し訳ございません」と言ったが、フェティは首を横に振る。
その様子をみた、シェリーも一度ちらりと見たがモブは紅くなりながら頬をかいていた。「みんな、無事みたいだね」とシャリーが言えば、モブが何とかなと笑った。
「しかし、今回は艦長がセブンス拾ってきてくれたおかげで助かったッス」と言えば、モブは何とも言えない様な気分だった。
「いつも通り、ジャンク品のゴミ拾って来ただけだ。それより、モブの方こそ直にあれだけの事を頭の引き出しから引っ張り出してこれるってすげぇなと思うぜ」
そうやって、また拳をぶつけて笑った。
(私もいつかは……、フラン母さんみたいに強い訳でも無く。響お兄さんみたいに応用力がある訳でも無く。モブお兄さんみたいに、食らいついていけるわけでもない)
シャリーはそう思いながらただ葛藤していた。
「さて、セリグさん。疲れてる所申し訳ないんだけど、もうひと踏ん張り働いてくれね?」まるでいたずら小僧の様に笑うモブ。
「今は、お客ではありませんからな。何をすれば宜しいので?」とセリグもまるで判ったように悪ふざけして答えた。
すると、モブがにっこり笑って。「みんな無事で良かった良かったで、一品サービス頼むわ」そうすると、セリグも「判っております」と頷いた。
「後、シャリーちゃんと響」とモブが言えば、「何スか?」と響が返事をした。
「君たちはフランの服買いに、三人で行ってきてくれ。本人が気にしてなくても、あぁもあれだと眼のやり場に困る」そういうと、ひょいっと財布を響に渡した。
それを受け取った響が、神妙な顔になりながらモブに尋ねた。
「艦長は、何するんスか?」すると、ガックシと項垂れながら。「俺は、プレクスのガワの再点検だよ……。さっき盛大に突っ込んだからな、宇宙に上がる前にもう一度全数点検しないと怖くてあがれねー」
それを聞いた、シャリーとモブとセリグがあぁ……と悲しそうな表情をしながら。
「「「お疲れ様」」」
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