第四十九話 ハクセライ港到着
デメテルの中央都市、ハクセライ。その港である、ハクセライ港にプレクスが着艦した。
「う~ん、やっぱ空気がうめ~わ」
そんな事をモブが言うと、響も「結局欠片の事は判んなかったっスからね、取り敢えず今早急にやらなきゃいけない事はシャワーを昇降させる事が出来るギミックとかを取り付けることッスかね」と笑った。
「お疲れだろう? お二人さん、そんな事ばっか考えてないで取り敢えず宿取って疲れをとる事考えてくれよ」とフランもシャリーも笑っていた。
「お兄さん、働き過ぎはダメ」とシャリーにも言われてしまい、響は照れながら判ったッスと言ってシャリーの手を取って「でも、シャリーちゃん。お兄さんは、とっておきのチキンをみんなで食べたんでチキンの買い直しだけはやりたいッス」と真剣な眼差しを向ける。
シャリーもモブもそれをきいて、口を押えながら笑いをこらえた。
「お兄さん、チキン美味しかった♪」と言われて、モブが「だそうだが?」と背中を叩く。
「判ったッス、シャリーちゃんにだけ唐揚げ作るッス」真顔でそんな事を宣う。
「これから、どうすんだ?」とフランが聞けば。
「少し休んだら、お仕事探しだな」とモブが言う。
「フランさんとシャリーちゃんは、ゆっくりしてて欲しいッス。俺達は、また改造しとくッス」
そうか、じゃ俺達で宿をとったり雑用中心に終わらせとくよとフランとシャリーが手を繋いで背中を向けた瞬間に響の眼がマジになった。
「艦長……、これはかなりキナ臭いっスよ。最悪、港ぶち抜いてそのまま飛んでトンズラする事も考えた方が良さそうっス」
「響もそう思うか……、シャリーの前でそういう危ないのを言いたくねぇんだけどな」
二人は辺りを見渡して、物価やモノの流れをみて。戦争が近い事を悟るが、努めて明るく振舞って子供には悟られない様にしたのだった。
そんな二人に、ボロイ姿の親子が横切る。母親が子供に、優しく微笑みながら何かの歌を歌っている様だった。
そして、それは八百屋もジャンク屋もそこらで休むお年寄りさえ同じ歌っている。
「おい、そこの爺さん。すまないけど、この周りの連中が同じ歌を歌ってるのはいったいなんなんだい?」
モブが一番近くの老人に尋ねると、老人は笑って教えてくれた。
「お客さん、旅行かい?この歌は、この国の人間なら童の頃から聞かされて育つ歌だよ。どんな時も、コモラ様に救いを求める時に歌うんだ」
「コモラ・シトラ?」「うちらが信じる女神様さ、光の女神コモラ様、闇の女神シトラ様二人は背中合わせの神様でコモラ様は人を救い、シトラ様は殺す神様と伝えられている」
伝えられているだけで、ワシたちの苦しい現実は変わりはしないがね。
と老人は力なく笑ったが、モブは「シトラ様ってのは、随分嫌われてそうだな」
「そうでもない、人は必ず死ぬが苦しみのたうつのと眠る様に死ねるのは天と地ほど違う。だから、ワシら老人はシトラ様に祈るものも多い」
話聞かせてくれて、ありがとうよ。モブはそう言うと、チップを老人に握らせる。
「双子の神様ねぇ、響……」「データーベースで見た通りの見た目してそうっスね」
二人の視線が交差して、「取り敢えず、やる事やろうぜ」「そうっスね、俺達にとっちゃ神様よりも明日のおまんまッス」
多めに貰ったから、少しは余裕があるが少しだからなぁと二人で笑った。
その、瞬間。さっき話しかけてチップを渡した少し離れた位置に居た老人が横向きの火柱の中に消えていった……。
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